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全東信破産と飲食店の未入金|貸倒れの税務と資金繰りを税理士が解説

2026.07.08
全東信の破産で飲食店に生じたカード売上未入金への対応(貸倒れの税務・債権届出・資金繰り支援)を解説する道濟会計事務所のアイキャッチ
この記事の要点3点

  • ポイント1:クレジットカード売上の早期決済代行を手がける株式会社全東信が2026年7月6日に破産手続開始決定を受け、加盟店である飲食店でカード売上代金の未入金が発生しています。
  • ポイント2:影響を受けるのは全東信の決済サービスを利用していた飲食店などの加盟店で、未入金分は原則として一般破産債権となり、まずは金額の集計・端末停止・代替決済の手配・債権届出の準備が必要です。
  • ポイント3:未回収債権の税務処理(貸倒引当金・貸倒損失・消費税)は計上できる時期や条件が細かく決まっており、あわせて公庫や信用保証協会などの資金繰り支援策も早めに検討します。

クレジットカード売上の早期入金サービスを提供していた株式会社全東信が破産し、多くの飲食店で「カード決済したのに売上金が入金されない」という事態が起きています。まとまった売上代金が回収できないと、日々の仕入れや人件費の支払いに直結するため、経営者にとっては資金繰りと税務の両面で冷静な対応が求められます。本記事では、税理士の視点から、今回の破産で何が起きているのかを整理したうえで、飲食店が取るべき初動、公的な資金繰り支援策、そして未回収となった売上債権の貸倒れの税務処理までを、公的機関の情報に基づいて実務に沿って解説します。

全東信の破産で何が起きているか(概要)

報道によると、株式会社全東信(大阪市中央区、資本金45億円、代表・髙山萬保氏、2006年9月設立。源流は1987年設立の大阪南飲食事業協同組合とされます)は、2026年7月6日に大阪地方裁判所へ自己破産を申請し、同日、破産手続開始決定を受けました。負債は2025年3月期末時点で約1,259億円と報じられ、2026年で最大級の倒産とされています。破産管財人には印藤弘二弁護士が選任され、問い合わせ先として破産管財人室(電話06-4704-4681、受付10:00〜17:00)が案内されています。

全東信が手がけていたのは、飲食店を中心とするクレジットカード加盟店が受け取るべきカード売上代金を、カード会社からの入金を待たずに全東信が先行して立替入金する「早期決済代行」のサービスです。通常、カードで決済された売上は、カード会社から加盟店へ入金されるまで一定の期間がかかります。全東信はこの入金を待たずに、業界でも早い週2回・月6回程度の頻度で加盟店へ立替入金する仕組みをうたっており、資金繰りを早める手段として飲食店に広く利用され、加盟店数は2018年時点で約20万店に達していたと報じられていました。裏を返すと、この立替入金の流れが破産によって止まると、加盟店には本来入るはずだった売上金が入らないという直接の打撃が生じます。

ここが問題の中心
共同通信などの報道によれば、破産管財人への取材で、少なくとも2万店を超える加盟店で2026年7月1日以降の売上金が未入金となっていることが明らかになっています。全東信を経由して受け取るはずだったカード売上代金が、破産によって加盟店へ支払われなくなっている状態です。

加盟店が全東信に対して有する「未入金となった売上代金の請求権」は、原則として破産手続の中の一般破産債権になると考えられます。つまり、飲食店は破産管財人に対して債権の届出を行い、破産手続の中で他の債権者とともに配当を受ける立場になります。配当がどの程度になるか、そもそも配当があるかどうかは今後の破産手続の進行次第であり、現時点では確定していません。日本弁護士連合会は2024年に決済代行業者への規制整備を求める意見書を公表しており、決済代行会社の破綻時に加盟店の売上金を保全する専用の制度は、現行の資金決済法や割賦販売法には見当たらないのが実情です。だからこそ、加盟店側で早めに証拠を保全し、使える支援策を確実に押さえておくことが重要になります。

飲食店への影響と資金繰り支援策

まず取るべき初動は、被害額を正確に把握し、これ以上の未入金を防ぐことです。外食産業の業界団体である日本飲食団体連合会(食団連)は、破産手続開始決定を受けて緊急の注意喚起を発表し、加盟店に対して「全東信の端末の使用を即時停止する」「未入金となっている売上代金を今すぐ集計する」「代替の決済手段を至急手配する」ことを呼びかけています。あわせて、債権額を証明できる資料(売上明細・契約書など)を保管しておくことも重要です。これらは後述する債権届出や税務処理、支援策の申請すべての土台になります。

資金繰りの面では、取引先の倒産で経営に影響を受けた中小企業向けの公的支援策があります。ただし、いずれも要件や上限が定められており、また現時点(2026年7月8日)で全東信を対象とした指定が済んでいないものもあるため、正確に理解して使い分ける必要があります。

支援策概要現時点の注意点
日本政策金融公庫
取引企業倒産対応資金
取引先の倒産で経営に困難を来した方向けの融資。国民生活事業は別枠3,000万円、中小企業事業は1億5,000万円、返済10年以内(据置3年以内)倒産企業に50万円以上の売掛金債権等がある等の要件あり
セーフティネット保証1号
(信用保証協会)
大型倒産の連鎖防止のための別枠保証。市区町村の認定を受けて保証付き融資を申し込む全東信は7月8日時点で指定事業者に未指定。食団連が指定を要請中で、指定後でなければ利用できない
経営セーフティ共済
(中小企業倒産防止共済)
取引先の倒産時に無担保・無保証人で共済金を借入可能。上限は被害額と掛金総額の10倍(最高8,000万円)の少ない方既に加入済み(加入後6か月経過等)でなければ今回には使えない。対象債権の該当性は要確認

資金繰り支援の中でも即効性が期待できるのは、日本政策金融公庫の融資です。取引企業倒産対応資金は、倒産した企業に50万円以上の売掛金債権等を有するなどの要件を満たせば利用でき、返済期間も長めに設定されています。融資は資金計画とセットで検討すべきものなので、早い段階で創業・資金繰りと融資のサポートにも相談しながら、必要書類と返済計画を準備しておくと手続きがスムーズです。

一方、セーフティネット保証1号は、大型倒産の連鎖倒産を防ぐための別枠保証ですが、対象となる倒産企業が経済産業大臣によって「指定事業者」に指定されている必要があります。全東信は2026年7月8日時点でこの指定を受けておらず、食団連が国に指定を要請している段階です。したがって現時点では「制度としてこういう仕組みがある」という位置づけにとどまり、実際に使えるかは今後の指定を待つ必要があります。

経営セーフティ共済は、すでに加入している事業者にとって有力な選択肢です。ただし、共済金の借入れは無利子である一方、借入額の10分の1に相当する掛金が納付済み掛金から差し引かれる(権利が消滅する)ため、実質的な負担がゼロというわけではありません。また、共済金の対象となる債権は「倒産した取引先との取引によって生じた売掛金債権・前渡金返還請求権」とされており、決済代行会社に対する立替入金の請求権がこれに該当するかどうかは公式に明確化されていません。利用を検討する場合は、中小機構や委託機関に個別に確認することをおすすめします。

あわせて、売上金の未回収で当面の納税が難しくなった場合には、国税の「納税の猶予」や「換価の猶予」といった制度も選択肢になります。財産の損失や事業の著しい損失など一定の要件を満たす場合に、原則1年以内の分割納付が認められ、猶予期間中の延滞税が軽減または免除されることがあります。取引先の倒産による資金繰りの悪化は、これらの猶予の検討対象になり得ます。まずは仕入先や金融機関への支払スケジュールを見直しつつ、納税についても早めに所轄の税務署へ相談しておくと、資金の流出を平準化できます。

当事務所の見解・未回収債権の税務処理

未回収となったカード売上代金について、「回収できないのだからすぐに経費(損失)にできるはず」と考えたくなりますが、税務上は計上できる時期と方法が細かく定められています。破産手続開始決定を受けたからといって、直ちに全額を損失にできるわけではない点に注意が必要です。ここでは3つの論点を整理します。

貸倒引当金(個別評価)で一部を先取りできる場合がある

取引先について破産手続開始の申立て等の事実がある場合、その金銭債権について「個別評価金銭債権に係る貸倒引当金」を設定できる場合があります(法人は法人税法第52条第1項・施行令第96条第1項、個人事業主は所得税法第52条第1項・施行令第144条第1項)。この形式基準に該当するときの繰入限度額は、債権額から、担保権の実行や保証による取立て等の見込額と、実質的に債権とみられない部分の金額を控除した残額の50%です。事由の発生を証する書類の保存も要件となります。なお、法人でこの貸倒引当金を使えるのは資本金1億円以下の中小法人等などに限られ、大法人の完全子会社などは対象外です。個人事業主の場合も、青色・白色を問わず個別評価による繰入れが可能で、翌年にはその繰入額を取り崩して収入に戻す(洗替え)処理を行います。貸倒引当金はあくまで損失を見込みで前倒し計上するものなので、後日実際に回収できた場合や貸倒れが確定した場合には、改めてその事実に応じた処理が必要になる点も理解しておきましょう。

貸倒損失(全額の損金算入)は原則としてまだ先

債権の全額を貸倒損失として損金算入できるのは、法令等により切り捨てられた場合や、債務者の資産状況・支払能力等からその全額が回収できないことが明らかになった場合などに限られます(国税庁タックスアンサーNo.5320)。国税庁の質疑応答事例では、法人の破産について、破産手続終結の決定や廃止の決定があった時点、あるいはそれ以前でも破産管財人から配当がゼロであることが明らかになった時点で貸倒れとして損金経理できる、という考え方が示されています。今回の破産は2026年7月に開始決定を受けたばかりであり、破産手続開始決定を受けたという事実だけでは、通常はまだ貸倒損失を計上できません。焦って全額を損失計上せず、手続の進行に応じて判断することが大切です。

消費税の貸倒れの控除は適用が難しいと考えられる

売掛金などが貸し倒れたときは、その債権に含まれる消費税額を控除できる制度があります(消費税法第39条)。ただしこの制度の対象は「課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権」に限られます(国税庁タックスアンサーNo.6367)。クレジットカード取引では、加盟店が顧客(客)に対して持っていた売掛金は、カード会社や決済代行会社への債権譲渡等によって別の性質の債権(立替金・精算金の請求権)に変わっていると考えられます。この場合、全東信に対する債権は「顧客への売掛金」ではないため、消費税の貸倒れに係る控除の適用は難しいと考えられます。ただし、契約が債権譲渡型か収納代行型かによって債権の性質は変わり得るため、最終的な判断は個々の加盟店規約や契約内容を確認したうえで行う必要があります。税務処理は契約構成に左右される専門性の高い分野ですので、判断に迷う場合は中小企業の税務顧問にご相談ください。

今すぐやるべきこと(チェックリスト)

全東信の決済サービスを利用していた飲食店は、次の順序で対応を進めましょう。特に初動の被害拡大防止と証拠の保全は急ぐ必要があります。

  1. ステップ1:全東信の端末使用を停止し代替決済を手配する
    これ以上未入金を増やさないため、全東信経由の決済端末の使用を止め、別のカード決済手段を早急に確保します。
  2. ステップ2:未入金の売上代金を集計し証拠を保全する
    いつ・いくらの売上が未入金かを集計し、売上明細・契約書・入金記録などを保管します。後の債権届出・税務処理・支援策の申請すべてに必要です。
  3. ステップ3:破産管財人への債権届出を準備する
    裁判所が定める債権届出期間内に、未入金分について債権届出を行う必要があります。管財人室(06-4704-4681)や公表される案内で手続きを確認します。
  4. ステップ4:資金繰り支援策を検討する
    日本政策金融公庫の取引企業倒産対応資金、加入していれば経営セーフティ共済など、使える支援策を洗い出します。セーフティネット保証1号は指定状況を確認します。
  5. ステップ5:顧問税理士に税務処理を相談する
    貸倒引当金・貸倒損失・消費税の扱いは計上時期と条件が複雑です。契約内容を踏まえた正しい処理のため、早めに税理士へ相談します。
断定を避けたい点
破産手続の配当の有無や率、セーフティネット保証1号の指定の可否は、2026年7月8日時点では確定していません。本記事の情報は執筆時点のものであり、実際の手続きにあたっては、破産管財人や裁判所の公告、各支援機関・国税庁の最新情報、および税理士等の専門家の確認に基づいて判断してください。

よくある質問

Q. 全東信に未入金のカード売上金があります。すぐに戻ってきますか?
A. 未入金分は原則として破産手続の中の一般破産債権になると考えられ、破産管財人への債権届出を経て、破産手続の中で配当を受ける立場になります。配当の有無や金額は今後の手続き次第で、すぐに全額が戻る性質のものではありません。まずは未入金額の集計と証拠の保全を行ってください。
Q. 未回収の売上金は、すぐに損失として経費にできますか?
A. 破産手続開始決定を受けただけでは、通常はまだ全額を貸倒損失にはできません。国税庁の考え方では、破産手続の終結・廃止の決定時や、配当がゼロであることが明らかになった時点で損金経理するのが原則です。ただし、破産手続開始の申立て等がある場合は、一定要件のもとで債権額の50%を個別評価の貸倒引当金として先に計上できる場合があります。
Q. 未回収分の消費税は取り戻せますか?
A. 消費税の貸倒れに係る控除は「課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権」が対象です。カード取引では顧客への売掛金が決済代行会社への立替金等の請求権に変わっていると考えられ、全東信への債権にはこの控除の適用は難しいと考えられます。契約の内容によって結論が変わる場合があるため、税理士に確認してください。
Q. セーフティネット保証1号は今すぐ使えますか?
A. セーフティネット保証1号は、対象の倒産企業が経済産業大臣により「指定事業者」に指定されることが前提です。全東信は2026年7月8日時点では指定されておらず、業界団体が指定を要請している段階です。指定された後に、市区町村の認定を受けて保証付き融資を申し込む流れになります。最新の指定状況を確認してください。
Q. 経営セーフティ共済に入っていれば借りられますか?
A. 経営セーフティ共済は加入済みの事業者が対象で、加入後6か月経過などの要件があります。今回の破産後に新たに加入しても今回の件には使えません。また対象債権は倒産した取引先との取引で生じた売掛金債権等とされ、決済代行会社への債権が該当するかは公式に明確でないため、中小機構等への個別確認をおすすめします。
Q. 契約書や売上データはどこまで残しておくべきですか?
A. 全東信との加盟店契約書、未入金となった売上の明細、これまでの入金記録、決済端末の取引データなどを漏れなく保管してください。これらは破産管財人への債権届出、貸倒れの税務処理、公的支援策の申請のいずれにも必要となる重要な資料です。

参考資料・出典

本記事は道濟会計事務所が監修しました。




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