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防衛特別法人税2026|4月開始・税率4%と中小企業への影響を税理士が解説
この記事の要点3点
- 防衛特別法人税は2026年(令和8年)4月1日以後に開始する事業年度から課税され、法人税を納める法人が対象です。
- 基準法人税額から年500万円を控除した金額に税率4%を乗じる仕組みのため、法人税額が年500万円以下の多くの中小企業は実質的な負担が生じません。
- ただし税額がゼロでも確定申告書の提出は必須です。「うちは関係ない」と申告を忘れないことが最初の実務ポイントです。
2026年4月から、法人税を納めるすべての法人に新たな付加税「防衛特別法人税」が課されます。防衛力強化の財源を確保するために創設された税ですが、年500万円の基礎控除が設けられているため、中小企業の多くは実質的な税負担が生じない設計になっています。一方で、税額がゼロであっても確定申告書の提出が必要になる点は見落とされがちです。本記事では、防衛特別法人税の仕組みと2026年4月からの開始時期、中小企業への具体的な影響、そして経営者と経理担当者が今すぐ確認すべき実務ポイントを、国税庁の公表資料に基づいて税理士が整理します。
防衛特別法人税の概要と2026年4月からの開始
防衛特別法人税は、2025年(令和7年)3月31日に公布された「所得税法等の一部を改正する法律(令和7年法律第13号)」により、「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」(以下「防確法」)が改正されて創設された国税です。防衛力の抜本的強化に必要な財源を確保することを目的としており、法人税に上乗せして課される「付加税」という位置づけになります。
国税庁の公表資料によると、この税は2026年(令和8年)4月1日以後に開始する各事業年度から課税されます。各事業年度の所得に対する法人税を課される法人が納税義務者となり、防衛特別法人税確定申告書の提出が必要になります。3月決算法人であれば2026年4月1日に始まる事業年度(2027年3月期)から、12月決算法人であれば2027年1月に始まる事業年度から対象となるイメージです。自社の決算月によって最初に対象となる事業年度がずれるため、まずは「いつから始まるのか」を正確に押さえることが出発点になります。
防衛力強化の財源は、防衛特別法人税のほか、たばこ税の段階的引上げ、そして個人の所得に対する付加税(防衛特別所得税)を組み合わせて確保する枠組みとされています。このうち、法人に関わる防衛特別法人税が先行して2026年4月から動き出す、という位置づけです。法人税額に上乗せして課される「付加税」である点は、同じく法人税額をベースに課される地方法人税と似ていますが、税率や控除の仕組みは別建てであり、両者を混同しないことが実務上のポイントになります。
税額の計算は「基準法人税額-500万円」×4%
防衛特別法人税の計算構造はシンプルです。所得税額控除や外国税額控除などの一定の税額控除を適用しないで計算した法人税の額(これを「基準法人税額」といいます)から、年500万円の基礎控除額を差し引いた金額を課税標準とし、これに税率4%を乗じて税額を算出します。
計算式の考え方
防衛特別法人税額 =(基準法人税額 - 基礎控除額500万円)× 4%
※基準法人税額は、所得税額控除・外国税額控除などを適用する前の法人税額(附帯税を除く)で計算します。
防衛特別法人税額 =(基準法人税額 - 基礎控除額500万円)× 4%
※基準法人税額は、所得税額控除・外国税額控除などを適用する前の法人税額(附帯税を除く)で計算します。
基礎控除額の500万円は1年決算を前提とした金額です。事業年度が1年に満たない法人は「500万円を12で除し、その事業年度の月数を乗じた金額」に按分されます。また、グループ通算制度を適用する通算法人の場合は、500万円を各通算法人の基準法人税額の比で配分する取扱いとなります。
税額がゼロでも申告書の提出は必要
実務上、最も注意すべき点が申告義務です。国税庁の資料では、所得が欠損となって基準法人税額がゼロとなる場合や、基礎控除額(年500万円)の控除によって課税標準法人税額がゼロとなる場合であっても、防衛特別法人税確定申告書を提出する必要があると明記されています。確定申告書は、各課税事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、納税地を所轄する税務署長へ提出します。法人税の申告期限が延長されている場合は、防衛特別法人税の申告期限も同様に延長されます。
なお、防衛特別法人税の申告書は法人税および地方法人税の申告書と一体の様式になっています。ただし別表一などでは防衛特別法人税の記載欄が法人税・地方法人税の記載欄とは別葉になるため、記載・提出を忘れないよう国税庁も注意を促しています。中間申告については、2027年(令和9年)4月1日以後に開始する課税事業年度において、法人税の中間申告書を提出すべき法人が防衛特別法人税の中間申告も行う仕組みです。つまり初年度は確定申告のみで、中間申告は2年目以降に始まります。
中小企業への実務影響と負担イメージ
防衛特別法人税は制度上すべての法人が対象ですが、年500万円の基礎控除があるため、実際に税負担が生じるかどうかは「基準法人税額が500万円を超えるか」で決まります。基準法人税額は法人税額がベースですから、法人税額が年500万円以下の法人では課税標準がゼロとなり、防衛特別法人税は発生しません。中小企業の多くはこの範囲に収まると考えられます。
法人税額500万円はどのくらいの所得水準か
では、法人税額が500万円となるのはどの程度の課税所得でしょうか。中小法人には年800万円以下の所得に対する軽減税率(15%)と、800万円超の部分に対する税率(23.2%)が適用されます。これを前提に概算すると、課税所得が年800万円の場合の法人税額は約120万円、課税所得が2,400万円程度に達すると法人税額がおおむね500万円に近づきます。あくまで軽減税率の適用や各種税額控除の有無で変動する目安ですが、課税所得が2,000万円台前半までの中小企業であれば、防衛特別法人税の負担は生じないか、生じてもごく小さいと捉えてよいでしょう。
下記の比較表は、軽減税率(800万円以下15%・超過分23.2%)のみを前提とし、税額控除などを考慮しない概算です。実際の法人税額は各社の申告内容により異なります。
| 課税所得(概算) | 法人税額の目安 | 基礎控除後の課税標準 | 防衛特別法人税(4%)の目安 |
|---|---|---|---|
| 800万円 | 約120万円 | 0円(500万円以下) | 0円 |
| 2,400万円 | 約500万円 | おおむね0円 | ほぼ0円 |
| 5,000万円 | 約1,094万円 | 約594万円 | 約24万円 |
| 1億円 | 約2,254万円 | 約1,754万円 | 約70万円 |
このように、利益が大きく法人税額が500万円を超える法人では、超過部分の4%に相当する金額が新たな負担として上乗せされます。逆に言えば、多くの中小企業にとっての実務上の論点は「いくら払うか」よりも「申告を漏らさないこと」にあります。
申告漏れと様式対応が最大のリスク
税額がゼロの法人ほど「自社には関係ない」と誤解しやすく、申告書の提出自体を失念するおそれがあります。防衛特別法人税は法人税の申告書と一体様式とはいえ、記載欄が別葉に分かれているため、決算・申告ソフトが新様式に対応しているか、顧問税理士が対応方針を把握しているかを早めに確認しておく必要があります。とくに自社で申告書を作成している法人は、2026年4月以後開始事業年度の申告に向けて、使用しているソフトのバージョンアップ状況を点検しておきましょう。
また、地方法人税(法人税額をベースに課される国税)とは別の税であり、防衛特別法人税の基準法人税額の計算では所得税額控除や外国税額控除を適用しない点も、配当や預金利息の源泉所得税が多い法人では税額の出方に影響します。通常の法人税では、預金利息や配当から源泉徴収された所得税を法人税額から差し引く「所得税額控除」が使えますが、防衛特別法人税の基準法人税額はこの控除を行う前の金額で計算します。つまり、運用資産が多く源泉所得税の還付を受けているような法人では、法人税の納付額の感覚よりも基準法人税額が大きく出るケースがあり、思わぬところで課税標準が500万円を超える可能性があります。こうした控除を多く使う法人は、自社の影響額を顧問税理士と試算しておくと安心です。
グループ通算法人と決算期変更時の取扱い
グループ通算制度を適用している企業グループでは、基礎控除500万円を各通算法人の基準法人税額の比で配分します。そのため、単体では500万円以下に収まる子法人であっても、グループ全体での配分の結果、課税標準が生じることがあります。グループ経営を行う中小企業は、親法人を中心に全体での影響を確認しておく必要があります。さらに、合併や決算期変更などで事業年度が1年未満になる場合は、基礎控除500万円が月数按分で縮小される点にも注意が必要です。年度の途中で組織再編を予定している法人は、按分後の基礎控除額を前提に試算するとよいでしょう。
当事務所の見解・実務上の注意点
「関係ない」が一番危ない
当事務所が最も強調したいのは、税額が生じない中小企業こそ申告義務を意識すべきという点です。防衛特別法人税は税額ゼロでも申告書の提出が求められる珍しい税であり、提出を怠れば本来不要だったはずの手続き面の指摘を受けかねません。「負担がない=何もしなくてよい」ではないことを、まず経営者と経理担当者の共通認識にしておくことが大切です。とくに、自社で申告書を作成している小規模法人や、創業して間もない法人では、新設された記載欄の存在に気づかないまま申告期を迎えてしまうリスクがあります。決算準備のチェックリストに「防衛特別法人税の申告欄」を加えておくだけでも、提出漏れの多くは防げます。
節税商品の誇大な勧誘に注意
新税の創設に便乗し、「防衛特別法人税対策」をうたう保険商品や投資スキームの勧誘が増えることが予想されます。しかし前述のとおり、法人税額が500万円以下であればそもそも負担は生じません。負担が生じる規模の法人であっても、防衛特別法人税は法人税額に連動するため、無理に利益を圧縮する節税は本業の体力を削るおそれがあります。たとえば返戻率の低い保険に多額の保険料を投じて利益を圧縮しても、削減できる防衛特別法人税は圧縮した法人税額の4%にすぎません。手元資金を大きく流出させてまで取り組む経済合理性があるのかは、慎重に見極める必要があります。商品ありきの「対策」ではなく、まず自社が負担対象になるのかを冷静に見極めることが先決です。
初年度は中間申告がない点を逆手に
初年度(2026年4月以後開始事業年度)は確定申告のみで中間申告がありません。資金繰りの観点では、初年度に負担額を把握しておけば、中間申告が始まる2年目以降の納税資金を計画的に準備できます。負担が生じる見込みの法人は、初年度の申告を試算の好機と捉えるとよいでしょう。中間申告が始まると、前年度実績を基準とした予定申告により期中の納税が発生しますので、年間を通じたキャッシュフローへの影響を早めにシミュレーションしておくことをおすすめします。
総じて、防衛特別法人税は「負担額そのものより、制度を正しく理解して手続きを漏らさないこと」が当面の中小企業にとっての最重要テーマです。新税というと身構えてしまいがちですが、多くの中小企業にとっての実務は、申告書を正しく提出し、自社が負担対象になるかどうかを見極めることに尽きます。過度に不安をあおる情報や「対策」商品に振り回されず、まずは自社の数字に基づいて冷静に判断することが大切です。
今すぐやるべきこと
防衛特別法人税の開始に向けて、規模の大小にかかわらず確認しておきたい実務ステップを整理します。負担が生じる法人も生じない法人も、最初の一手は「自社の状況を数字で確認すること」です。
- ステップ1:直近の法人税額を確認する
直近の申告書で自社の法人税額を確認し、年500万円を超えているかどうかを把握します。500万円以下であれば当面の税負担は生じませんが、申告義務は残ります。 - ステップ2:自社の課税事業年度の開始日を確認する
2026年4月1日以後に開始する事業年度から対象です。決算月から、自社で最初に対象となる事業年度を特定しておきましょう。 - ステップ3:申告ソフト・委託先の新様式対応を確認する
自社で申告書を作成している場合はソフトの対応状況を、顧問税理士に委託している場合は対応方針を確認します。一体様式の別葉記載漏れを防ぐためです。 - ステップ4:負担が生じる規模なら影響額を試算する
法人税額が500万円を超える見込みの法人は、超過部分×4%の概算負担額を試算し、納税資金を見積もっておきます。 - ステップ5:税額ゼロでも申告書を提出する体制を整える
「税額が出ないから申告不要」という誤解を社内で共有しないよう、申告書提出を決算スケジュールに組み込みます。
- ☑ 自社の法人税額が年500万円を超えるか確認した
- ☑ 最初に対象となる事業年度を特定した
- ☑ 申告ソフト・顧問税理士の新様式対応を確認した
- ☑ 税額ゼロでも申告書を提出する方針を社内共有した
よくある質問
- Q. 防衛特別法人税はいつから始まりますか?
- A. 2026年(令和8年)4月1日以後に開始する各事業年度から課税されます。たとえば3月決算法人なら2026年4月に始まる事業年度(2027年3月期)から対象です。2026年3月31日以前に開始した事業年度については確定申告は不要です。
- Q. 中小企業も防衛特別法人税の対象になりますか?
- A. 制度上はすべての法人が対象です。ただし基準法人税額から年500万円を控除した金額に課税されるため、法人税額が年500万円以下の中小企業では税負担が生じません。負担の有無は会社の規模ではなく法人税額の大きさで決まります。
- Q. 税額がゼロでも申告は必要ですか?
- A. 必要です。基準法人税額がゼロの場合や、基礎控除により課税標準法人税額がゼロとなる場合でも、防衛特別法人税確定申告書を提出しなければならないと国税庁が明記しています。申告書は法人税・地方法人税と一体様式ですが記載欄が別葉のため、提出漏れに注意が必要です。
- Q. 税率と計算方法はどうなりますか?
- A. 所得税額控除や外国税額控除などを適用しないで計算した法人税額(基準法人税額)から年500万円を控除し、その金額に4%を乗じて算出します。事業年度が1年未満の場合は基礎控除500万円が月割りで按分されます。
- Q. 中間申告はいつから必要になりますか?
- A. 2027年(令和9年)4月1日以後に開始する課税事業年度において、法人税の中間申告書を提出すべき法人が対象です。したがって初年度は確定申告のみで、中間申告は2年目以降に始まります。
- Q. 個人事業主にも防衛特別税はかかりますか?
- A. 防衛特別法人税は法人を対象とする税で、個人事業主の所得税には課されません。個人の所得に対する防衛特別所得税は2027年(令和9年)以降の導入が予定されていますが、開始時期などの詳細は今後の法令で確定されるため、本記事では扱いません。
- Q. 申告と納付の期限はいつですか?
- A. 防衛特別法人税確定申告書は、各課税事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、納税地を所轄する税務署長へ提出します。法人税の申告期限が延長されている場合は、防衛特別法人税の申告期限も同じく延長されます。申告書は法人税・地方法人税と一体様式で提出するため、通常の決算申告と同じスケジュールで進めることになります。
参考資料・出典
本記事は道濟会計事務所が監修しました。