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電子帳簿保存法2026|電子取引データ保存の義務化と猶予措置の実務

2026.06.10
電子帳簿保存法の電子取引データ保存の義務化と猶予措置を解説する道濟会計事務所の記事のアイキャッチ画像
この記事の要点3点

  • 電子取引データの電子保存は令和6年(2024年)1月から本格義務化され、メールやネットで受け取った請求書・領収書を紙だけで保存する方法は原則認められません。
  • 「相当の理由」がある中小事業者には恒久的な猶予措置があり、高額なシステムがなくても適法に対応できます。影響を受けるのは法人・個人事業者を問わず電子取引を行うすべての事業者です。
  • まずは受領データの保存場所を1か所に決め、国税庁ひな形の事務処理規程を整え、ファイル名に「日付・金額・取引先」を入れるところから始めましょう。

電子帳簿保存法の電子取引データ保存は、令和6年(2024年)1月から本格的に義務化され、メールやインターネットで受け取った請求書・領収書を紙に出力して保存する従来の方法は、原則として認められなくなりました。一方で、2026年(令和8年)現在も「相当の理由」がある事業者には猶予措置が用意されており、すべての中小企業が高額なシステムを導入しなければならないわけではありません。本記事では、国税庁の最新の取扱いをもとに、電子帳簿保存法における電子取引の正確な義務化の範囲、猶予措置の2つの要件、検索要件が不要になる売上高の基準、そして最小限のコストで適法に対応するための具体的な手順を、税理士の視点で整理します。誤解の多い「紙保存の可否」も含めて、自社が何をすべきかを明確にしましょう。

電子帳簿保存法と電子取引データ保存の概要

電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)は、税務に関する帳簿や書類を電子データで保存するためのルールを定めた法律です。保存の対象は大きく3つの区分に分かれており、それぞれ要件と義務の度合いが異なります。この区分を取り違えると、本来は任意の対応まで「義務だ」と思い込んで過剰な負担を抱えたり、逆に義務である部分を見落としたりするため、まず全体像を押さえることが重要です。

3つの保存区分と「義務」となる範囲

1つ目は「電子帳簿等保存」で、会計ソフトなどで最初から電子的に作成した帳簿や決算関係書類を、そのまま電子データで保存する制度です。これは任意であり、紙に出力して保存することも引き続き認められています。2つ目は「スキャナ保存」で、紙で受け取った請求書や領収書をスキャナやスマートフォンで読み取って画像データで保存する制度です。これも任意で、紙原本の保存に代えることができる仕組みにすぎません。

3つ目が「電子取引データ保存」で、これだけがすべての事業者にとって義務です。電子取引とは、注文書・契約書・請求書・領収書などの取引情報を、電子データでやり取りする取引を指します。具体的には、電子メールに添付されたPDFの請求書、インターネットの通販サイトからダウンロードする領収書、クラウドサービスやEDIを通じて授受するデータなどが該当します。これらの取引データは、令和6年(2024年)1月以降、受け取った電子データのまま保存することが原則として求められ、紙に印刷した書面だけを保存して電子データを破棄する取扱いは認められません。

宥恕措置から猶予措置への移行

電子取引データの電子保存義務は、もともと令和4年(2022年)1月から施行されていましたが、準備の整わない事業者に配慮して、令和4年・令和5年(2022年・2023年)の2年間は「宥恕措置」が設けられていました。この宥恕措置の期間中は、やむを得ない事情があれば、出力した紙の書面を保存しておくことが事実上認められていました。しかし、この宥恕措置は令和5年12月末で終了しています。

これに代わって令和6年1月以降に設けられたのが「猶予措置」です。宥恕措置が「紙保存で足りる」という経過的な取扱いだったのに対し、猶予措置は「電子データの保存は必要だが、保存要件の一部を満たせなくてもよい」という恒久的な仕組みである点が大きく異なります。つまり、電子データそのものを残すことは引き続き必須であり、紙だけで電子データを破棄することは猶予措置の下でも認められません。この違いを正しく理解しておくことが、2026年時点での実務対応の出発点となります。

保存に求められる2つの要件

電子取引データを原則どおり保存する場合、「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの要件を満たす必要があります。真実性の確保とは、データが改ざんされていないことを担保する措置で、具体的には、タイムスタンプを付与する方法、訂正・削除の履歴が残る(または訂正削除ができない)システムを使う方法、そして「正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程」を定めて運用する方法のいずれかを選びます。可視性の確保とは、データをいつでも確認・提示できる状態にしておく措置で、ディスプレイやプリンタなどの備付けに加え、「取引年月日・取引金額・取引先」で検索できる機能を備えることが原則として求められます。次章では、これらの要件を中小企業が現実的にどう満たすかを掘り下げます。

中小企業への実務影響と保存要件

電子取引データ保存の義務は、売上規模や業種を問わず、電子取引を行うすべての法人・個人事業者に及びます。とはいえ、国税庁は中小事業者の負担に配慮した複数の緩和措置を用意しており、自社の規模や状況に応じて「どこまでやれば適法か」を見極めることが、過不足のない対応につながります。

保存要件を満たす3つのルートと比較

真実性の確保のうち、中小企業にとって最も現実的なのは「事務処理規程」を定める方法です。タイムスタンプや専用システムは費用がかかりますが、事務処理規程は国税庁が公表しているひな形を自社用に修正するだけで整い、追加コストはほとんどかかりません。可視性の確保についても、後述する売上高基準を満たせば検索機能の確保そのものが不要となり、表計算ソフトで索引を作る必要すらなくなります。以下に主な対応ルートを整理します。

対応ルート真実性の確保検索要件主なコスト
専用システム導入タイムスタンプ/訂正削除履歴で自動的に充足システムの検索機能で充足月額利用料等
事務処理規程+索引表国税庁ひな形の規程を制定・運用ファイル名や表計算ソフトで管理ほぼ無料
売上高基準による緩和事務処理規程を制定・運用検索機能の確保が不要ほぼ無料
猶予措置要件を満たせなくても可不要(出力書面で対応)なし(電子データ保存は必須)

検索要件が不要になる売上高基準

検索機能の確保は、基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)の売上高が5,000万円以下の事業者であれば、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じることを条件に、不要となります。多くの中小企業・個人事業者はこの基準に収まるため、検索機能を別途整える必要はありません。また、売上高が5,000万円を超える場合でも、出力した書面を取引年月日や取引先ごとに整理して提示・提出できるようにしておけば、検索機能の確保が不要となる取扱いも認められています。ここでいう「5,000万円」はあくまで売上高であり、利益や課税所得ではない点に注意してください。

ポイント:基準期間の売上高が5,000万円以下なら、検索機能の確保は不要です。残された必須対応は「電子データそのものを保存すること」と「真実性を確保すること(事務処理規程の制定でも可)」の2点に絞られます。

「相当の理由」による猶予措置の中身

保存要件をどうしても満たせない場合に備え、令和6年1月以降は恒久的な猶予措置が用意されています。適用には2つの要件があります。1つは、保存時に満たすべき要件に従ってデータを保存できないことについて、所轄税務署長が「相当の理由」があると認めることです。事前申請は不要で、システムや社内ワークフローの整備が間に合わないケース、資金繰りや人手不足で要件に従った保存ができないケースなどが「相当の理由」として例示されています。もう1つは、税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」と、そのデータを印刷した書面の提示・提出の求めに、それぞれ応じられるようにしておくことです。

ここで強調しておきたいのは、猶予措置の下でも「電子データそのものを保存しておくこと」は必須だという点です。紙に出力したうえで元の電子データを削除してしまうと、ダウンロードの求めに応じられず、猶予措置の要件を満たせません。猶予措置は「保存要件の一部を免除する」制度であって、「電子データの保存義務そのものを免除する」制度ではないことを、改めて確認しておく必要があります。

当事務所の見解・実務上の注意点

猶予措置に甘えすぎるリスク

猶予措置があるからといって何も整備しないまま放置するのは、当事務所としては勧められません。猶予措置は「相当の理由」が認められることが前提であり、制度開始から年数が経つほど、システム未導入を理由とする「相当の理由」は説明が難しくなっていくと考えられます。少なくとも、受け取った電子データを確実に保存し、後から取り出せる状態にしておくという最低限の体制は、早期に整えておくべきです。猶予措置はあくまで移行期の安全弁と位置づけ、本来の保存体制への移行を前提に運用するのが堅実です。

無料・低コストで始める現実解

中小企業であれば、まずは費用をかけずに対応を始められます。具体的には、受領した電子データを保存する専用フォルダを部門ごと・年度ごとに決め、ファイル名を「20260609_110000_株式会社○○」のように「日付・金額・取引先」が分かる形式に統一します。あわせて、国税庁が公表している事務処理規程のひな形をダウンロードし、自社の実情に合わせて社名や担当部署を書き換えて備え付けます。これだけで、売上高5,000万円以下の事業者であれば、真実性と可視性の要件を実質的に満たすことができます。高額なシステムの導入は、取引量が増えてファイル管理が限界に達してから検討しても遅くありません。

クラウド会計・受発注システムとの連携を見据える

取引件数が多い事業者や、今後の成長を見込む事業者は、早い段階でクラウド会計ソフトや受発注システムの導入を検討する価値があります。これらのシステムは、データの受領から保存・検索・仕訳までを一貫して処理でき、タイムスタンプや訂正削除履歴の機能によって真実性の確保も自動化されます。導入時には、自社が使う取引チャネル(メール、ECサイト、EDIなど)をすべてカバーできるか、検索項目が法令の要件を満たすかを確認することが大切です。補助金の対象となる場合もあるため、導入計画は顧問税理士と相談しながら進めることをお勧めします。

今すぐやるべきこと

電子取引データ保存への対応は、次の5つのステップで進めると無理なく整理できます。自社の売上規模に応じて、必要な範囲を見極めながら取り組みましょう。

  1. ステップ1:自社の電子取引を洗い出す
    メール添付の請求書、ECサイトの領収書、クラウド・EDIで授受するデータなど、電子でやり取りしている取引をすべて書き出します。これが保存対象の範囲を確定する出発点になります。
  2. ステップ2:保存場所を1か所に決める
    受領した電子データを保存する専用フォルダやクラウドストレージを決め、年度・取引先ごとに整理します。紙に出力した後も元データを削除しないルールを社内で共有します。
  3. ステップ3:事務処理規程を整える
    国税庁公表のひな形をもとに、訂正・削除の防止に関する事務処理規程を作成し、備え付けます。社名・担当部署・運用手順を自社向けに修正するだけで足ります。
  4. ステップ4:検索要件の要否を判定する
    基準期間の売上高が5,000万円以下かを確認します。以下であれば検索機能は不要です。超える場合は、ファイル名規則か出力書面の整理で検索に対応できるようにします。
  5. ステップ5:猶予措置の要否を確認する
    要件を満たせない事情がある場合は、電子データの保存を続けつつ、ダウンロードの求めと書面提示に応じられる体制を確保します。本来の保存体制への移行時期も計画しておきます。
重要:どの対応ルートを選んでも、「受け取った電子データそのものを保存し続ける」ことだけは省略できません。紙に印刷したからといって元データを削除すると、猶予措置を含むいずれの取扱いにも当てはまらなくなります。

よくある質問

Q. 受け取った請求書を印刷して紙で保存すれば、電子データは捨ててもよいですか?
A. いいえ、認められません。令和6年1月以降、電子メールやインターネットで授受した取引データは、受け取った電子データのまま保存することが原則です。紙に印刷した書面だけを残して元の電子データを削除する取扱いは、猶予措置の下でも認められず、ダウンロードの求めにも応じられなくなります。印刷した書面は補助的なものと位置づけ、電子データ本体は必ず保存してください。
Q. 売上が少ない個人事業者でも対応は必要ですか?
A. はい、必要です。電子取引データ保存の義務は売上規模を問わずすべての事業者に及びます。ただし、基準期間(前々年)の売上高が5,000万円以下であれば検索機能の確保は不要で、国税庁ひな形の事務処理規程を備え付けて電子データを保存しておけば、追加費用をかけずに適法な対応が可能です。まずはデータの保存場所を決めることから始めましょう。
Q. 検索機能の確保が不要になる売上高の基準を教えてください?
A. 基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)の売上高が5,000万円以下であることが基準です。この場合、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じることを条件に、検索機能を整える必要はありません。なお、ここでの5,000万円は利益や所得ではなく売上高で判定する点に注意してください。基準を超える場合も、出力書面を整理して提示できれば検索不要となる取扱いがあります。
Q. 「相当の理由」による猶予措置を使うのに事前の申請は必要ですか?
A. 事前の申請や届出は不要です。保存要件に従った保存ができないことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合に適用されます。システムや社内体制の整備が間に合わない、資金繰りや人手不足といった事情が例示されています。ただし、税務調査の際にデータのダウンロードの求めと書面の提示・提出に応じられることが条件となるため、電子データ自体の保存は欠かせません。
Q. 紙でもらった請求書もデータ化して保存しなければなりませんか?
A. いいえ、その必要はありません。紙で受け取った請求書や領収書は、これまでどおり紙のまま保存して構いません。電子データでの保存が義務づけられているのは、あくまで電子的に授受した「電子取引」のデータです。紙原本をスキャンして電子化する「スキャナ保存」は任意の制度であり、行わなくても法令違反にはなりません。受領方法が紙か電子かで取扱いが分かれる点を押さえてください。
Q. 保存要件を守れなかった場合、どのような不利益がありますか?
A. 電子取引データの保存が適切に行われていない場合、その書類の証明力が弱まり、税務調査で経費の裏付けとして認められにくくなるおそれがあります。また、青色申告の承認に関わる帳簿書類の保存義務に関連するため、悪質なケースでは承認取消しの検討対象になり得ます。ただし、保存要件の一部を満たせないだけで直ちに重い処分が下されるわけではなく、まずは電子データ自体を確実に残し、ダウンロードの求めに応じられる状態を保つことが重要です。

参考資料・出典

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本記事は道濟会計事務所が監修しました。





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