堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
福利厚生費2026|給与課税との線引きと社員旅行・食事・記念品の基準
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:福利厚生費として処理できるかどうかは、従業員等におおむね一律であること、金額が社会通念上相当であることの2つで判定します(国税庁タックスアンサーNo.5261ほか)。
- 2ポイント2:社員旅行は4泊5日以内・参加割合50パーセント以上が目安ですが、それだけでは足りず、受ける経済的利益が少額不追求の趣旨を逸脱しないことが前提です。
- 3ポイント3:判定を誤ると、法人税では交際費等として損金不算入、源泉所得税では現物給与として課税という二方向の是正になります。年末の行事を決める前に基準を確認してください。
CONTENTS目次
忘年会、社員旅行、永年勤続表彰、インフルエンザの予防接種と、10月から12月にかけては従業員向けの支出が集中します。これらを福利厚生費として処理できるのか、それとも交際費等や給与になるのかは、勘定科目の呼び方ではなく税法上の要件で決まります。しかも判定を誤ったときの影響は一つではありません。法人税では交際費等として損金不算入になり、源泉所得税では現物給与として本人に課税されます。会社が負担した金額が増えるだけでなく、従業員の手取りにも及ぶため、行事を決める前に基準を押さえておく価値があります。本記事では国税庁のタックスアンサーと質疑応答事例をもとに、中小企業がつまずきやすい線引きを整理します。
制度・改正の概要
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法人税法に「福利厚生費」という条文上の区分があるわけではありません。実務で福利厚生費と呼んでいるものは、交際費等にも給与にも当たらない従業員向けの支出、という消去法で位置づけられています。したがって判定は、交際費等の範囲から除かれるか、そして現物給与として課税されないか、という二つの関門を順に通す形になります。
交際費等の範囲から除かれるもの
国税庁のタックスアンサーNo.5261「交際費等と福利厚生費との区分」は、交際費等を「得意先や仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用」としたうえで、「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用については交際費等から除かれ、福利厚生費などとされます」と説明しています。さらに、社内の行事に際して支出される金額などで次のようなものは福利厚生費になるとして、二つの類型を挙げています。
一つ目は「創立記念日、国民の祝日、新社屋の落成式などに際し、従業員等におおむね一律に、社内において供与される通常の飲食に要する費用」です。二つ目は「従業員等(従業員等であった者を含みます。)またはその親族等のお祝いやご不幸などに際して、一定の基準に従って支給される金品に要する費用」で、結婚祝、出産祝、香典、病気見舞いなどが例示されています。根拠法令等としては措法61の4、措令37の5、措通61の4(1)-1、61の4(1)-10が挙げられています。
交際費等になった場合の損金不算入
この二つの類型に共通するのは、支給の対象が特定の人に偏っていないこと、そして支給の基準があらかじめ定まっていることです。運動会や社員旅行が交際費等から除かれるのも「専ら従業員の慰安のために行われる」ことが前提であり、取引先の接待が目的に混ざれば性格が変わります。逆にいえば、対象と基準が説明できる形になっていれば、勘定科目の名前にかかわらず福利厚生費としての整理が通ります。
福利厚生費に当たらず交際費等と判定された場合、No.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」のとおり原則として全額が損金不算入です。期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下である等の法人は、飲食その他これに類する行為のために要する費用の50パーセント相当額を超える部分とするか、800万円にその事業年度の月数を乗じて12で除した定額控除限度額を超える部分とするかを選べます。
一人当たり10,000円以下の飲食費は交際費等から除かれます(令和6年3月31日以前に支出された飲食等に係る費用は5,000円以下)。ただしこの取扱いには、飲食等のあった年月日、参加した得意先等の氏名または名称およびその関係、参加した者の数、費用の額と飲食店等の名称・所在地などを記載した書類の保存が要件として付いています。なお、専らその法人の役員もしくは従業員またはこれらの親族に対する接待等のために支出するものは、この10,000円基準の対象から除かれています。
中小企業への実務影響
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もう一つの関門である現物給与の判定は、支出の種類ごとに基準が細かく決まっています。年末に向けて出番の多いものを整理すると次のとおりです。
| 支出の種類 | 給与課税されないための主な基準 | 出典 |
|---|---|---|
| 従業員レクリエーション旅行 | 旅行期間4泊5日以内かつ参加割合50パーセント以上で、経済的利益が少額不追求の趣旨を逸脱しないこと | No.2603 |
| 食事の支給 | 本人が価額の半分以上を負担し、会社負担が1か月当たり7,500円以下であること | No.2594 |
| 創業記念品 | 処分見込価額による評価額が10,000円以下で、おおむね5年以上の間隔で支給するものであること | No.2591 |
| 永年勤続表彰 | 勤続年数がおおむね10年以上で、2回目以降はおおむね5年以上の間隔があいていること | No.2591 |
| 社宅の貸与(使用人) | 賃貸料相当額の50パーセント以上の家賃を受け取っていること | No.2597 |
社員旅行は期間と参加割合だけでは決まらない
No.2603「従業員レクリエーション旅行や研修旅行」は、旅行の企画立案、主催者、目的・規模・行程、参加割合、負担額および負担割合などを総合的に勘案して判定するとしたうえで、旅行期間が4泊5日以内であること、参加した人数が全体の人数の50パーセント以上であることの両方を満たし、かつ少額不追求の趣旨を逸脱しないと認められる場合に、原則として給与としなくてよいとしています。海外旅行の場合は外国での滞在日数が4泊5日以内であるかどうかで見ます。
同ページの具体例では、3泊4日・旅行費用15万円(うち会社負担7万円)・参加割合100パーセントと、4泊5日・旅行費用25万円(うち会社負担10万円)・参加割合100パーセントのいずれも課税しなくてよいとされる一方、5泊6日・旅行費用30万円(うち会社負担15万円)・参加割合50パーセントの例は「旅行期間が5泊6日以上のものについては、その旅行は、社会通念上一般に行われている旅行とは認められないことから課税されます」とされています。
見落とされやすいのが不参加者への配慮です。No.2603は「自己の都合で旅行に参加しなかった人に金銭を支給する場合には、参加者と不参加者の全員にその不参加者に対して支給する金銭の額に相当する額の給与の支給があったものとされます」としています。行けなかった人に現金を渡した瞬間、参加した人まで含めた全員が給与課税の対象になるという連鎖が起きます。また、役員だけで行う旅行、取引先に対する接待等のための旅行、実質的に私的旅行と認められる旅行、金銭との選択が可能な旅行は、そもそも従業員レクリエーション旅行に該当しません。
食事補助と健康診断の扱い
食事の支給についてNo.2594は、役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること、食事の価額から本人負担額を差し引いた金額が1か月当たり7,500円(消費税および地方消費税の額を除く)以下であることの2要件を示しています。判定は消費税等を除いた金額で行い、10円未満の端数は切り捨てます。現金で食事代を補助する場合は、深夜勤務者に夜食の支給ができないために1食当たり650円以下を支給する場合を除き、補助する全額が給与として課税されます。残業または宿日直を行うときに支給する食事は、無料で支給しても給与として課税しなくてよいとされています。
健康診断については、国税庁の質疑応答事例「人間ドックの費用負担」が参考になります。役員および使用人の健康管理の目的で一定年齢以上の希望者全てを対象に人間ドックを実施し、検診を受けた者の全てを対象として費用を負担する場合、給与等として課税する必要はないとされています。ただし「役員や特定の地位にある人だけを対象としてその費用を負担するような場合には課税の問題が生じます」と明記されており、ここでも一律性が鍵になります。日々の仕訳でこの区分を正しく立てるのが負担であれば、記帳・経理代行のサービスを使って入力段階から判定を任せる方法もあります。
当事務所の見解・実務上の注意点
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個別の金額基準を並べた解説は多いのですが、当事務所が実務で重要だと考えているのは、基準の背後にある二つの共通軸です。一つは「おおむね一律か」、もう一つは「換金できるか」です。この二軸で先に振り分けてから金額基準を当てると、判断のぶれが小さくなります。
換金できるものは金額にかかわらず給与になる
No.2591「創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき」は、記念品の支給や旅行・観劇への招待費用の負担に代えて現金、商品券などを支給する場合、その全額(商品券の場合は券面額)が給与として課税されるとしています。さらに「本人が自由に記念品を選択できる場合にも、その記念品の価額が給与として課税されます」とされており、カタログギフトのように受け取る側が選べる形式は注意が必要です。10,000円以下だから大丈夫、という金額の話ではなく、換金性や選択性があるかどうかが先に効いてきます。
社宅は現金で渡した瞬間に給与になる
同じ構造は社宅にもあります。No.2597「使用人に社宅や寮などを貸したとき」の賃貸料相当額は、その年度の建物の固定資産税の課税標準額に0.2パーセントを乗じた額、12円にその建物の総床面積を3.3平方メートルで除した数を乗じた額、その年度の敷地の固定資産税の課税標準額に0.22パーセントを乗じた額の合計です。使用人からこの50パーセント以上の家賃を受け取っていれば差額は課税されませんが、「現金で支給される住宅手当や、入居者が直接契約している場合の家賃負担」は社宅の貸与とは認められず給与として課税されます。会社が契約者になるかどうかで結論が変わるため、更新のたびに契約名義を確認しておきたいところです。
社内規程は判定の証拠になる
慶弔見舞金がNo.5261の福利厚生費に当たるための要件は「一定の基準に従って支給される」ことです。基準がないまま都度の判断で支給していると、一律性を示す材料が残りません。慶弔規程、旅行規程、表彰規程を整えておくことは、節税というより説明責任のための備えです。規程には支給対象者の範囲、支給事由、金額の基準、支給の頻度を書き、実際の支給がその基準どおりであることを稟議や支給簿で追えるようにしておきます。制度設計まで含めて相談したい場合は、堺市の税務顧問として顧問先の規程整備から関与する当事務所のような専門家に、行事を決める前の段階で声をかけてください。
今すぐやるべきこと
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福利厚生費の判定は、支出した後から科目を付け替えて整えるものではありません。どのような対象に、どのような基準で、いくらを支出するかを決めた時点で結論がほぼ決まります。年末の行事や表彰は、予定が固まる前に次の順で確認してください。
- ステップ1:今年度に予定している従業員向け支出を一覧にする
忘年会、社員旅行、永年勤続表彰、記念品、健康診断、食事補助など、10月から12月に見込まれるものを金額とあわせて書き出します。 - ステップ2:参加対象がおおむね一律かを確認する
役員だけ、管理職だけ、特定の部署だけになっていないかを見ます。一律でないものは、この段階で給与または交際費等の候補として分けておきます。工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50パーセント以上が参加することが必要とされている点にも留意します。 - ステップ3:現金・商品券・選択制が混ざっていないかを点検する
記念品に代えた現金や商品券、不参加者への金銭支給、カタログから自由に選べる贈答は、金額基準を満たしても給与になります。 - ステップ4:金額基準に当てはめる
社員旅行は4泊5日以内・参加割合50パーセント以上、食事補助は本人負担が食事の価額の半分以上かつ会社負担が1か月当たり7,500円以下、記念品は処分見込価額10,000円以下といった基準を、一覧の各項目に当てはめます。 - ステップ5:根拠となる書類をその場で残す
旅行の行程表と参加者名簿、飲食費の参加者数と参加者の氏名、表彰の対象者と勤続年数がわかる資料を、支出時点で保存します。後から作ると証拠力が落ちます。一人当たり10,000円以下の飲食費として交際費等から除く場合は、記載すべき事項が定められた書類の保存が要件になっている点にも注意してください。
- ☑ 年末の従業員向け支出を一覧化した
- ☑ 参加対象の一律性を確認した
- ☑ 現金・商品券・選択制の有無を点検した
- ☑ 参加者名簿と行程表の保存方法を決めた
- ☑ 慶弔規程・表彰規程の支給基準を確認した
よくある質問
- Q. 忘年会の費用は福利厚生費にできますか。
- A. 国税庁のタックスアンサーNo.5261は、社内の行事に際して支出される金額などのうち「創立記念日、国民の祝日、新社屋の落成式などに際し、従業員等におおむね一律に、社内において供与される通常の飲食に要する費用」を福利厚生費としています。全従業員を対象とし、通常要する範囲の金額であることが前提です。取引先を招いた場合や、役員や特定の部署だけで行う場合は、この類型から外れて交際費等や給与の検討が必要になります。参加者と金額のわかる資料を残してください。
- Q. 社員旅行に参加できなかった人へ、旅行代相当の現金を渡してもよいですか。
- A. 税務上は避けるべき対応です。No.2603の注書きは、旅行期間と参加割合の要件をいずれも満たしている旅行であっても、自己の都合で旅行に参加しなかった人に金銭を支給する場合には、参加者と不参加者の全員に、その不参加者に対して支給する金銭の額に相当する額の給与の支給があったものとされる、としています。不参加者一人への配慮のつもりが、旅行に行った従業員全員の給与課税につながります。別日程の代替行事を用意するなど、金銭以外の方法を検討してください。
- Q. 昼食の弁当代を会社が半分出しています。課税されますか。
- A. No.2594の2要件を両方満たしていれば課税されません。すなわち、役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること、そして食事の価額から本人負担額を差し引いた金額が1か月当たり7,500円以下であることです。判定は消費税および地方消費税の額を除いた金額で行い、10円未満の端数は切り捨てます。たとえば1か月当たりの食事の価額が13,000円で本人負担が6,000円の場合は半分以上の負担という要件を満たさず、差額の7,000円が給与として課税されます。
- Q. 永年勤続表彰で旅行券を渡すのは問題ありませんか。
- A. No.2591は、永年勤続者に支給する記念品や旅行・観劇への招待費用について、勤続年数や地位などに照らして社会一般的にみて相当な金額以内であること、勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること、同じ人を2回以上表彰する場合は前の表彰からおおむね5年以上の間隔があいていることを要件としています。一方で、記念品の支給や招待費用の負担に代えて現金や商品券を支給する場合は全額が給与として課税されます。旅行券については使用実績の報告など運用面の確認が必要になるため、事前に税理士へ相談することをおすすめします。
- Q. 役員の分の健康診断費用も福利厚生費にできますか。
- A. 役員を含めること自体は問題ありません。国税庁の質疑応答事例「人間ドックの費用負担」は、役員および使用人の健康管理の目的で、一定年齢以上の希望者は全て検診を受けることができ、かつ検診を受けた者の全てを対象としてその費用を負担する場合には、給与等として課税する必要はないとしています。問題になるのは対象の絞り方で、役員や特定の地位にある人だけを対象としてその費用を負担するような場合には課税の問題が生じるとされています。社内規程で対象範囲を定めておくのが確実です。
- Q. 福利厚生費と交際費等を間違えると、どのような影響がありますか。
- A. 影響は二方向に出ます。法人税では、交際費等と判定されると原則として全額が損金不算入となり、期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下である等の法人でも、飲食費の50パーセント相当額を超える部分か、800万円に事業年度の月数を乗じて12で除した定額控除限度額を超える部分が損金になりません。源泉所得税では、現物給与と判定されると本人の給与として源泉徴収の対象になり、年末調整のやり直しにも波及します。どちらも過去分にさかのぼるため、判定は支出前に行うのが基本です。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5261 交際費等と福利厚生費との区分
- 国税庁 タックスアンサー No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
- 国税庁 タックスアンサー No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行
- 国税庁 タックスアンサー No.2594 食事を支給したとき
- 国税庁 タックスアンサー No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき
- 国税庁 タックスアンサー No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき
- 国税庁 質疑応答事例 人間ドックの費用負担
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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