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消費税の納付税額の計算2026|割戻しと積上げの選び方と10月の変更

消費税の納付税額の計算で割戻し計算と積上げ計算を選ぶポイントを解説する記事のタイトル画像
SUMMARYこの記事の要点3点
  • 1ポイント1:消費税の納付税額の計算は、売上税額が「割戻し計算」を原則・「積上げ計算」を特例とし、仕入税額はその逆で「積上げ計算」が原則・「割戻し計算」が特例です(国税庁タックスアンサーNo.6351、令和8年4月1日現在法令等)。
  • 2ポイント2:売上税額を積上げ計算した場合は、仕入税額も積上げ計算しなければなりません。売上側の選択が仕入側を縛るため、申告直前ではなく期首に決めておく必要があります。
  • 3ポイント3:令和8年10月1日から、免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の控除割合が80%から70%へ下がります。経過措置は計算方法に合わせて計算するため、今期の設定を今のうちに確認してください。

消費税の納付税額は、課税期間中の売上げに含まれる消費税額(売上税額)から、仕入れに含まれる消費税額(仕入税額)を差し引いて求めます。この単純な引き算の前段にある「売上税額と仕入税額をどう積み上げるか」には、割戻し計算と積上げ計算という二つの方法があり、どちらを選ぶかで納付税額が変わります。しかも売上側の選択が仕入側を縛るという制約があるため、申告書を作り始めてから気づくと手戻りになります。さらに令和8年10月1日からは、免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の控除割合が引き下げられ、計算方法との組み合わせを確認し直す必要が出てきます。本記事では国税庁のタックスアンサーNo.6351「納付税額の計算のしかた」を出発点に、中小企業が毎期迷う論点を実務目線で整理します。

制度・改正の概要

消費税の納付税額の計算の根拠となる制度を示す官公庁庁舎のイラスト

国税庁のタックスアンサーNo.6351「納付税額の計算のしかた」は、消費税の税率が標準税率(10パーセント)と軽減税率(8パーセント)の複数税率であることから「売上げと仕入れを税率ごとに区分して税額計算を行う必要があります」としたうえで、売上税額から仕入税額を控除するという計算の骨格そのものは適格請求書等保存方式(インボイス制度)でも変わらないと説明しています。課税期間は、原則として個人の場合は1月1日から12月31日までの1年間、法人の場合は事業年度です。

売上税額は割戻し計算が原則、積上げ計算が特例

売上税額の原則である割戻し計算は、税率ごとに区分した課税期間中の課税資産の譲渡等の税込価額の合計額に110分の100または108分の100を掛けて税率ごとの課税標準額を算出し、それぞれ7.8パーセントまたは6.24パーセントを掛けて求めます。国・地方をあわせた10パーセントや8パーセントではなく、国税部分の税率を使う点が計算上の落とし穴です。

特例である積上げ計算は、相手方に交付した適格請求書または適格簡易請求書の写しを保存している場合に、それらの書類に記載した消費税額等の合計額に100分の78を掛けて売上税額とする方法です。電磁的記録を保存している場合も含まれます。No.6351は続けて「なお、売上税額を積上げ計算した場合、仕入税額も積上げ計算しなければなりません」と明記しています。

仕入税額は積上げ計算が原則、割戻し計算が特例

仕入税額は売上税額と原則・特例が逆になります。原則の積上げ計算は、相手方から交付を受けた適格請求書などの請求書等に記載されている消費税額等のうち課税仕入れに係る部分の金額の合計額に100分の78を掛けて算出します。特例の割戻し計算は、税率ごとに区分した課税期間中の課税仕入れに係る支払対価の額の合計額に110分の7.8または108分の6.24を掛けて算出する方法で、No.6351は「割戻し計算により仕入税額を計算できるのは、売上税額を割戻し計算している場合に限られます」としています。

売上税額の計算選べる仕入税額の計算位置づけ
割戻し計算(原則)積上げ計算(原則)/割戻し計算(特例)のいずれか組み合わせの自由度が最も高い
積上げ計算(特例)積上げ計算(原則)のみ割戻し計算は選べない
割戻し計算と積上げ計算の併用積上げ計算(原則)のみ併用も積上げ計算を適用した場合に当たる
国税庁のインボイス制度に関するQ&A問118の注書きは「売上税額の計算方法において、『割戻し計算』と『積上げ計算』を併用することは認められていますが、仕入税額の計算方法において、『積上げ計算』と『割戻し計算』を併用することはできません」としています。売上側は取引先ごとに使い分けられる一方、仕入側は一本化しなければならないという非対称があります。

仕入税額の積上げ計算には二つの型があります。交付を受けた請求書等に記載された消費税額等を積み上げる請求書等積上げ計算と、課税仕入れの都度、支払対価の額に110分の10(軽減税率の対象となる場合は108分の8)を乗じて算出した金額を仮払消費税額等として帳簿に計上し、その合計額に100分の78を掛ける帳簿積上げ計算です。この二つは併用できますが、割戻し計算との併用はできません。根拠法令等としてNo.6351は「消法19、28、29、30、37、45、消令46、62、平28改正法附則51の2、51の3」を挙げています。

中小企業への実務影響

消費税の計算方法の選択が中小企業の実務に与える影響を示す小規模な事業所のイラスト

割戻し計算と積上げ計算で納付税額に差が出る原因は、1円未満の端数処理が発生する回数の違いにあります。割戻し計算は課税期間の合計額に対して一度だけ割り戻すため端数処理は実質1回ですが、積上げ計算は書類1枚ごと、あるいは仕入1件ごとに端数が切り捨てられます。取引の単価が小さく件数が多い事業ほど、この積み重ねが効いてきます。

売上側で積上げ計算を選ぶ前に確かめること

売上税額の積上げ計算は、交付した適格請求書等の写しを保存していることが前提です。Q&A問119は「適格簡易請求書の記載事項は、『適用税率又は税率ごとに区分した消費税額等』であるため、『適用税率』のみを記載して交付する場合、税率ごとの消費税額等の記載がないため、積上げ計算を行うことはできません」としています。レシートに「10%対象」とだけ印字して消費税額を出していないレジを使っている場合、そもそも積上げ計算の土俵に乗れません。

また、適格請求書に記載する消費税額等の端数処理について、Q&A問57は「一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う必要があります」としており、商品ごとに端数処理して合計する方法は認められていません。切上げ・切捨て・四捨五入のいずれを採るかは任意ですが、請求書の発行システムがこのルールどおりに動いているかは、積上げ計算を選ぶかどうか以前の確認事項です。

令和8年10月1日からの経過措置の引下げ

適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、制度開始後8年間、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置が設けられています。Q&A問130が示す割合は下表のとおりで、令和8年10月1日から控除割合が「仕入税額相当額の70%」に下がります。

期間割合
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日から令和10年9月30日まで仕入税額相当額の70%
令和10年10月1日から令和12年9月30日まで仕入税額相当額の50%
令和12年10月1日から令和13年9月30日まで仕入税額相当額の30%

ここで効いてくるのが計算方法との連動です。Q&A問130は、仕入税額について積上げ計算を適用している場合は経過措置の適用を受ける場合も積上げ計算により計算する必要があるとし、課税仕入れの都度、支払対価の額に110分の7.8(軽減税率の対象となる場合は108分の6.24)を乗じた金額に100分の80を乗じて算出すると説明しています。割戻し計算を適用している場合も同様に割戻し計算で計算します。つまり計算方法を変えると、経過措置の計算手順まで連動して変わります。

経過措置には金額の上限もあります。Q&A問130の参考は、一の免税事業者等から行う経過措置の対象となる課税仕入れの額の合計額が課税期間に応じた一定の金額を超える場合、その超えた部分には経過措置を適用できないとしています。その金額は、令和6年10月1日から令和8年9月30日までの間に開始する課税期間が「税込み10億円」であるのに対し、令和8年10月1日以後に開始する課税期間は「税込み1億円」に下がります。基準日が「課税仕入れの日」ではなく「課税期間の開始日」である点に注意が必要で、3月決算法人であれば令和9年4月1日開始の事業年度から、個人事業者であれば令和9年分から新しい基準が適用されます。

外貨建取引を行っている場合はもう一段の注意が要ります。Q&A問127は、帳簿積上げ計算で外貨建ての課税仕入れを処理するとき、外貨税込の支払対価の額を円換算してから仮払消費税額等を算出する方法と、外貨のまま計算過程の仮払消費税額等を算出してから円換算する方法のいずれかによることとし、いずれの場合も1円未満の端数は切捨てまたは四捨五入になるとしています。

日々の記帳でこの区分を積み上げるのは手作業では難しく、会計ソフト側で免税事業者等からの仕入れを区分して登録する運用が前提になります。自社で追い切れない場合は、記帳・経理代行のサービスのように、仕訳の入力段階で税区分の判定まで任せる方法も選択肢になります。

当事務所の見解・実務上の注意点

売上税額と仕入税額の計算方法が連動する仕組みを示す3つの歯車のイラスト

この論点を扱う記事の多くは「どちらが有利か」という比較で終わります。しかし実際に中小企業の申告で問題になるのは有利不利よりも、選択が後戻りできない形で他の処理を縛るという構造のほうです。当事務所では、特段の事情がない限り「売上税額は割戻し計算、仕入税額は帳簿積上げ計算」を出発点に据えることが多いと考えています。

売上を割戻し計算にしておく実務上の利点

売上税額を割戻し計算にしておけば、仕入税額は積上げ計算と割戻し計算のどちらも選べます。逆に一度でも売上を積上げ計算にすると、仕入は積上げ計算に固定されます。しかも売上税額の計算は取引先ごとに割戻し計算と積上げ計算を分けて適用する併用も認められていますが、Q&A問119は「併用した場合であっても売上税額の計算につき積上げ計算を適用した場合に当たるため、仕入税額の計算方法に割戻し計算を適用することはできません」としています。一部の取引先だけ積上げにしたつもりが、仕入側の自由度を丸ごと失うわけです。

帳簿積上げ計算の端数処理を会計ソフトで固定する

帳簿積上げ計算では、課税仕入れの都度に算出する仮払消費税額等の1円未満の端数を「切捨て又は四捨五入」することとされています。切上げは認められていません。会計ソフトの税抜経理では既定値が四捨五入になっていることが多いため、期の途中で担当者が設定を変えると、同じ課税期間の中に異なる端数処理が混在します。期首に設定を確認して固定し、変更履歴を残す運用にしておくと安全です。仕入税額については、請求書等積上げ計算と帳簿積上げ計算を併用することは認められているため、電子データで受け取る請求書は請求書等積上げ、少額の経費精算は帳簿積上げというように、社内の実態に合わせて組み合わせる余地があります。

そもそも選択が発生しないケースを見極める

簡易課税制度を適用している場合は、売上げに係る消費税額にみなし仕入率を乗じて仕入控除税額を求めるため、仕入側の積上げ計算・割戻し計算という選択は生じません。簡易課税は「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した課税事業者で、基準期間における課税売上高が5,000万円以下である課税期間に適用されます。2割特例や3割特例を適用する課税期間も同様に、納付税額を売上税額の一定割合とする計算になります。自社がどの計算に乗っているかを先に確定させたうえで、選択の余地がある部分だけを検討するのが近道です。判断に迷う場合は、堺市の税務顧問として顧問先の課税期間ごとに設定を点検する当事務所のような専門家に、期首の段階で相談しておくことをおすすめします。

今すぐやるべきこと

消費税の納付税額の計算方法を確認する手順を示す階段のイラスト

計算方法の選択は届出や承認を要するものではなく、申告書の作成時に選ぶ形になります。それだけに社内で意識されないまま会計ソフトの初期設定のとおりに流れてしまいがちです。申告期限の直前ではなく、課税期間が動いている今のうちに確認しておきたい手順を5つに整理しました。

  1. ステップ1:自社の課税期間の開始日と終了日を書き出す
    令和8年10月1日から経過措置の割合が変わり、令和8年10月1日以後に開始する課税期間から金額基準も変わります。どちらの基準日も自社の課税期間のどこに当たるかを紙に書き出すところから始めます。
  2. ステップ2:今期の計算方法がどれになっているかを確認する
    簡易課税・2割特例・3割特例の適用がある課税期間かどうかを先に確定し、原則課税であれば売上税額と仕入税額それぞれの計算方法を会計ソフトの設定画面で確認します。
  3. ステップ3:売上側の書類保存体制を点検する
    積上げ計算を選ぶ場合は交付した適格請求書等の写しの保存が要件です。レシートに税率ごとの消費税額等が印字されているか、電磁的記録で保存する場合の保存方法が決まっているかを確認します。
  4. ステップ4:免税事業者等からの課税仕入れを洗い出す
    継続的に支払っている外注先や家主のうち、登録番号のない相手をリスト化します。令和8年10月1日以後の取引は控除割合が仕入税額相当額の70%になるため、10月をまたぐ仕訳の税区分を確認します。
  5. ステップ5:計算方法を申告前に税理士と合意しておく
    売上側の選択が仕入側を縛るため、決算作業に入ってからの変更は集計のやり直しにつながります。期中のうちに方針を決め、書面かメールで記録に残しておきます。過去の申告で採用した方法と変える場合は、変更の理由と影響額もあわせて残しておくと、後年の税務調査で説明しやすくなります。
  • ☑ 課税期間の開始日・終了日を確認した
  • ☑ 原則課税か簡易課税等かを確定させた
  • ☑ 会計ソフトの消費税計算設定と端数処理を確認した
  • ☑ 免税事業者等からの課税仕入れをリスト化した

よくある質問

Q. 割戻し計算と積上げ計算では、どちらが納付税額は少なくなりますか。
A. 一律にどちらが有利と決まるものではありません。差が生まれるのは1円未満の端数処理が発生する回数の違いによるもので、単価が小さく取引件数が多い事業では、書類ごと・取引ごとに端数が切り捨てられる積上げ計算のほうが売上税額を小さくできる場面があります。一方で仕入側では割戻し計算のほうが大きくなる場合もあり、売上と仕入を通した合計で見ないと判断できません。自社の直近の申告データで両方を試算して比べるのが確実です。
Q. 売上税額を積上げ計算にすると、仕入税額はどうなりますか。
A. 仕入税額も積上げ計算にしなければなりません。国税庁のタックスアンサーNo.6351は「売上税額を積上げ計算した場合、仕入税額も積上げ計算しなければなりません」と明記しています。仕入税額の割戻し計算は、売上税額を割戻し計算している場合に限って選べる特例という位置づけです。売上の一部の取引先だけを積上げ計算にした併用の場合も積上げ計算を適用した場合に当たるため、仕入側で割戻し計算は使えません。
Q. レシートしか発行していない小売業ですが、売上税額の積上げ計算はできますか。
A. レシートが適格簡易請求書として税率ごとに区分した消費税額等を記載していれば、その写しを保存することで積上げ計算ができます。ただし適格簡易請求書の記載事項は「適用税率又は税率ごとに区分した消費税額等」とされているため、適用税率のみを記載している場合は税率ごとの消費税額等の記載がなく、積上げ計算はできません。まずレジの印字内容を確認してください。なお、顧客がレシートを受け取らなかった場合でも、写しを保存していれば積上げ計算をして差し支えないとされています。
Q. 帳簿積上げ計算の端数処理は、切上げにしてもよいのでしょうか。
A. 帳簿積上げ計算で仮払消費税額等を算出する際の1円未満の端数は「切捨て又は四捨五入」とされており、切上げは認められていません。一方で、適格請求書に記載する消費税額等の端数処理は、一の適格請求書につき税率ごとに1回行う限り、切上げ・切捨て・四捨五入のいずれでも任意の方法とすることができます。同じ「端数処理」でも、請求書を発行する場面と帳簿に計上する場面で扱いが異なる点に注意してください。
Q. 決算期をまたぐ期間の請求書を受け取ったときは、どう計算しますか。
A. たとえば3月決算法人が3月21日から4月20日までをまとめた適格請求書を受け取った場合、請求書等積上げ計算で処理するには、当課税期間分と翌課税期間分の消費税額をそれぞれの期間の取引に係る金額として算出し、それぞれの課税期間で積み上げる必要があります。当課税期間に行った課税仕入れについて帳簿積上げ計算を用いることもできます。なお、法人税基本通達2-6-1により決算締切日を継続して3月20日としているような場合は、課税期間ごとの区分の対応は不要とされています。
Q. 簡易課税や2割特例を使っていても、計算方法を選ぶ必要がありますか。
A. 仕入税額について積上げ計算か割戻し計算かを選ぶ場面は生じません。簡易課税制度は売上げに係る消費税額に事業区分ごとのみなし仕入率を乗じて仕入控除税額を求めるため、実際の仕入れの集計方法を問わないからです。2割特例は納付税額を売上税額の2割とする経過措置で、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間が対象です。小規模な個人事業者については、令和9年および令和10年の課税期間を対象に納付税額を売上税額の3割とする3割特例が設けられています。

参考資料・出典

本記事は道濟会計事務所が監修しました。




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