お問い合わせ

072-200-3579

受付時間:月〜金 9:00〜17:00

大阪で顧問税理士をお探しの方は道濟会計事務所へ

業務改善助成金2026|最大600万円・9月申請開始と最低賃金引上げの実務

2026.06.05
業務改善助成金2026の最大600万円・9月申請開始と賃上げ設備投資を示すアイキャッチ
この記事の要点3点

  • 業務改善助成金は、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、あわせて設備投資等を行った中小企業に、その費用の一部を助成する制度。令和8年度(2026年度)は令和8年9月1日から交付申請の受付開始です。
  • 賃上げコースは50円・70円・90円の3区分に再編(従来の30円・45円コースは廃止)。助成上限額は一般事業者で最大450万円、特例事業者で最大600万円です。
  • 助成率は事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4。9月の申請開始に向けて、賃上げ計画と設備の見積りは今から準備すべきです。

人手不足と物価高のなかで、賃上げは中小企業にとって避けて通れない経営課題になっています。とはいえ「賃上げの原資をどう捻出するか」は切実です。そこで活用したいのが、賃上げと生産性向上をセットで後押しする業務改善助成金です。事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を引き上げ、あわせて生産性向上に資する設備投資などを行った中小企業に、その費用の一部を国が助成する制度で、令和8年度(2026年度)は令和8年9月1日から交付申請の受付が始まります。本記事では、令和8年度の制度概要、賃上げコースと助成率・上限額、対象となる経費と事業者、そして9月の申請開始に向けて今から準備すべきことを、中小企業の実務目線で整理します。

業務改善助成金とは|令和8年度の制度概要と申請スケジュール

業務改善助成金は厚生労働省が所管する制度で、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った中小企業・小規模事業者に対し、その設備投資等にかかった費用の一部を助成するものです。ポイントは「賃上げ」と「設備投資等」の2つがセットになっている点で、賃上げだけ、あるいは設備投資だけでは対象になりません。賃上げで人材の定着を図りつつ、設備投資で生産性を高める——この両輪を同時に回す企業を支援する設計になっています。

令和8年度の申請スケジュールは、厚生労働省の案内によると交付申請受付開始日が令和8年9月1日です。申請の締切は、地域別最低賃金の発効日の前日、または令和8年11月30日のいずれか早い日が目安とされています。さらに、事業(賃上げと設備投資)を完了させる期限は交付決定の属する年度の1月31日(令和9年1月31日)で、やむを得ない理由がある場合は令和9年3月31日まで延長できるとされています。予算には限りがあり、年度途中で受付が終了する可能性もあるため、9月の受付開始と同時に動けるよう前倒しで準備することが重要です。

ポイント:手続きの基本的な順序
業務改善助成金は「交付申請 → 交付決定 → 賃上げと設備投資の実施 → 実績報告 → 助成金の支給」という流れで進みます。交付決定を受けてから設備投資を行うのが原則で、交付決定前に発注・購入した設備は対象外となるのが基本です。先に設備を買ってしまわないよう注意が必要です。

制度の背景には、近年の最低賃金の継続的な引上げと、深刻化する人手不足があります。地域別最低賃金は毎年秋に改定され、上昇基調が続いています。中小企業にとっては、最低賃金の引上げに対応しつつ人材を確保する必要がある一方、賃上げ原資の確保は容易ではありません。業務改善助成金は、こうした「賃上げと生産性向上を同時に進めたい中小企業」を支援するために設けられており、単なる賃上げ補助ではなく、設備投資を通じた生産性の底上げをセットで求める点に制度の狙いがあります。賃上げを「コスト」ではなく「生産性向上への投資」と結びつけて考える経営者ほど、この助成金を活かしやすいといえます。

毎年度、細部の要件は見直されます。令和8年度については、賃上げ額に応じたコースが整理され、対象経費や対象労働者の範囲についても運用が定められています。最新の正確な要件は必ず厚生労働省の公式案内で確認することが前提ですが、本記事では令和8年度の主要な枠組みを押さえていきます。なお、賃上げ対象となる労働者は雇用保険の被保険者であることが基本とされており、対象者の範囲も申請前に確認しておきたいポイントです。

中小企業への実務影響|対象事業者・対象経費と注意点

まず対象となる事業者です。業務改善助成金は中小企業・小規模事業者を対象としており、業種に応じて「資本金または出資の総額」か「常時使用する労働者数」のいずれかの要件を満たす必要があります。一般に、小売業・サービス業・卸売業・その他の業種で基準が異なり、たとえば労働者数で見ると小売業は50人以下、サービス業・卸売業は100人以下、その他の業種は300人以下といった区分が用いられます。なお、賃金を引き上げる対象となる労働者がいない(従業員がいない)事業者は対象外です。

次に対象経費です。助成の対象となるのは生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資等で、機械設備、POSレジ、専用ソフトウェア、店舗改装などが典型例です。一方で、汎用性が高く事業以外にも使える物品は対象外とされることが多く、たとえば自動車は特殊用途自動車などを除き原則として対象外と整理されています。何が対象になるかは個別性が高いため、見積りを取る段階で対象経費に該当するかを確認しておくと安全です。

重要:賃上げは「事業場内最低賃金」が基準
この助成金で引き上げるのは、事業場の中で最も低い時間給(事業場内最低賃金)です。一部の従業員だけ昇給させても、事業場内で最も低い賃金が要件額以上引き上がっていなければ対象になりません。また、引き上げ後の賃金を一定期間維持することも求められます。賃上げ計画は「最も低い賃金の人」を起点に設計する必要があります。

対象経費をもう少し具体的に見ておきます。生産性向上に資する設備投資等としては、製造業であれば加工機械や検査機器、小売・飲食業であればPOSレジや券売機、セルフオーダー端末、サービス業であれば予約・顧客管理システムや専用ソフトウェアの導入などが典型例として挙げられます。店舗のレイアウト改装や、作業効率を高めるための什器の入替えなどが対象となる場合もあります。一方で、単なる消耗品の購入や、事業に直接結びつかない汎用的な物品は対象になりにくい点に注意が必要です。何が「生産性向上・労働能率の増進に資する」と認められるかは個別判断になるため、見積りの段階で対象経費に当たるかを確認しておくことが、申請後のトラブルを防ぐうえで有効です。

また、賃上げ後の賃金水準は一定期間維持することが求められます。引上げ額に応じたコースを選んだうえで、引き上げた事業場内最低賃金をその後も下げないことが前提です。賃上げは将来にわたる固定費となるため、助成金を受けた年度だけでなく、その先も負担に耐えられる計画かどうかを見極めることが欠かせません。

実務上のインパクトとして大きいのは、賃上げという固定費の増加を、設備投資への助成という形で部分的に相殺できる点です。賃上げは一度実施すると元に戻しにくい固定費ですが、同時に行う設備投資で生産性が上がれば、増えた人件費を吸収しやすくなります。助成金はその設備投資の初期費用を軽減するため、「賃上げに踏み切りたいが原資が不安」という企業にとって、最初の一歩を後押しする役割を果たします。ただし助成金はあくまで設備投資費用の一部補助であり、賃上げ分そのものが全額補填されるわけではない点は理解しておく必要があります。

コース・助成率・上限額の比較

令和8年度の業務改善助成金は、賃上げ額に応じて50円・70円・90円の3コースに再編されました。従来あった30円・45円コースは廃止されており、申請には事業場内最低賃金を50円以上引き上げることが必要です。助成率と上限額の枠組みは次のとおりです。

項目内容
賃上げコース50円コース/70円コース/90円コース(引き上げ額に対応。50円以上の引上げが必要)
助成率(最低賃金1,050円未満)4/5(80%)
助成率(最低賃金1,050円以上)3/4(75%)
助成上限額(一般事業者)最大450万円(コースと賃上げ対象の労働者数に応じて上限が決まる)
助成上限額(特例事業者)最大600万円

上限額は「コース(引上げ額)」と「賃上げの対象となる労働者数」の組み合わせで決まり、コースの引上げ額が大きいほど、また対象労働者数が多いほど上限が高くなる仕組みです。一般事業者の上限は最大450万円、物価高騰の影響を受けた事業者などの特例事業者に該当すると上限が引き上げられ、最大600万円となります。たとえば50円コースで賃上げ対象が1人(労働者数30人未満)のケースでは上限が40万円程度から始まり、コースと人数に応じて段階的に上限が上がっていきます。

「特例事業者」とは、物価高騰など外的要因の影響を受けた事業者や、生産性向上に資する一定の設備投資を行う事業者などが対象として想定されている区分です。特例事業者に該当すると、助成上限額の引上げに加えて、通常は対象になりにくいパソコン・タブレット等の端末や周辺機器の新規導入が対象経費に含められるなど、対象範囲が広がる扱いがあります。自社が特例事業者に該当するかどうかは要件の確認が必要ですが、該当すれば助成のメリットが大きくなるため、申請前に必ずチェックしておきたいポイントです。

ポイント:助成率の分かれ目は「1,050円」
助成率は、申請する事業場の引上げ前の事業場内最低賃金で判定されます。1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4です。自社の最も低い時間給が1,050円の前後にある場合、助成率が変わるため、見積額に対する自己負担の試算が変わります。正確な上限額の早見表は厚生労働省の案内に掲載されているため、自社のコースと労働者数で必ず確認してください。

当事務所の見解・実務上の注意点

業務改善助成金は使いやすい制度ですが、「申請したのに対象外だった」「思ったより手元に残らなかった」という声も少なくありません。当事務所の視点から、特に注意したい3点を挙げます。

「設備を先に買わない」を徹底する

最も多い失敗が、交付決定を待たずに設備を発注・購入してしまうケースです。業務改善助成金は交付決定後に設備投資を実施するのが原則で、交付決定前に契約・購入した設備は対象外となるのが基本です。「9月に申請するから、それまでに設備だけ先に入れておこう」という段取りは、助成金を受けられなくする典型例です。発注のタイミングは必ず交付決定の後に置いてください。

賃上げは「維持」までがセット

事業場内最低賃金を引き上げても、その水準を維持しなければ要件を満たしません。賃上げは一度実施すると元に戻しにくい固定費であり、助成金はあくまで設備投資費用の一部を補助するものです。賃上げによる人件費増を、設備投資による生産性向上で吸収できるかを、申請前に資金繰りベースで見通しておくことが重要です。助成金ありきではなく、賃上げ後も持続可能な経営計画になっているかを先に確認してください。

申請書類と実績報告の負担を見込む

業務改善助成金は、交付申請時の事業実施計画に加え、事業完了後の実績報告でも見積書・契約書・領収書・賃金台帳など多くの証憑が必要です。書類の不備や賃金引上げの証明不足で支給額が減ることもあります。社会保険労務士など専門家のサポートを受けるか、早い段階から証憑をそろえる体制を整えておくと、手戻りを減らせます。9月の受付開始までに、賃上げ計画と設備の見積りを準備しておくことが、結果的にスムーズな受給につながります。

今すぐやるべきこと(チェックリスト)

令和8年9月1日の受付開始に向けて、中小企業が今から取り組むべき手順を時系列で示します。

  1. ステップ1:事業場内最低賃金を確認する
    事業場の中で最も低い時間給を把握し、引上げ前の水準が1,050円未満か以上か(助成率の分かれ目)を確認します。
  2. ステップ2:賃上げコースと対象労働者数を決める
    50円・70円・90円のどのコースで、何人の賃金を引き上げるかを検討し、想定される助成上限額の目安を把握します。
  3. ステップ3:生産性向上のための設備投資を計画する
    導入したい設備・ソフト・改装などをリスト化し、対象経費に該当するかを確認のうえ見積りを取得します(この時点では発注しない)。
  4. ステップ4:令和8年9月1日以降に交付申請する
    事業実施計画を作成し、受付開始後すみやかに申請します。予算上限による早期終了に備え、前倒しで準備しておきます。
  5. ステップ5:交付決定後に設備投資と賃上げを実施し、実績報告する
    交付決定を受けてから設備を取得し、賃上げを実施・維持します。完了期限(令和9年1月31日、延長で3月31日)までに実績報告を行います。
受付開始は9月ですが、賃上げ計画の設計と設備の見積取得には時間がかかります。6〜8月のうちに準備を終え、9月1日に申請できる状態にしておくのが理想です。予算には限りがあるため、早めの行動が受給の可能性を高めます。

よくある質問

Q. 令和8年度の業務改善助成金はいつから申請できますか?
A. 厚生労働省の案内によると、交付申請の受付開始日は令和8年9月1日です。締切は地域別最低賃金の発効日の前日、または令和8年11月30日のいずれか早い日が目安とされています。予算には限りがあり年度途中で受付が終了する可能性もあるため、9月1日に申請できるよう前倒しで準備しておくことをおすすめします。
Q. 助成の上限額はいくらですか?
A. 上限額は賃上げコース(50円・70円・90円)と賃上げ対象の労働者数の組み合わせで決まります。一般事業者で最大450万円、物価高騰の影響を受けた事業者などの特例事業者に該当すると最大600万円まで引き上げられます。コースの引上げ額が大きく、対象労働者数が多いほど上限が高くなります。正確な早見表は厚生労働省の案内でご確認ください。
Q. 助成率はどのくらいですか?
A. 助成率は、申請する事業場の引上げ前の事業場内最低賃金によって変わります。1,050円未満の場合は4/5(80%)、1,050円以上の場合は3/4(75%)です。たとえば1,050円未満の事業場が対象経費100万円の設備を導入する場合、計算上はその80%が助成の対象となりますが、コースごとの上限額の範囲内での支給となります。
Q. 設備を先に買ってしまっても助成は受けられますか?
A. 原則として受けられません。業務改善助成金は交付決定を受けてから設備投資を実施するのが基本で、交付決定前に発注・購入した設備は対象外となります。「申請前に設備だけ先に入れておく」という段取りは助成金を受けられなくする典型例です。発注のタイミングは必ず交付決定の後に置いてください。
Q. 自動車の購入も対象になりますか?
A. 自動車は、特殊用途自動車などを除き原則として対象外と整理されています。業務改善助成金の対象経費は生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資等であり、汎用性が高く事業以外にも使える物品は対象になりにくい傾向です。導入予定の物品が対象経費に該当するかは、見積りを取る段階で厚生労働省の案内や窓口で確認しておくと安全です。

道濟会計事務所の税務相談

本記事に関する個別のご相談・具体的な実務のサポートは、当事務所へご連絡ください。初回相談は無料です。賃上げと設備投資を組み合わせた資金計画や、助成金申請に向けた準備もお手伝いします。

お問い合わせはこちら

参考資料・出典

本記事は道濟会計事務所が監修しました。(監修:道濟寛樹/税理士・道濟会計事務所)





新着お知らせ