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経営セーフティ共済の損金算入改正2026|解約後2年は再加入掛金が経費不可

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の損金算入改正2026年のイメージ
この記事の要点3点

  • 令和6年(2024年)10月1日以後に経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)を解約して再加入した場合、解約日から2年を経過する日までに支払う掛金は、損金または必要経費に算入できなくなりました。
  • 影響を受けるのは、節税のために短期で「解約と再加入」を繰り返してきた中小企業・個人事業主です。掛金の積立や貸付制度そのものは従来どおり利用できます。
  • すぐにやるべきは、過去2年以内の解約履歴の確認と、解約手当金を受け取る年度(出口)の設計です。安易な解約は2年間の節税メリットを失う結果になります。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、掛金を全額損金または必要経費にできる数少ない制度として、多くの中小企業や個人事業主が節税と資金繰り対策に活用してきました。しかし令和6年度税制改正により、令和6年10月1日以後に共済契約を解約して再び加入した場合の掛金の取扱いが大きく変わりました。「解約してまた入り直せば、また損金にできる」という従来の使い方が通用しなくなったのです。本記事では、改正の正確な内容と、中小企業の現場で何に注意すべきかを、出口戦略まで含めて税理士の視点で具体的に解説します。すでに加入している事業者はもちろん、これから加入を検討する事業者にとっても、制度の使い方を見直す重要な転換点になりますので、ぜひ最後までご確認ください。

経営セーフティ共済の改正概要

経営セーフティ共済は、取引先の倒産による中小企業の連鎖倒産や経営難を防ぐことを目的とした、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する共済制度です。掛金月額は5,000円から20万円まで5,000円単位で設定でき、掛金の積立総額は800万円が上限です。取引先が倒産した際には、無担保・無保証人で、掛金総額の10倍(最高8,000万円)または回収困難となった売掛金等の額のいずれか少ない額まで貸付けを受けられます。

この制度が中小企業に広く使われてきた最大の理由が、税制上の優遇です。支払った掛金は、法人であれば租税特別措置法第66条の11により損金の額に算入でき、個人事業主であれば同法第28条により事業所得の必要経費に算入できます。年間で最大240万円(月20万円×12か月)、累計800万円までを所得から控除できるため、利益が出た年度の課税所得を圧縮する手段として重宝されてきました。掛金は前納も可能で、1年以内の前納掛金であればその全額を支払った年度の損金・必要経費に算入できるため、決算対策として年払いで活用する事業者も少なくありません。

加入できるのは、継続して1年以上事業を行っている中小企業者で、業種ごとに資本金または従業員数の基準が定められています。主な業種の基準は次のとおりです。

業種資本金の額または出資の総額常時使用する従業員数
製造業・建設業・運輸業その他の業種3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下

いずれかの基準に該当すれば、資本金または従業員数のどちらか一方を満たすことで加入できます。このほか企業組合・協業組合や、一定の医療法人なども加入対象です。

令和6年度税制改正のポイント
租税特別措置法第28条および第66条の11が改正され、令和6年(2024年)10月1日以後に共済契約を解除し、その後再び共済契約を締結(再加入)した場合、解除の日からその日以後2年を経過する日までの間に支出する掛金については、必要経費または損金の額に算入できないこととされました。改正の根拠となる「所得税法等の一部を改正する法律」は令和6年3月28日に成立し、同年3月30日に公布されています。

注意したいのは、これが共済制度そのもの(中小企業倒産防止共済法)の改正ではなく、あくまで税制上の特例の改正だという点です。中小機構も「中小企業倒産防止共済法および同法施行令の変更ではなく、加入や解約の事務・手続自体に変更はない」と案内しています。つまり、解約後すぐに再加入すること自体は引き続き可能ですが、その後2年間に払う掛金が「税務上は経費にならない」という点だけが変わったのです。

改正の背景には、制度が本来の連鎖倒産防止ではなく、もっぱら節税目的で使われている実態がありました。解約手当金の支給率が高くなる加入後3〜4年目で解約する例が多く、しかも再加入者の71.2%が解約から1年未満で入り直していたという中小機構の分析があります。「利益が出た年に掛けて損金にし、不要になったら解約して、また入り直す」という短期回転の節税スキームに歯止めをかけることが、今回の改正の狙いです。

この制度はもともと、取引先の倒産という不測の事態に備えるためのものであり、掛金を払った時点で損金にできるのは、いざというときに連鎖倒産を防ぐ資金をプールしておく趣旨があるからです。短期間での解約と再加入を繰り返す使い方は、こうした制度趣旨から外れているとして、かねてから問題視されていました。今回の改正は、制度の本来の目的に沿った中長期での利用を促すものと位置づけられます。なお、掛金の損金算入そのものが廃止されたわけではなく、初めて加入する事業者や、解約せずに掛け続けている事業者には、これまでどおりの税務メリットが維持されます。

中小企業・個人事業主への実務影響

今回の改正で実務上もっとも影響を受けるのは、これまで「解約と再加入の繰り返し」を前提に節税設計をしてきた事業者です。とりわけ、決算対策として共済を出し入れしてきた中小企業にとっては、節税の組み立て方そのものを見直す必要があります。具体的にどのような場面で効いてくるのかを整理します。

「解約してまた損金」の節税が封じられた

従来は、共済を解約して解約手当金を受け取り(その年は益金・事業所得として課税されるものの)、再加入してまた掛金を損金にする、というサイクルを比較的短い周期で回すことが可能でした。改正後は、令和6年10月1日以後に解約して再加入すると、解約日から2年を経過する日までに支払った掛金がまったく損金・必要経費になりません。掛金は積み立てられていくのに、その間は税務メリットがゼロという状態が2年間続くことになります。

誤解しやすい点
「2年間は再加入できない」という改正ではありません。再加入は従来どおりいつでも可能です。あくまで再加入後2年間に支払う掛金が損金算入できないという税務上の制限です。また、損金不算入となった掛金も掛け捨てになるわけではなく、将来の解約手当金の計算には含まれます。

起点はあくまで「令和6年10月1日以後の解約」

この制限が働くのは、令和6年10月1日以後に解約した契約について再加入した場合です。令和6年9月30日以前に解約した場合は、改正前のルールが適用され、再加入後の掛金も従来どおり損金・必要経費に算入できます。すでに過去に解約・再加入を済ませている事業者は、自社の解約日がこの基準日の前か後かを正確に把握しておく必要があります。中小機構から届く加入者向けの通知や、共済契約の控え、過去の申告書の別表などを確認すれば、解約日や再加入日は特定できます。判断に迷う場合は、解約手当金を受け取った年度の申告内容をもとに、顧問税理士に確認してもらうとよいでしょう。

解約手当金の「出口」設計がより重要に

解約手当金は、自己都合の解約であっても掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40か月(3年4か月)以上納めていれば掛金全額が戻ります(12か月未満は掛け捨て)。受け取った解約手当金は、その年度に法人なら益金、個人事業主なら事業所得の収入金額として課税されます。掛金を払った時点で損金にした分が、解約時にまとめて課税所得に戻ってくる「課税の繰延べ」の性質を持つ制度であるため、解約手当金をどの年度に受け取るか(=いつ解約するか)の設計が節税効果を左右します。今回の改正で解約と再加入のサイクルが使いにくくなった分、赤字の年度や、役員退職金など大きな損金が出る年度に解約をぶつける出口戦略の重要性が一段と高まりました。

具体的に考えてみましょう。月20万円を40か月掛けて800万円を積み立て、すべて損金に算入してきた法人が、この共済を解約すると、800万円の解約手当金が一度に益金として計上されます。この年度に黒字のまま解約すれば、800万円に対して法人税等が課され、これまでの節税効果が一気に取り戻されてしまいます。逆に、800万円規模の役員退職金を支給する年度や、大型の設備除却損が出る年度に解約をぶつければ、解約手当金の益金と損金が相殺され、税負担を抑えられます。従来は「解約して益金が出ても、また再加入して掛金を損金にすればよい」という調整が利きましたが、改正後は再加入後2年間その掛金が損金にならないため、この緩衝材が使えなくなった点が実務上の大きな変化です。

改正前後の取扱い比較

項目改正前(令和6年9月30日以前の解約)改正後(令和6年10月1日以後の解約)
再加入後の掛金の損金算入支払時に全額損金・必要経費に算入可解約日から2年を経過する日までに支払う掛金は損金・必要経費に算入不可
解約・再加入の手続そのもの可能可能(手続に変更なし)
短期での「解約→再加入」節税サイクル実質的に可能2年間は掛金が損金にならず効果が消える
掛金月額・積立上限月5,000円〜20万円・総額800万円変更なし(月5,000円〜20万円・総額800万円)
解約手当金の支給率40か月以上で100%(12か月以上で8割以上)変更なし(40か月以上で100%)

当事務所の見解・実務上の注意点

当事務所では、今回の改正を「節税封じ」と否定的に捉えるのではなく、経営セーフティ共済を本来の趣旨に沿って中長期で活用する好機と考えています。実務で押さえておきたいポイントを3点に整理します。

出口(解約年度)から逆算した加入設計

経営セーフティ共済は課税の繰延べ制度であり、解約時に課税が発生します。したがって、加入の段階から「どの年度に解約手当金を受け取るのが有利か」を見据えておくことが大切です。役員退職金の支給予定、大規模修繕や設備投資による損失の見込み、業績悪化が予想される局面など、損金が大きく出る年度に解約をぶつけられれば、解約手当金への課税を実質的に相殺できます。改正で解約・再加入の小回りが利かなくなった以上、最初の出口設計の精度が節税効果を決めます。

40か月(3年4か月)という時間軸の確保

解約手当金が掛金の100%戻るのは、納付月数が40か月以上になってからです。短期の節税回転ができなくなった今、最低でも40か月以上掛け続けることを前提に、資金繰りに無理のない掛金月額を設定することが現実的です。逆に、ここ1〜2年で解約予定があるのに節税目的だけで満額の月20万円を掛けるような設計は、見直しを検討すべきです。

別表・明細書の添付漏れに注意

掛金を損金または必要経費に算入するには、法人は確定申告書に「特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書(別表十(七))」を、個人事業主は「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」を添付する必要があります。この添付がないと、せっかく支払った掛金が損金・必要経費として認められないおそれがあります。改正対応に気を取られて基本的な添付書類を失念しないよう、申告時のチェック体制を整えておきましょう。

あわせて意識しておきたいのが、共済の積立金が決算書に表れにくい「簿外」の性質を持つことです。掛金を損金処理していると、貸借対照表に資産として計上されないため、解約手当金として戻ってくる将来の原資が見えにくくなります。金融機関への決算説明や事業承継の場面では、この簿外の積立額を別途把握し、いざというときの備えとして説明できるようにしておくと、財務の健全性を正しく伝えられます。今回の改正で短期回転による節税色が薄まった分、共済を「もしものときの資金プール」として中長期で位置づけ直すことが、これからの賢い活用法といえます。

今すぐやるべきこと

  1. ステップ1:直近2年以内の解約履歴を確認する
    令和6年10月1日以後に経営セーフティ共済を解約していないかを確認します。解約していて再加入を検討している場合は、解約日から2年を経過する日までの掛金が損金になりません。
  2. ステップ2:解約・再加入の予定を見直す
    節税目的で短期の解約・再加入を想定していたなら、改正後はメリットが2年間消える点を踏まえて計画を組み直します。
  3. ステップ3:解約手当金を受け取る出口年度を設計する
    役員退職金の支給予定や赤字見込みの年度など、大きな損金が出る年度に解約をぶつけられないかを検討します。
  4. ステップ4:掛金月額が資金繰りに見合っているか確認する
    40か月以上の継続を前提に、無理のない掛金月額(5,000円〜20万円)へ必要に応じて変更します。
  5. ステップ5:申告書への明細書(別表十(七)等)の添付を徹底する
    掛金を損金・必要経費にするための添付書類が漏れていないかを、申告前に必ずチェックします。

よくある質問

Q. 2024年10月より前に解約して再加入した場合も、掛金は損金にできなくなりますか?
A. いいえ。今回の制限は令和6年(2024年)10月1日以後に解約した契約について再加入した場合に適用されます。令和6年9月30日以前に解約していれば、改正前のルールが適用され、再加入後の掛金も従来どおり損金または必要経費に算入できます。
Q. 解約してから2年間は再加入できないということですか?
A. いいえ。再加入そのものは従来どおりいつでも可能です。制限されるのは税務上の取扱いだけで、再加入後、解約日から2年を経過する日までに支払う掛金が損金・必要経費に算入できないという内容です。
Q. 損金にならなかった掛金は、掛け捨てになってしまうのですか?
A. いいえ。損金・必要経費に算入できないだけで、掛金は積み立てられ、将来受け取る解約手当金の計算には含まれます。掛け捨てになるわけではありません。
Q. 掛金はいくらまで積み立てられますか?
A. 掛金月額は5,000円から20万円まで5,000円単位で設定でき、積立総額は800万円が上限です。この基本的な制度内容は今回の改正でも変わっていません。
Q. 個人事業主も今回の改正の対象になりますか?
A. はい。個人事業主が掛金を必要経費に算入する場合の租税特別措置法第28条も改正対象です。必要経費に算入するには確定申告書に所定の明細書を添付する必要があります。
Q. 取引先の倒産がなくても貸付けは受けられますか?
A. 取引先の倒産時に受けられる共済金貸付けとは別に、解約手当金の範囲内で借入れができる「一時貸付金」の制度があります。急な資金需要に備えられる点は、今回の改正後も変わりません。
Q. 掛金を前納すると、その分も損金にできますか?
A. 前納期間が1年以内の前納掛金であれば、支払った年度の損金または必要経費に算入できます。決算直前に年払いで掛けることで、その年度の所得を圧縮する決算対策として活用されています。

参考資料・出典

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