堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
国税庁の定員要求2026|730人増員と消費税・租税回避の重点化
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:国税庁は令和8年8月31日に令和9年度の機構・定員要求を公表し、730人の増員を要求しました。
- 2ポイント2:増員の理由として、消費税不正還付への対応と租税回避スキームへの対応が最初に挙げられています。
- 3ポイント3:消費税の還付・無申告・納税の遅れがある会社は、年内に帳簿と証憑の状態を点検してください。
CONTENTS目次
国税庁は令和8年8月31日、令和9年度の機構・定員要求を公表しました。要求した増員は730人で、その観点として挙げられているのが消費税不正還付への対応と租税回避スキームへの対応です。同じ日に公表された令和9年度の国税庁関係予算概算要求額は657,047百万円でした。定員も予算も、この時点ではあくまで要求であり確定ではありません。それでも、国税庁がどの分野に人を置きたいと考えているかは、来年度以降の調査や徴収の力の入れどころを読む手がかりになります。この記事では要求の中身を読み解き、中小企業が年内に整えておきたい帳簿と証憑の実務を整理します。
制度・改正の概要
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機構・定員要求は毎年8月末に公表される
各省庁は、翌年度の予算の概算要求にあわせて、組織(機構)と人員(定員)の要求を財務省に提出します。国税庁も毎年8月末にその内容を自らのホームページで公表しており、令和9年度分は令和8年8月31日に掲載されました。公表文は「令和9年度の国税庁の機構・定員について、税務行政に係る制度及び環境の変化を踏まえ、以下のとおり要求を行いました」と述べています。
要求が認められるかどうかは、年末の政府予算案の決定と、翌年の予算成立を経て確定します。公表された時点では、国税庁の希望を示した資料であることに注意してください。
730人の増員要求に対し、純増は178人
令和9年度の定員について、国税庁は「消費税不正還付への対応、租税回避スキームへの対応等の観点から、730人の増員要求を行いました」としています。一方で、令和9年度の国税庁の定員合理化目標数は552人とされており、その結果、令和9年度定員の純増要求数は178人になると説明されています。各省庁は毎年一定数の定員を減らすことを求められており、増員要求の数字をそのまま人員の増加と読むことはできません。
またこの増員要求には注が付されており、「飲食料品に係る消費税率の引下げに伴う時限定員の要求を含む」とされています。期間を限って必要になる人員が含まれている点も、数字を読むうえで押さえておきたいところです。
機構要求に並んだ新設ポストと配置先
令和9年度の機構要求は、1から6までの番号を付して整理されています。中小企業に関係の深い項目を抜き出すと次のとおりです。
| 要求の観点 | 要求されたポスト(配置) |
|---|---|
| 1 インボイス制度の円滑な実施及び消費税不正還付事案への厳正な対応 | 次長(福岡)/消費税専門官(いずれも国税局) |
| 2 複雑化する租税回避スキームに対する総合的な対応 | 租税回避対策企画官(仮称)・課長補佐(国税庁)/統括国税実査官(名古屋)・国際税務専門官(国税局) |
| 3 経済社会のデジタル化・グローバル化に伴う調査・徴収事案の複雑・困難化への対応 | 国際監理官(大阪)/統括国税実査官(名古屋)/情報技術専門官/特別国税査察官(名古屋)/査察情報技術専門官(いずれも国税局) |
| 4 グローバル・ミニマム課税(IIR(所得合算ルール))への対応 | 国際税務専門官(国税局) |
| 6 その他 | 特別国税管理官(福岡)・特別国税徴収官(東京)(国税局)/特別国税調査官(税務署)ほか |
注記のとおり、国税局主要ポストについては国税局名が記載されています。大阪国税局には国際監理官の要求が挙がっており、関西で海外取引を行う法人にとっては無関係ではありません。
予算概算要求額は657,047百万円
令和9年度の国税庁関係予算概算要求額は657,047百万円で、令和8年度当初予算額の639,004百万円に対し18,043百万円の増となっています。一般経費のうち、中小企業の手続に関わりの深い区分を抜き出すと次のとおりです。
| 区分 | 令和8年度当初予算額 | 令和9年度 要求・要望額 | 対前年度増△減額 |
|---|---|---|---|
| 1 納税者利便向上経費 | 2,783 | 3,620 | 837 |
| 3 庁局署一般経費 | 62,094 | 66,025 | 3,931 |
| 4 職場環境整備・安全対策経費 | 6,891 | 18,066 | 11,175 |
| 5 税制改正関係経費 | 2,287 | 2,058 | △230 |
| 7 国税不服審判所経費 | 161 | 160 | △1 |
単位は百万円です。資料には「各々の計数において百万円未満を四捨五入したため、一致しないものがある」との注が付されています。納税者利便向上経費が増える要求になっている一方で、国税不服審判所経費はほぼ横ばいです。e-Taxや納税手続の使い勝手に予算を寄せる姿勢がうかがえます。
中小企業への実務影響
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要求理由に挙がったテーマは、直近の調査実績と重なる
増員の理由として国税庁が挙げたテーマは、すでに公表されている調査事績の重点課題と一致しています。令和6事務年度の法人税等の調査事績の概要では、消費税還付申告法人、海外取引法人等及び無申告法人への対応を重点課題として位置付け、厳正な調査を実施しているとされ、それぞれの実績が示されています。
| 重点課題 | 令和6事務年度の実績 | 令和9年度の要求との関係 |
|---|---|---|
| 消費税還付申告法人 | 総額299億円の消費税を追徴し、うち不正計算に係る追徴税額は51億円 | 消費税専門官・次長(福岡) |
| 海外取引法人等 | 海外取引に係る申告漏れ所得2,096億円を把握し、海外取引等に係る源泉徴収漏れ72億円を追徴 | 国際税務専門官・国際監理官(大阪) |
| 無申告法人 | 総額355億円の法人税・消費税を追徴し、うち不正計算に係る追徴税額は228億円 | 統括国税実査官・特別国税調査官 |
調査は件数より1件当たりで重くなっている
令和6事務年度の法人税・消費税の実地調査件数は5万4千件で、対前年比は92.6%でした。申告漏れ所得金額の総額は8,198億円で同84.2%です。ところが実地調査による追徴税額の総額は3,407億円で同106.6%、調査1件当たりの追徴税額は6,342千円で同115.4%となり、追徴税額の総額は直近10年で最高値、調査1件当たりの追徴税額は直近10年で2番目の高水準とされています。
調査の数が減っても、1件当たりの追徴は増えています。定員要求が純増178人にとどまっても、選んで深く入る方向が続く限り、選ばれたときの負担は小さくなりません。
消費税の還付は、取引の実在性が見られている
調査事績の概要には、通関業者からの情報提供を端緒とした事例が載っています。輸出物が通関書類と異なる事実を把握し、税務調査により架空仕入れを把握したというもので、資料には「取引を仮装した消費税不正還付を企図」と記されています。還付そのものが問題視されているのではなく、仕入れと輸出が実際に行われたことを示せるかどうかが分かれ目です。
所得税側でも同様の姿勢が示されており、所得税及び消費税調査等の状況には、所得税の不正還付は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性が高い行為であるため、還付申告書に対しては特に厳格な審査を行うとの記述があります。
源泉所得税の調査も1件当たりが重くなっている
源泉所得税の実地調査の件数は6万4千件で対前年比93.3%、源泉所得税等の非違があった件数は2万1千件で同94.9%でした。実地調査による追徴税額の総額は404億円で同107.8%、調査1件当たりの追徴税額は633千円で同115.6%です。資料は、追徴税額の総額は直近10年で2番目の高水準、調査1件当たりの追徴税額は直近10年で最高値としています。役員や従業員への支給、士業への報酬、国外への支払など、源泉徴収の対象になる支払は会社の規模に関係なく発生します。
調査先の選び方にAIが使われている
調査事績の概要には、AIを活用した予測モデルにより調査必要度の高い法人を抽出し、予測モデルが判定した不正パターンに加え、申告書や国税組織が保有する様々な資料情報等を併せて分析・検討した後、調査官が調査実施の要否を最終的に判断していると記されています。令和9年度の機構要求に情報技術専門官や査察情報技術専門官が並んでいるのは、この流れの延長線上にあります。
徴収の体制も維持される方向にある
機構要求には特別国税徴収官(東京)が含まれています。令和7年度租税滞納状況の概要によれば、令和7年度の新規発生滞納額は9,935億円で、徴収決定済額89兆7,949億円のうち約98.9%が滞納となることなく納付されました。滞納発生割合は1.1%で、令和7年度末における滞納整理中のものの額は9,847億円です。金額の水準自体は落ち着いていますが、徴収部門に人を置く要求が続いている点は、納税が遅れがちな会社にとって見過ごせません。
当事務所の見解・実務上の注意点
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定員要求は予告であって決定ではない
この資料を読むときに最も大事なのは、要求と決定を混ぜないことです。730人という数字は要求額であり、定員合理化目標数552人を差し引いた純増要求数178人もまた要求の段階です。年末の政府予算案で削られることも、配置先が変わることもあります。来年から調査が730人分増えるといった受け止め方は正確ではありません。
一方で、要求資料は国税庁が自らの言葉で優先順位を書いた数少ない公表物です。どのポストを新設したいと考えたかは、認められたかどうかとは別に、行政の関心がどこにあるかを示しています。
中小企業に効いてくるのは消費税・無申告・徴収の三つ
要求に並ぶポストのうち、租税回避対策企画官(仮称)やグローバル・ミニマム課税への対応は、大企業や国際的なグループを主な対象とするものです。中小企業の実務に直接響くのは、消費税専門官が象徴する消費税の分野、統括国税実査官や特別国税調査官が担う無申告への対応、そして特別国税徴収官が担う徴収の分野だと考えています。
消費税については、令和9年4月からの飲食料品に係る税率引下げという大きな制度変更が控えています。税率が複数になる期間は、売上と仕入れの税率区分を誤る余地が増えます。記帳・経理代行のサポートをご利用の会社でも、どの商品がどの税率かという判断は現場でしか決められません。商品マスタの整備を、改修の前に済ませておくことをおすすめします。
悪意がないのに不正と扱われる事態を避ける
実務で最も多いのは、資料が出てこないために説明が通らない場面です。架空の仕入れを計上した覚えがなくても、請求書と入金記録と現物の受入記録が結びつかなければ、調査の場で主張を裏づけられません。特に少額の外注費や支払手数料は、契約書を作らないまま続いていることが珍しくありません。
調査事績の概要に載る不正の手口は、売上伝票を破棄することにより、破棄した分の現金売上げを除外する、売上代金を代表者の個人口座に入金させることにより、売上げを除外する、偽りの請求書を作成し、金銭の貸付けを原価(外注費)に仮装して計上するなど、いずれも書類の不備と見分けがつきにくい形をしています。堺市の税務顧問として申し上げたいのは、年に一度でよいので、金額の大きい取引から順に書類をそろえ直す時間を取っていただきたいということです。
要求資料は、翌年の自社の準備表として使える
毎年8月末に出るこの資料は、分量が少なく読みやすい割に、翌年度の行政の関心が端的に書かれています。自社に当てはまる項目がひとつでもあれば、そこだけを年内の宿題にすればよく、全部を気にする必要はありません。海外取引がなく、還付も受けておらず、申告も納税も遅れていない会社であれば、今年の要求内容から直ちに手を打つべきことは多くないと考えます。
今すぐやるべきこと
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年内にできる順に並べました。上から二つは、消費税の還付や控除を受けている会社であれば優先度が高い項目です。
- 消費税の還付・控除の根拠書類を1か所にまとめる
輸出免税なら輸出許可通知書と契約書、設備投資なら契約書・検収書・支払の記録を、申告年度ごとにそろえます。国税庁は令和6事務年度に消費税還付申告法人を重点課題と位置づけており、取引の実在性を示す資料がすぐ出せる状態にしておくことが最大の備えです。 - 帳簿と請求書等の保存を探さずに出せる状態にする
仕入税額控除は帳簿と請求書等の保存が要件です。電子取引のデータはフォルダ名と検索条件を決め、紙の請求書は月別につづります。調査の場で探し始めると、本来通る経費まで確認に時間がかかります。 - 海外への支払がある場合は源泉徴収の要否を確認する
外国法人からソフトウエア開発の役務提供を受けた際の費用の支払は、租税条約の適用によって、所得税の源泉徴収が必要となる場合があります。これは支払方法が立替払であったとしても変わりません。令和6事務年度には海外取引等に係る源泉徴収漏れ72億円が追徴されています。支払先の国と租税条約の適用関係を、支払の前に確認してください。 - 申告していない期間があれば自主的に期限後申告をする
無申告法人は重点課題として明示されています。帳簿や通帳が手元にそろっていなくても、着手は早いほうが有利です。資料が不十分でも、まず現状を税理士に開示するところから始めてください。期間が長いほど資料の再収集に時間がかかります。 - 納税が苦しい見込みなら、滞納になる前に相談する
納期限までに納付できない見込みが立った時点で税務署に相談します。換価の猶予や納税の猶予は申請期限が定められているため、督促状が届いてから動くと選べる手段が減ります。 - 飲食料品を扱う場合は令和9年4月のレジ・システム対応を前倒しする
飲食料品に係る消費税率の引下げは令和9年4月1日からの改正案として示されています。レジやシステムの改修は依頼が集中すると順番待ちになります。早めに販売管理の担当者と改修の見積りを取ってください。
決算期が近い会社は、決算作業と同時に進めると負担が分散します。証憑の整理は決算のためにも必要な作業であり、二度手間になりません。
よくある質問
- Q. 730人の増員が認められたら、税務調査の件数は増えるのですか?
- A. 増員要求がそのまま調査件数の増加につながるとは限りません。令和9年度の定員合理化目標数は552人とされており、純増要求数は178人にとどまります。また令和6事務年度の法人税・消費税の実地調査件数は5万4千件で前年より減っている一方、調査1件当たりの追徴税額は6,342千円と増えています。件数を広げるより、調査必要度の高い先に人員を寄せる方向と読むのが実態に近いと考えます。
- Q. 消費税専門官が置かれると、還付を受けている会社は必ず調査されますか?
- A. 還付申告だけを理由に調査が決まるわけではありません。ただし国税庁は令和6事務年度の重点課題として消費税還付申告法人を挙げ、総額299億円の消費税を追徴し、うち不正計算に係る追徴税額は51億円としています。輸出免税や高額な設備投資で還付となる場合は、取引の実在性を示す資料をそろえておくことが、調査の有無にかかわらず有効です。
- Q. 租税回避対策企画官は中小企業にも関係がありますか?
- A. 要求理由には「複雑化する租税回避スキームに対する総合的な対応」とあり、同時に国際税務専門官や統括国税実査官の要求も並んでいます。海外取引のない会社が直接の対象になる場面は多くありませんが、令和6事務年度は海外取引に係る申告漏れ所得2,096億円、海外取引等に係る源泉徴収漏れ72億円が把握されています。海外への支払がある会社は源泉徴収の要否を確認してください。
- Q. 無申告の期間がある場合は、今からでも申告したほうがよいですか?
- A. 早く動くほど選べる手段が多く残ります。令和6事務年度の重点課題として無申告法人への対応が挙げられ、総額355億円の法人税・消費税が追徴され、うち不正計算に係る追徴税額は228億円とされています。資料は無申告法人を「申告義務を果たさず、税負担を意図的に回避」と位置づけており、期間が延びるほど事実関係の説明に手間がかかります。申告していない期間があるなら、まず税理士にご相談ください。
- Q. 特別国税徴収官の要求は、納税が遅れている会社に影響しますか?
- A. 徴収部門の体制が維持・強化される方向であることは確かです。令和7年度の新規発生滞納額は9,935億円、滞納発生割合は1.1%、令和7年度末の滞納整理中のものの額は9,847億円でした。資金繰りが苦しいときに連絡を絶つことが最も不利に働きます。換価の猶予などの納税緩和措置は申請期限があるため、滞納が見込まれる段階で相談するのが得策です。
- Q. 飲食料品の消費税率引下げに伴う時限定員とは何ですか?
- A. 機構・定員要求の注として「飲食料品に係る消費税率の引下げに伴う時限定員の要求を含む」と記載されています。消費税率引下げ特設サイトによれば、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、飲食料品に係る消費税率が1%(国・地方合計)に引き下げられる改正案が示されています。期間限定の制度変更に対応するための定員という位置づけです。
参考資料・出典
- 国税庁「令和9年度 機構・定員要求について」(令和8年8月31日)
- 国税庁「令和9年度 国税庁関係予算概算要求額」(令和8年8月31日)
- 国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」(PDF)
- 国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(PDF)
- 国税庁「令和7年度租税滞納状況の概要」(令和8年8月・PDF)
- 国税庁・財務省「消費税率引下げ特設サイト」
- 国税庁・財務省【リーフレット】「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて」(令和8年9月・PDF)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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