堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
税法上の繰延資産2026|権利金・負担金の償却期間と20万円基準
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:建物を賃借するための権利金や公共的施設の負担金などで、支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものは繰延資産となり、支払った期に全額を損金にはできません。
- 2ポイント2:償却期間は通達8-2-3で種類ごとに定められ、一般的な権利金等は5年、同業者団体等の加入金も5年です。20万円未満かどうかは、負担金は計画ごと、権利金は契約ごとに判定します。
- 3ポイント3:決算前に当期の一時払いの支出を洗い出し、償却限度額を月数で計算して別表16(6)を添付しましょう。解約時は未償却残額をその期の損金にします。
CONTENTS目次
事務所や店舗を借りるときの権利金、商店街のアーケードの負担金、同業者団体への加入金。いずれも一度に支払う費用ですが、法人税では支払った事業年度に全額を損金にできず、繰延資産として数年に分けて償却しなければならない場合があります。決算期が近づくこの時期は、期中に支払った費用の処理を確定させる時期でもあります。本記事では、国税庁のタックスアンサーと法人税基本通達をもとに、税法上の繰延資産の範囲、償却期間、20万円未満の判定と、中小企業が誤りやすい点を整理します。
税法上の繰延資産の概要:支出の効果が1年以上に及ぶ費用
国税庁のNo.5460によれば、法人が建物を賃借するために支払った権利金、立退料などの費用で支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものは、繰延資産となります。No.5462も同様に、法人が便益を受ける公共的施設の設置または改良のために支出する費用で支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものは、繰延資産となるとしています。つまり、支払いは一度でも、その効果が翌期以後にも続く費用は、効果の及ぶ期間に応じて費用化するという考え方です。会計上の前払費用や減価償却資産とは別の区分であるため、勘定科目の段階で分けておくと決算の作業が楽になります。
どのような費用が繰延資産になるか
法人税基本通達の第8章第1節は、法人税法施行令(通達の省略用語例では令)の第14条第1項第6号に掲げる繰延資産の具体例を定めています。中小企業に関係の深いものを整理すると、次のとおりです。
| 区分 | 主な例 | 通達 |
|---|---|---|
| 公共的施設等の負担金 | 自己の必要に基づいて行う道路等の設置費用、国や地方公共団体が行う施設の設置費用の一部の負担金 | 8-1-3 |
| 共同的施設の負担金 | 所属する協会、組合、商店街等の行う共同的施設の建設又は改良に要する費用の負担金 | 8-1-4 |
| 資産を賃借するための権利金等 | 建物を賃借するために支出する権利金、立退料その他の費用、電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する引取運賃、関税、据付費その他の費用 | 8-1-5 |
| 役務の提供を受けるための権利金等 | ノウハウの設定契約に際して支出する一時金又は頭金 | 8-1-6 |
| 広告宣伝用資産を贈与した費用 | 特約店等に贈与した広告宣伝用の看板、ネオンサイン、陳列棚、自動車など | 8-1-8 |
| その他自己が便益を受けるための費用 | 出版権の設定の対価、同業者団体等の加入金、職業運動選手等の契約金等 | 8-1-10~8-1-12 |
このほか、令第14条第1項第1号は創立費を定めています。通達8-1-1は、法人がその設立のために通常必要と認められる費用を支出した場合、その費用を法人の負担とすべきことが定款等で定められていないときであっても、創立費に該当するとしています。
繰延資産にならないもの
同じ賃借に関する支出でも、すべてが繰延資産になるわけではありません。No.5460は、建物の賃借に際して不動産業者などに支払った仲介手数料については、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することができるとしています。また通達8-1-13により、国、地方公共団体、商店街等の行う街路の簡易舗装、街灯、がんぎ等の簡易な施設で主として一般公衆の便益に供されるもののために充てられる負担金は、繰延資産としないで支出する日の属する事業年度の損金の額に算入することができます。同業者団体の加入金でも、構成員としての地位を他に譲渡することができることとなっている場合の加入金や出資の性質を有する加入金は、その地位を他に譲渡し、又は脱退するまで損金の額に算入しないこととされています。
中小企業への実務影響:償却期間と償却限度額の計算
繰延資産になると、支払った金額を償却期間にわたって均等に費用化します。償却期間は費用の種類ごとに通達8-2-3の表で定められています。中小企業で登場しやすいものをまとめると次のとおりです。
| 種類 | 償却期間 |
|---|---|
| 建物を賃借するための権利金等(建物の新築に際し、建設費の大部分に相当し、存続期間中賃借できる状況にあるもの) | その建物の耐用年数の7/10に相当する年数 |
| 建物を賃借するための権利金等(明渡しに際して借家権として転売できるもの) | その建物の賃借後の見積残存耐用年数の7/10に相当する年数 |
| 上記以外の権利金等 | 5年(契約による賃借期間が5年未満で、更新時に再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間) |
| 公共的施設の負担金(負担した者に専ら使用されるもの) | その施設又は工作物の耐用年数の7/10に相当する年数 |
| 公共的施設の負担金(上記以外) | その施設又は工作物の耐用年数の4/10に相当する年数 |
| 商店街等の共同のアーケード、日よけ、アーチ、すずらん灯等 | 5年(その施設の耐用年数が5年未満である場合には、その耐用年数) |
| 同業者団体等の加入金 | 5年 |
| 広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用 | その資産の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が5年を超えるときは、5年) |
| ノウハウの頭金等 | 5年(設定契約の有効期間が5年未満で、更新時に再び支払を要することが明らかであるときは、その有効期間の年数) |
償却期間に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。事務所や店舗を借りる際の権利金等のうち、新築の建物の建設費の大部分に相当するものでも、借家権として転売できるものでもないものは、上記以外の権利金等として5年で償却することになります。
負担金の種類で償却期間が変わる例
負担金は、何に充てられるかによって償却期間が大きく変わります。通達8-2-5により、地方公共団体が公共下水道を設置する場合に、その設置により著しく利益を受ける土地所有者が負担する受益者負担金は、償却期間を6年とします。通達8-2-4は、協会等の本来の用に供される会館等の建設又は改良のために負担する負担金などについて、8-2-3に定める償却期間が10年を超える場合には、当分の間、その償却期間を10年とするとしています。
また、No.5463によれば、法人が固定資産として使用する土地、建物等の造成や建築等の許可を受けるために地方公共団体に対して支出した開発負担金等のうち、上下水道や工業用水道の負担金等の額は、無形減価償却資産の水道施設利用権または工業用水道施設利用権の取得価額となり、その償却期間は15年です。主として団地の周辺住民などとの関係を調整するために整備される施設の負担金等の額は、繰延資産となり、その償却期間は8年とされています。負担金の通知書や協定書で、資金の使途を確認することが出発点になります。
償却限度額の計算方法
No.5460によれば、償却限度額は、繰延資産の額を償却期間の月数で割ったものに、その事業年度の月数を掛けて計算した金額となります。ただし、事業年度の中途での支出の場合は、その事業年度の月数は支出の日から事業年度末までの月数となります。この場合、月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数はこれを1か月とします。
国税庁の質疑応答では、商店街で小売店を営む法人がアーケード建設のために負担金100万円を支出した例について、共同的施設の設置のために支出する費用に該当し、繰延資産となるため、一時の損金とすることはできないと回答しています。この場合、支出した金額は5年間で均等償却することとなります。
申告書への明細書の添付
繰延資産の償却費を損金算入する場合には、確定申告書に繰延資産の償却額の計算に関する明細書(別表16(6))を添付する必要があります。国税庁の別表十六(六)の記載の仕方によれば、この明細書のⅠは、法人が繰延資産について令第64条第1項第2号の規定により償却限度額等の計算を行う場合に記載し、Ⅱは、令第64条第1項第1号の規定により償却限度額等の計算を行う場合に記載します。どちらの規定で償却限度額を計算するかによって記載する箇所が分かれるため、繰延資産の種類ごとに根拠規定を確認してから記載することが大切です。
当事務所の見解・実務上の注意点:誤りやすい5つの場面
繰延資産は支出の頻度が低いため、経理担当者が処理に慣れておらず、支払った期に全額を経費にしてしまう誤りが起きやすい項目です。当事務所が特に注意している場面は次の5つです。
1. 20万円未満かどうかの判定単位
令第134条《繰延資産となる費用のうち少額のものの損金算入》は、支出する金額が20万円未満である繰延資産となる費用の扱いを定めています。通達8-3-8は、その判定の単位を、公共的施設の負担金等は一の設置計画又は改良計画につき支出する金額(2回以上に分割して支出する場合には、その支出する時において見積られる支出金額の合計額)、資産を賃借するための権利金等や役務の提供を受けるための権利金等は契約ごとに支出する金額、広告宣伝用資産の贈与の費用はその支出の対象となる資産の1個又は1組ごとに支出する金額により判定するとしています。分割で請求される負担金を1回分の金額だけで判定しないよう注意してください。
2. 分割払の負担金は未払計上で一括償却できない
通達8-3-3は、繰延資産となるべき費用を分割して支払う場合、たとえその総額が確定しているときであっても、その総額を未払金に計上して償却することはできないとしています。ただし、分割して支払う期間が短期間(おおむね3年以内)である場合には、この限りでないとされています。一方、通達8-3-4は、公共的施設又は共同的施設の負担金が、償却期間に相当する期間以上の期間にわたり分割して徴収され、おおむね均等額で、施設の工事の着工後に徴収が始まるという要件をいずれも満たす場合には、支出した金額をその事業年度の損金の額に算入できるとしています。
3. 償却の開始時期
通達8-3-5により、固定資産を利用するための繰延資産で、その固定資産の建設等に着手されていないときは、その固定資産の建設等に着手した時から償却します。支払った時点ではなく、着工の時点から償却が始まる点に注意が必要です。
4. 解約・移転したときの未償却残額
通達8-3-6は、繰延資産とされた費用の支出の対象となった固定資産又は契約について滅失又は解約等があった場合には、その事業年度において未償却残額を損金の額に算入するとしています。事務所を移転して賃貸借契約を解約したときは、残っている権利金の未償却残額の処理を忘れないようにしましょう。
5. 償却費以外の科目で経理した場合
通達8-3-2により、繰延資産となるべき費用の全部又は一部を償却費以外の科目をもって損金経理をしている場合でも、その金額は償却費として損金経理をした金額に含まれます。支払手数料や諸会費で全額を経費にしていた場合も、償却費として扱われたうえで償却限度額の計算の対象になるため、限度額との関係を確認して申告調整の要否を判断します。こうした判定や申告調整に不安がある場合は、堺市の税務顧問として当事務所がご相談をお受けしています。
今すぐやるべきこと:決算前の繰延資産チェック5ステップ
決算整理の前に、次の順番で当期の支出を確認してください。前期以前から繰り越している繰延資産も、あわせて点検の対象にします。
- ステップ1:当期の一時払いの支出を洗い出す
総勘定元帳の支払手数料、諸会費、賃借料、寄附金などの科目から、権利金、負担金、加入金、契約の一時金に当たる支出を抜き出します。請求書や契約書もあわせて確認し、一度に支払った金額がどの契約・計画に対応するものかを特定します。 - ステップ2:繰延資産に当たるかを判定する
支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶかを確認します。仲介手数料や簡易な施設の負担金など、支出した事業年度の損金にできるものは区別します。負担金は資金の使途によって、土地の取得価額や無形減価償却資産になるものもあるため、通知書の内容を確認します。 - ステップ3:20万円未満かどうかを正しい単位で判定する
負担金は一の設置計画又は改良計画ごと、権利金は契約ごとに支出する金額で判定します。分割で支払うものは、支出する時に見積られる合計額で判定します。 - ステップ4:償却期間と当期の償却限度額を計算する
通達8-2-3の表から償却期間を決め、事業年度の中途で支出したものは支出の日から事業年度末までの月数で償却限度額を計算します。1か月に満たない端数は1か月とします。固定資産を利用するための繰延資産は、その固定資産の建設等に着手した時から償却します。 - ステップ5:明細書と管理台帳を整える
確定申告書に別表16(6)を添付し、繰延資産ごとに支出日、金額、償却期間、未償却残額を記録した台帳を作成します。解約や移転があった場合に未償却残額を処理できるようにしておきます。
明細書の添付を忘れない
繰延資産の償却費を損金算入する場合には、確定申告書に別表16(6)を添付する必要があります。償却の計算が正しくても明細書の添付がなければ、申告の内容を説明できません。前期から繰り越している繰延資産がある場合も、毎期の申告で記載を続けてください。
繰延資産の償却費を損金算入する場合には、確定申告書に別表16(6)を添付する必要があります。償却の計算が正しくても明細書の添付がなければ、申告の内容を説明できません。前期から繰り越している繰延資産がある場合も、毎期の申告で記載を続けてください。
よくある質問
- Q. 事務所を借りるときに払った権利金は、繰延資産になりますか?
- A. 建物を賃借するために支払った権利金、立退料などの費用で、支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものは、繰延資産になります。一般的な賃貸借で支払うものは、新築建物の建設費の大部分を負担するものなどに当たらなければ、償却期間は5年です。ただし、契約による賃借期間が5年未満で、更新時に再び支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間で償却します。
- Q. 不動産会社に払った仲介手数料も、5年で償却しなければなりませんか?
- A. いいえ。国税庁のNo.5460によれば、建物の賃借に際して不動産業者などに支払った仲介手数料については、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することができます。同じ契約に関する支払いでも、権利金と仲介手数料は扱いが異なるため、請求書の内訳を確認して科目を分けて記帳しましょう。
- Q. 商店街のアーケードの負担金を支払いました。一度に経費にできますか?
- A. 国税庁の質疑応答では、アーケード建設のための負担金100万円について、共同的施設の設置のために支出する費用に該当し、繰延資産となるため、一時の損金とすることはできないとし、5年間で均等償却するとしています。一方、街灯や簡易舗装など主として一般公衆の便益に供される簡易な施設の負担金は、支出した事業年度の損金にできます。
- Q. 20万円未満かどうかは、毎回の支払額で判定するのですか?
- A. 支払いの回数ではなく、通達8-3-8の単位で判定します。公共的施設の負担金等は一の設置計画又は改良計画につき支出する金額で、2回以上に分割して支出する場合には、その支出する時において見積られる支出金額の合計額で判定します。権利金等は契約ごとに支出する金額で判定するため、分割の請求額だけを見て判断しないでください。
- Q. 期の途中で権利金を払った場合、初年度はいくら償却できますか?
- A. 繰延資産の額を償却期間の月数で割り、支出の日から事業年度末までの月数を掛けた金額が償却限度額です。月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数は1か月とします。たとえば期末の月に支払った場合でも、その月は1か月として計算できます。支払った日と事業年度末の日を契約書や領収書で確認しておきましょう。
- Q. 事務所を移転して契約を解約したら、残りの権利金はどうなりますか?
- A. 通達8-3-6により、繰延資産とされた費用の支出の対象となった契約について解約等があった場合には、その解約等があった日の属する事業年度において未償却残額を損金の額に算入します。移転の時期が決まったら、繰延資産の管理台帳で未償却残額を確認し、その期の決算で処理しましょう。
- Q. 同業者団体の入会金は、すべて繰延資産になりますか?
- A. 社交団体を除く同業者団体等の加入金は繰延資産となり、償却期間は5年です。ただし、構成員としての地位を他に譲渡することができる場合の加入金や出資の性質を有する加入金は、その地位を他に譲渡し、又は脱退するまで損金の額に算入しないこととされています。入会時の規約で返還や譲渡の可否を確認しておきましょう。
参考資料・出典
- 国税庁 No.5460 建物を賃借するための権利金等
- 国税庁 No.5462 公共的施設などの負担金
- 国税庁 No.5463 宅地開発等に際して支出する開発負担金等
- 国税庁 アーケード建設のために負担金を支出した場合(No.5462 QA)
- 国税庁 法人税基本通達 第8章第1節 繰延資産の意義及び範囲等
- 国税庁 法人税基本通達 第8章第2節 繰延資産の償却期間
- 国税庁 法人税基本通達 第8章第3節 償却費の計算
- 国税庁 法人税基本通達の制定について(省略用語例)
- 国税庁 別表十六(六)の記載の仕方(令和8年4月1日以後終了事業年度等分・PDF)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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