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新卒の3年以内離職率2026|大卒31.2%と小規模事業所の定着策

新卒の3年以内離職率2026と小規模事業所の定着策を示すタイトル画像
SUMMARYこの記事の要点3点
  • 1ポイント1:厚生労働省は令和8年10月23日、令和5年3月卒業者の離職状況を公表しました。就職後3年以内の離職率は新規大学卒就職者が31.2%、新規高卒就職者が36.9%で、いずれも前年度より低下しました。
  • 2ポイント2:事業所規模が小さいほど離職率は高く、5人未満では大学卒58.2%、5~29人では大学卒50.6%です。産業別では宿泊業,飲食サービス業が高校卒・大学卒とも最も高くなっています。
  • 3ポイント3:離職は1年目に集中しています。自社の新卒定着率を規模・業種の数値と比べ、最初の1年間の育成計画を整えたうえで、ユースエール認定などの制度を活用しましょう。

厚生労働省は令和8年10月23日、令和5年3月に卒業した新規学卒就職者の離職状況を取りまとめて公表しました。就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が36.9%、新規大学卒就職者が31.2%です。数字そのものは毎年報道されますが、中小企業の経営者にとって本当に参考になるのは、事業所規模別と産業別の内訳、そして離職が入社1年目に集中しているという点です。本記事では、公表資料の数値と集計の考え方を確認したうえで、採用と定着の実務に落とし込みます。

新規学卒就職者の離職状況の概要:3年以内離職率は大卒31.2%

今回の公表は、令和5年3月に卒業して就職した人が、就職後3年以内にどれだけ離職したかをまとめたものです。厚生労働省の報道発表によれば、就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が36.9%(前年度と比較して1.0ポイント低下)、新規大学卒就職者が31.2%(同2.6ポイント低下)となりました。

学歴別の3年以内離職率

学歴3年以内離職率前年差
中学54.5%+0.4P
高校36.9%▲1.0P
短大等43.1%▲1.4P
大学31.2%▲2.6P

高校・短大等・大学はいずれも前年より低下し、中学のみ上昇しました。ただし低下したとはいえ、大学卒でも3割を超える水準が続いている点は変わりません。

離職率はどのように集計されているか

この数値はアンケート調査ではなく、雇用保険の手続のデータから算出されています。資料出所によれば、事業所からハローワークに対して、雇用保険の加入届が提出された新規被保険者資格取得者の生年月日、資格取得加入日等、資格取得理由から学歴ごとに新規学卒者と推定される就職者数を算出し、更にその離職日から離職者数・離職率を算出しています。

大学卒の場合、令和5年3月1日から令和5年6月30日までに新規学卒として雇用保険に加入した者を就職者とみなし、そのうち令和5年3月1日から令和8年3月31日までに離職した者を離職者としています。注意したいのは、届けを提出した事業所を上記の期間中に離職した場合、離職理由や離職後の就業の状態に関わらず離職者として算出している点です。自己都合退職だけでなく、契約期間の満了や会社都合による離職も含まれます。また、事業所規模別の集計でいう事業所は、ハローワークに対して雇用保険適用事業所設置届を提出している事業所を指します。会社全体の従業員数ではなく、支店・営業所単位で規模が判定される点も、数値を読むときの前提になります。

離職は1年目に集中している

新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況の表で令和5年3月卒をみると、大学卒は就職者数456,908人のうち離職者数は142,415人で、離職率は1年目11.0%、2年目10.9%、3年目9.3%でした。高校卒は就職者数130,090人のうち離職者数48,045人で、1年目17.4%、2年目11.0%、3年目8.5%です。短大等卒は就職者数141,735人のうち離職者数61,079人で、1年目18.4%、2年目13.2%、3年目11.5%でした。いずれの学歴でも1年目の離職率が最も高く、特に高校卒では1年目の離職率が2年目・3年目を大きく上回ります。入社直後の定着支援がどれだけ重要かがわかります。なお、各数値は卒業年から3年後の6月時点で把握したもので、合計の離職率は四捨五入の関係で各年目の合計と一致しないことがあります。また、令和6年及び令和7年3月卒の数値は、令和8年6月時点で把握した数値であり、3年目までの離職状況が確定しているのは令和5年3月卒までです。

中小企業への実務影響:事業所規模別・産業別の離職率

中小企業にとって最も重要なのは、事業所の規模が小さいほど離職率が高いという傾向です。報道発表に掲載された事業所規模別の就職後3年以内離職率は次のとおりです。

事業所規模高校大学
5人未満61.3%(▲1.9P)58.2%(+0.7P)
5~29人53.3%(▲1.3P)50.6%(▲1.4P)
30~99人45.5%(+0.3P)39.7%(▲2.2P)
100~499人36.4%(▲0.3P)31.7%(▲2.2P)
500~999人29.4%(▲0.5P)29.0%(▲2.5P)
1,000人以上24.4%(▲1.9P)24.2%(▲2.8P)

5人未満の事業所では、大学卒の離職率が前年より上昇しています。全体の離職率が下がっても、小規模事業所では改善が進んでいない層があることを示しています。30人未満の区分は、高校卒が5人未満61.3%・5~29人53.3%、大学卒が5人未満58.2%・5~29人50.6%で、1,000人以上の事業所(高校卒24.4%・大学卒24.2%)との差は歴然としています。

規模による差が生じる理由までは、公表資料には示されていません。ただ、少人数の職場では指導役を担える先輩社員や配置転換の選択肢が限られることもあり、入社後に悩みを抱えた若手の受け皿が少なくなる場合があります。数値は、規模が小さい事業所ほど、意識的に定着の仕組みをつくる必要があることを示していると当事務所は考えます。

産業別では宿泊業,飲食サービス業が最も高い

産業別の就職後3年以内離職率のうち、離職率の高い上位5産業(その他を除く)は次のとおりです。

順位高校大学
1宿泊業,飲食サービス業 61.6%宿泊業,飲食サービス業 49.9%
2生活関連サービス業,娯楽業 61.1%生活関連サービス業,娯楽業 49.8%
3医療,福祉 49.4%教育,学習支援業 42.3%
4教育,学習支援業 49.3%医療,福祉 39.1%
5小売業 48.5%小売業 38.1%

3位と4位は、高校卒では医療,福祉、教育,学習支援業の順、大学卒では教育,学習支援業、医療,福祉の順で、学歴によって入れ替わっています。宿泊業,飲食サービス業と生活関連サービス業,娯楽業は、高校卒・大学卒のいずれでも上位2位を占めています。小規模な事業所でこれらの業種を営む事業者は、規模と業種の両方で離職率の高い区分に当たるため、全体の平均値ではなく、自社が該当する区分の数値を基準に考える必要があります。

採用コストと人員計画への影響

新卒を1人採用するには、求人の準備、説明会や面接への対応、入社後の研修、配属先の先輩社員の指導時間など、目に見えにくいコストがかかります。採用した社員が1年目で離職すると、これらの投資を回収する前に人員計画をやり直すことになります。特に少人数の事業所では、1人の離職が現場の業務量に直接響き、残った社員の負担が増えて次の離職を招くこともあります。

国の定着支援と求人の窓口

厚生労働省は報道発表のなかで、新卒応援ハローワークなどで、引き続き、新規学卒就職者に対する職場定着支援や離職者等に対するきめ細かな就職支援を行っていくとしています。また、ユースエール認定を受けた企業は、各都道府県労働局・ハローワークが開催する就職面接会などについて積極的に案内を受けられ、若者雇用促進総合サイトにも認定企業として企業情報が掲載されます。採用の段階から公的な窓口を活用することも、小規模な事業所が若手と出会う機会を増やす方法の一つです。

一方で、離職率が高い業種や規模であっても、定着している事業所は確かに存在します。平均値は、自社の取組の成果を測る比較対象として使うのが適切です。自社の直近数年の新卒採用者のうち何人が在籍しているかを、学歴別・入社年別に把握することから始めましょう。

当事務所の見解・実務上の注意点:数値の読み方と定着支援の制度

当事務所が中小企業の経営者からよく受ける相談に、若手がすぐ辞めてしまうので新卒採用をやめるべきか、というものがあります。今回の数値は、その判断の材料になりますが、読み方には三つの注意点があります。数値の意味を取り違えると、採用をやめるという結論に早まって飛びつくことになりかねません。

注意点1:事業所単位の集計であること

前述のとおり、事業所規模は雇用保険適用事業所設置届を提出している事業所単位です。複数の店舗や営業所ごとに雇用保険の適用事業所としている会社では、会社全体の規模より小さい区分に集計されている可能性があります。自社と比較するときは、新卒を配属した事業所の規模でみることが大切です。

注意点2:離職理由を問わない数値であること

集計は離職理由や離職後の就業の状態に関わらず離職者として算出しています。つまり、この離職率は若手が自分の意思で辞めた割合を直接示すものではありません。自社の数値と比べるときは同じ基準で、理由を問わずに離職者を数えます。そのうえで、自社の離職者については退職理由と退職した時期を記録しておくと、育成の問題なのか、労働条件の問題なのか、配属のミスマッチなのかを切り分けやすくなり、改善策を考えやすくなります。

注意点3:定着の実績は制度の認定要件にもなる

厚生労働省のユースエール認定制度は、若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度で、対象は中小企業(常時雇用する労働者が300人以下の事業主)です。認定要件の一つに、直近3事業年度の新卒者などの正社員として就職した人の離職率が20%以下であることがあり、人材育成方針と教育訓練計画の策定、所定外労働時間や有給休暇の取得率に関する要件も定められています。認定を受けると、認定マークを商品や広告などに使用でき、日本政策金融公庫の働き方改革推進支援資金を利用する際に基準利率から-0.65%での融資を受けることができます。定着の取組を数値で示せれば、採用広報と資金調達の両面で使える実績になります。

また、研修を外部に委託する費用は、法人税の賃上げ促進税制でいう教育訓練費に当たる場合があります。ただし国税庁のNo.5927-2によれば、教育訓練費の増加による上乗せ措置は令和8年4月1日前開始事業年度である場合に適用できるもので、それ以後に開始する事業年度では使えません。研修の計画は税制の有無ではなく、定着の効果で判断するのが基本です。なお、税額控除の適用を受けるには、確定申告書等に控除を受ける金額の計算に関する明細を記載した書類の添付が必要です。給与や研修費の支出計画を決算対策とあわせて検討したい場合は、堺市の税務顧問として当事務所がご相談をお受けしています。

今すぐやるべきこと:新卒の定着を高める5ステップ

来春の新卒受け入れまでに、次の順番で準備を進めてください。離職が1年目に集中していることを踏まえ、入社前から最初の1年間の設計に重点を置きます。

  1. ステップ1:自社の新卒定着率を把握する
    直近3年間に新卒で採用した社員について、学歴別・入社年別に在籍しているかどうかを一覧にします。退職者がいる場合は、退職した時期と理由をあわせて記録し、1年目の離職が多いかどうかを確認します。中途採用者と分けて集計すると、新卒特有の課題が見えやすくなります。
  2. ステップ2:規模と業種の平均値と比べる
    新卒を配属した事業所の規模と自社の業種について、厚生労働省の公表した離職率と比べます。全体の31.2%ではなく、該当する区分の数値を比較の基準に使います。高校卒と大学卒では数値が異なるため、学歴ごとに比べます。
  3. ステップ3:最初の1年間の育成計画をつくる
    配属後に誰が指導するか、どの時期に何を習得させるかを、人材育成方針と教育訓練計画として文書にまとめます。面談の時期をあらかじめ決めておくと、入社直後の悩みを早めに把握でき、指導役の社員の負担も見えやすくなります。
  4. ステップ4:労働時間と休暇の状況を点検する
    前事業年度の正社員の所定外労働時間と有給休暇の取得状況を確認します。ユースエール認定の要件にもなっている項目で、若手の定着に直結します。特定の部署や社員に残業が偏っていないかもあわせて確認します。
  5. ステップ5:使える制度と求人の見せ方を確認する
    ユースエール認定の要件を満たせるかを確認し、満たせる場合は管轄の都道府県労働局への申請を検討します。求人票には研修内容や残業時間などの職場情報を具体的に記載し、入社後の働き方を応募者が想像できるようにします。
認定後も毎年の確認が必要
ユースエール認定を受けた事業主は、認定後も毎年、認定基準の適合確認を受ける必要があります。離職率などの要件は一度満たせば終わりではないため、定着状況の記録を毎年更新する体制をつくっておきましょう。

よくある質問

Q. 新卒の3年以内離職率は、どのように計算されているのですか?
A. 雇用保険の加入届のデータから算出されています。大学卒の場合、令和5年3月1日から令和5年6月30日までに新規学卒として雇用保険に加入した者を就職者とみなし、そのうち令和8年3月31日までに離職した者の割合を離職率としています。企業へのアンケートではないため、雇用保険の加入届が提出された新規学卒者と推定される就職者全体を対象にした数値です。
Q. 会社都合で辞めた人や、契約満了の人も離職者に含まれますか?
A. 含まれます。届けを提出した事業所を期間中に離職した場合、離職理由や離職後の就業の状態に関わらず離職者として算出しています。自己都合退職の割合を示す数値ではないため、自社と比べるときも、退職理由を問わずに離職者を数えると同じ基準で比較できます。
Q. 従業員10人ほどの会社は、どの数値と比べればよいですか?
A. 新卒を配属した事業所が5~29人の区分に当たる場合は、高校卒53.3%、大学卒50.6%が比較の目安になります。事業所規模は会社全体ではなく、雇用保険適用事業所設置届を提出している事業所ごとに判定されている点に注意してください。あわせて自社の業種の数値も確認すると、より実態に近い比較ができます。
Q. 新卒が辞めるのは、入社何年目が多いのですか?
A. 令和5年3月卒では、大学卒の離職率が1年目11.0%、2年目10.9%、3年目9.3%、高校卒が1年目17.4%、2年目11.0%、3年目8.5%でした。特に高校卒では1年目の離職率が高くなっています。入社直後の指導体制や面談の仕組みを整えることが、定着率を高めるうえで重要になります。
Q. ユースエール認定を受けるには、どんな要件がありますか?
A. 対象は常時雇用する労働者が300人以下の中小企業です。直近3事業年度の新卒者などの正社員として就職した人の離職率が20%以下であること、人材育成方針と教育訓練計画を策定していること、所定外労働時間や有給休暇の取得率に関する要件などをすべて満たす必要があります。職場情報の公表も求められます。
Q. ユースエール認定を受けると、融資で有利になるのですか?
A. 日本政策金融公庫(中小企業事業)の働き方改革推進支援資金を利用する際、基準利率から-0.65%での融資を受けることができます。このほか、認定マークの使用、認定企業限定の就職面接会への参加、公共調達における加点評価などのメリットがあります。融資の利用条件などの詳細は、日本政策金融公庫のホームページで確認してください。
Q. 新入社員の研修費は、賃上げ促進税制の上乗せに使えますか?
A. 事業年度によって異なります。国税庁のNo.5927-2によれば、教育訓練費が増加した場合の上乗せ措置は、令和8年4月1日前開始事業年度である場合に適用できます。それ以後に開始する事業年度では、教育訓練費による上乗せは使えません。自社の事業年度の開始日を確認したうえで判断してください。

参考資料・出典

本記事は道濟会計事務所が監修しました。




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