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労働保険の年度更新2026|申告期間6月1日〜7月10日と雇用保険料率
この記事の要点3点
- ポイント1:令和8年度(2026年度)の労働保険の年度更新は、2026年6月1日(月)から7月10日(金)までに申告・納付します。前年度の確定保険料の精算と、新年度の概算保険料の申告・納付を同時に行う手続きです。
- ポイント2:影響を受けるのは労働者を1人でも雇用するすべての事業主。今年度から、電子申請が義務づけられた大法人(資本金等1億円超など)には紙の申告書が送付されなくなります。
- ポイント3:令和8年度の雇用保険料率は一般の事業で1,000分の13.5(1.35%)に引下げ。賃金集計を始め、6月の到着書類を確認して期限内に申告・納付しましょう。
毎年6月になると、労働者を雇うすべての事業主に「労働保険の年度更新」の時期が訪れます。令和8年度(2026年度)の申告・納付期間は2026年6月1日から7月10日まで。前年度に支払った賃金をもとに労災保険料と雇用保険料を精算し、同時に新年度分の概算保険料を申告・納付する、年に一度の重要な手続きです。今年度は雇用保険料率の引下げに加え、電子申請が義務づけられた大法人への紙の申告書の送付が廃止されるなど、見落とすと納付額や手続き方法を誤りかねない変更点があります。本記事では、中小企業の経営者・労務担当者が期限内に正しく申告・納付するためのポイントを、公的機関の情報にもとづいて実務目線で整理します。
労働保険の年度更新2026の制度概要
労働保険とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険を総称した呼び名です。労働者を1人でも雇用する事業主は、原則としてこの労働保険に加入し、毎年「年度更新」によって保険料を申告・納付する義務があります。
年度更新とは何をする手続きか
年度更新は、ひとつの手続きのなかで次の2つを同時に行うのが特徴です。第一に、前年度(令和7年4月1日から令和8年3月31日まで)に実際に労働者へ支払った賃金総額をもとに、前年度の「確定保険料」を計算し、すでに納めていた概算保険料との差額を精算します。第二に、新年度(令和8年4月1日から令和9年3月31日まで)の賃金見込みをもとに「概算保険料」を計算し、申告・納付します。つまり「前年度の精算」と「新年度の前払い」を一枚の申告書で完結させる仕組みです。
労働保険料は、その年度に支払った(支払う見込みの)賃金総額に、保険料率を掛けて算出します。労災保険料は全額を事業主が負担し、雇用保険料は事業主と労働者の双方が負担します。賃金総額には、基本給のほか通勤手当や賞与など、原則として労働の対償として支払うものが幅広く含まれます。
令和8年度の申告・納付期間と納付方法
令和8年度の年度更新の申告・納付期間は、2026年6月1日(月)から7月10日(金)までです。この期間内に、申告書を所轄の労働基準監督署・都道府県労働局、または金融機関へ提出し、保険料を納付します。電子申請(e-Gov)や口座振替も利用できます。
概算保険料の額が一定額以上などの要件を満たす場合は、保険料を3期に分けて納める「延納(分割納付)」が可能です。令和8年度の各期の納期限は、第1期が2026年7月10日、第2期が2026年11月2日、第3期が2027年2月1日です(本来の納期限が土日にあたるため、翌開庁日にずれています)。一括で納める場合の期限は7月10日です。
ポイント:石綿健康被害救済のための一般拠出金
年度更新では、労働保険料とあわせて「一般拠出金」も申告・納付します。これは石綿(アスベスト)健康被害者の救済にあてられるもので、前年度の確定賃金総額に1,000分の0.02を掛けて算出し、全額を事業主が負担します。概算・精算の対象ではなく、確定額を一度に納める点が保険料と異なります。
年度更新では、労働保険料とあわせて「一般拠出金」も申告・納付します。これは石綿(アスベスト)健康被害者の救済にあてられるもので、前年度の確定賃金総額に1,000分の0.02を掛けて算出し、全額を事業主が負担します。概算・精算の対象ではなく、確定額を一度に納める点が保険料と異なります。
今年度(令和8年度)の主な変更点
令和8年度の年度更新では、手続き面でも見逃せない変更があります。電子申請が義務づけられている事業場(資本金・出資金などの額が1億円を超える法人、相互会社、投資法人、特定目的会社など)については、今年度の年度更新から、例年送られていた紙の申告書が送付されなくなりました。代わりに「電子申請情報通知書」が茶封筒で送付され、申告は電子申請で行います。該当する法人は、紙の申告書が届かないことを「未着」と勘違いしないよう注意が必要です。
また、問い合わせ窓口として年度更新コールセンター(電話0120-963-339)が、令和8年5月28日(木)から7月17日(金)まで、9時から17時(土日祝日を除く)の受付で開設されています。手続きで不明な点があれば活用できます。なお、これまでの労働保険相談チャットは2026年3月31日で終了し、4月1日からは労働基準監督署のチャットボットに統合されています。
中小企業への実務影響と雇用保険料率の改定
年度更新は事務手続きにとどまらず、その年の納付額と資金繰りに直結します。とくに今年度は雇用保険料率が改定されているため、概算保険料の計算で前年度の率をそのまま使うと誤った金額になりかねません。
令和8年度の雇用保険料率(一般の事業は1.35%へ引下げ)
厚生労働省が公表した令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の雇用保険料率は、一般の事業で1,000分の13.5(1.35%)です。前年度(令和7年度)の1.45%から0.1%引き下げられました。これは失業等給付に係る部分の料率が引き下げられたことによるもので、育児休業給付に係る部分は据え置かれています。新しい料率は、令和8年4月1日以降に支払われる賃金から適用されます。
| 事業の区分 | 労働者負担 | 事業主負担 | 合計(雇用保険料率) |
|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 5/1,000(0.5%) | 8.5/1,000(0.85%) | 13.5/1,000(1.35%) |
| 農林水産・清酒製造の事業 | 6/1,000(0.6%) | 9.5/1,000(0.95%) | 15.5/1,000(1.55%) |
| 建設の事業 | 6/1,000(0.6%) | 10.5/1,000(1.05%) | 16.5/1,000(1.65%) |
ここでの「労働者負担」は給与から天引きする雇用保険料の率、「事業主負担」は会社が負担する率です。雇用保険料率は、失業等給付に係る部分(労使折半)、育児休業給付に係る部分(労使折半)、雇用保険二事業に係る部分(事業主のみ負担)の3つで構成されており、事業主負担のほうが労働者負担より大きくなっています。なお労災保険料率は業種ごとに細かく定められており、全額が事業主負担です。自社の率は「労災保険率表」で確認してください。
毎月の給与計算への影響
料率改定の影響は、年度更新の納付額だけでなく毎月の給与計算にも及びます。一般の事業であれば、令和8年4月1日以降に支払う賃金から、労働者負担分を1,000分の5(0.5%)で計算します。たとえば月額の対象賃金が30万円の従業員であれば、雇用保険料の労働者負担分は1,500円です。給与計算ソフトの料率設定を更新し忘れると、天引き額を誤り、後から従業員へ過不足を精算する手間が生じます。
賃金集計でつまずきやすいポイント
確定保険料を正しく計算するには、前年度に支払った賃金総額の集計が出発点になります。集計でつまずきやすいのが「どこまでが賃金に含まれるか」という点です。通勤手当や時間外手当、賞与は賃金に含めますが、退職金や結婚祝金、出張旅費の実費弁償などは原則として含めません。また、労災保険の対象賃金にはすべての労働者の賃金が入る一方、雇用保険の対象賃金は雇用保険の被保険者となる労働者に限られます。短時間のパート・アルバイトで雇用保険の加入要件を満たさない人の賃金は、雇用保険分の集計から除く必要があり、二つの保険で対象範囲が異なる点が混乱のもとになります。
重要:期限後申告・納付のペナルティ
年度更新の申告・納付を期限(7月10日)までに行わないと、政府が職権で保険料額を決定(認定決定)したうえで、本来の保険料に加えて10%の追徴金が課されることがあります。また納付が遅れた期間には延滞金もかかります。資金繰りの都合があっても、申告だけは必ず期限内に済ませることが重要です。
年度更新の申告・納付を期限(7月10日)までに行わないと、政府が職権で保険料額を決定(認定決定)したうえで、本来の保険料に加えて10%の追徴金が課されることがあります。また納付が遅れた期間には延滞金もかかります。資金繰りの都合があっても、申告だけは必ず期限内に済ませることが重要です。
当事務所の見解・実務上の注意点
年度更新は毎年のことだけに「例年どおり」で流してしまいがちですが、実際にご相談を受けるなかで、いくつか共通してつまずく論点があります。当事務所の実務経験から、とくに注意していただきたい点を挙げます。
料率の「適用開始日」を取り違えない
もっとも多い誤解が、改定された雇用保険料率の適用開始時期です。令和8年度の新料率は「令和8年4月1日以降に支払われる賃金」から適用されます。給与の締め日と支払日がずれている会社では、「3月勤務・4月支払い」の給与から新料率になるのか迷いがちです。原則は「支払日」を基準に判断するため、4月以降に支払う給与から新料率を用います。年度更新の概算保険料も、新年度の率で計算することになります。前年度の率のまま計算してしまうと、概算保険料が過大・過少になり、翌年の精算で大きな差額が生じます。
「紙が来ない=手続き不要」ではない
今年度から電子申請義務対象の大法人に紙の申告書が送られなくなったことで、「書類が届かないので今年は手続きがないと思っていた」という取り違えが起こりやすくなっています。中小企業の多くは引き続き紙の申告書が届きますが、資本金が大きいグループ会社などでは電子申請が義務づけられているケースがあります。自社が電子申請の義務対象かどうかを早めに確認し、義務対象であれば茶封筒で届く電子申請情報通知書を見落とさないようにしてください。
概算と確定の「二重の精算」を意識する
年度更新でわかりにくいのが、前年度の概算保険料と確定保険料の精算と、新年度の概算保険料の納付が一度に行われる点です。前年度の賃金が見込みより増えていれば確定保険料が概算を上回り、その不足分に新年度の概算保険料が上乗せされるため、納付額が想定より大きくなることがあります。逆に賃金が減っていれば充当により納付額が小さくなります。たとえば前年度の概算保険料を100万円で申告していたものの、賃金が伸びて確定保険料が120万円になった場合、20万円の不足分を精算し、さらに新年度の概算保険料を納めることになります。資金繰りの計画では、賃金の増減に応じて納付額が変動することを織り込んでおくと安心です。
業種や保険関係によって率や負担者が変わる
労働保険料は、労災保険分と雇用保険分で性質が異なります。労災保険料は全額が事業主負担で、率は業種ごとに大きく異なります。建設業や林業のように労働災害のリスクが高い業種ほど率が高く設定されているため、自社の業種の率を「労災保険率表」で正しく確認することが欠かせません。一方、雇用保険料は事業主と労働者が分担して負担します。前述のとおり一般の事業・農林水産・建設で率が異なるため、複数の事業を営む場合はそれぞれの区分で集計・計算する必要があります。
今すぐやるべきこと(チェックリスト)
年度更新を期限内にスムーズに終えるために、次の手順で進めましょう。
- ステップ1:申告書・通知書の到着を確認する
6月に入ったら、紙の申告書(または電子申請義務対象の場合は電子申請情報通知書)が届いているかを確認します。届かない場合は、自社が電子申請の義務対象でないかを確かめ、必要に応じて労働局へ問い合わせます。 - ステップ2:前年度の賃金総額を集計する
令和7年4月から令和8年3月までに支払った賃金を、労災保険の対象者・雇用保険の被保険者それぞれの範囲で集計します。賞与や各種手当の取扱いに注意し、対象に含めるもの・含めないものを区別します。 - ステップ3:確定保険料と概算保険料を計算する
集計した賃金に、労災保険率と令和8年度の雇用保険料率(一般の事業は1,000分の13.5)を掛けて、前年度の確定保険料と新年度の概算保険料を算出します。一般拠出金(1,000分の0.02)も忘れずに計算します。 - ステップ4:給与計算ソフトの料率設定を更新する
4月以降に支払う給与の雇用保険料が、新しい労働者負担率(一般の事業は0.5%)で計算されているかを確認します。設定が旧料率のままなら、さかのぼって過不足を精算します。 - ステップ5:7月10日までに申告・納付する
申告書を提出し、保険料と一般拠出金を納付します。延納の要件を満たす場合は、第2期・第3期の納期限(11月2日・2月1日)もカレンダーに登録しておきます。
よくある質問
- Q. 労働保険の年度更新2026の申告・納付期限はいつですか?
- A. 令和8年度(2026年度)の年度更新の申告・納付期間は、2026年6月1日(月)から7月10日(金)までです。この期間内に申告書を提出し、保険料と一般拠出金を納付します。概算保険料を3期に分けて延納する場合の各納期限は、第1期が7月10日、第2期が11月2日、第3期が2027年2月1日です。
- Q. 令和8年度の雇用保険料率はいくらですか?
- A. 一般の事業で1,000分の13.5(1.35%)です。内訳は労働者負担が1,000分の5(0.5%)、事業主負担が1,000分の8.5(0.85%)です。農林水産・清酒製造の事業は1,000分の15.5、建設の事業は1,000分の16.5です。前年度から0.1%引き下げられ、令和8年4月1日以降に支払う賃金から適用されます。
- Q. 紙の申告書が届かないのですが、手続きは不要ですか?
- A. いいえ。電子申請が義務づけられている法人(資本金等が1億円を超える法人など)には、今年度から紙の申告書が送付されなくなり、代わりに電子申請情報通知書が茶封筒で届きます。手続きが不要になったわけではなく、電子申請で申告・納付する必要があります。自社が義務対象かを確認してください。
- Q. パート・アルバイトの賃金も集計に含めますか?
- A. 労災保険の対象賃金には、すべての労働者の賃金を含めます。一方、雇用保険の対象賃金は、雇用保険の被保険者となる労働者の賃金に限られます。週の所定労働時間が短いなどで雇用保険の加入要件を満たさない人の賃金は、雇用保険分の集計からは除きます。二つの保険で対象範囲が異なる点に注意してください。
- Q. 期限までに納付できないとどうなりますか?
- A. 申告・納付を怠ると、政府が保険料額を決定(認定決定)したうえで、本来の保険料に加えて10%の追徴金が課される場合があります。また納付が遅れた期間には延滞金もかかります。資金繰りが厳しい場合でも、延納の活用を検討しつつ、申告は必ず期限内に行うことが大切です。
- Q. 役員や同居の親族も雇用保険の対象になりますか?
- A. 原則として、株式会社の代表取締役などの役員は労働者ではないため、労災保険・雇用保険のいずれの対象にもなりません。ただし、役員であっても労働者としての性質が認められる「使用人兼務役員」は、労働者として支払われる部分の賃金が対象になる場合があります。同居の親族は原則として対象外ですが、一定の要件を満たせば被保険者となることもあるため、判断に迷う場合は労働局や専門家に確認しましょう。
- Q. 電子申請にはどのようなメリットがありますか?
- A. 電子申請(e-Gov)を使うと、窓口へ出向かずに申告でき、入力内容をシステムがチェックしてくれるため記入ミスを減らせます。保険料は電子納付や口座振替も利用でき、納付の手間も省けます。資本金等が1億円を超える法人などは電子申請が義務ですが、それ以外の中小企業も任意で利用でき、近年は利用が広がっています。紙の申告書のやり取りを減らせる点でも、早めの準備をおすすめします。
参考資料・出典
本記事は道濟会計事務所が監修しました。