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消費税率引下げ2026|飲食料品1%は令和9年4月から・6つの特例

消費税率引下げで飲食料品が1%になることを表すアイキャッチ画像
SUMMARYこの記事の要点3点
  • 1ポイント1:令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、飲食料品に係る消費税率が1%(消費税率0.78%と地方消費税率0.22%の合計)に引き下げられます。
  • 2ポイント2:飲食料品を販売する事業者は売上税額だけが下がるため、免税事業者や簡易課税事業者は届出の特例を使って課税方式を見直さないと還付を取り逃します。
  • 3ポイント3:総額表示の特例は令和9年2月1日から5月31日までの4か月間だけです。値札とレジの切替計画を今期のうちに立ててください。

令和8年9月15日、「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」が閣議決定されました。これを受けて国税庁と財務省は同日、「消費税率引下げ特設サイト」を開設し、リーフレット、パンフレット、質疑応答集を一斉に公表しています。示された内容は、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間に限り、飲食料品に係る消費税率を1%へ引き下げるというものです。

税率が下がると聞くと歓迎したくなりますが、事業者の側から見ると話はそれほど単純ではありません。売上にかかる税率だけが下がり、仕入や経費にかかる税率は10%のまま据え置かれる事業者が多数出るからです。本記事では、国税庁が公表した資料に基づいて、対象範囲、同時に設けられる6つの特例、そして中小企業が今期のうちに判断すべき点を整理します。

消費税率引下げの概要

消費税率引下げの概要を示す政府庁舎のイラスト

令和9年4月1日から2年間、飲食料品は1%

国税庁のパンフレット「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて」(令和8年9月)によると、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、飲食料品に係る消費税率が1%(国・地方合計)に引き下げられます。対象となるのは、この期間に行われる飲食料品の譲渡と、飲食料品の保税地域からの引取りです。

1%という税率の内訳は、消費税率0.78%と地方消費税率0.22%相当の合計です。地方消費税率は消費税額の22/78として計算される点は、現行の8%・10%と同じ構造になっています。適用税率を一覧にすると次のとおりです。

区分消費税率地方消費税率合計
飲食料品0.78%0.22%1%
新聞の定期購読6.24%1.76%8%
その他7.8%2.2%10%

注意したいのは、現在8%が適用されている品目のうち、週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)は今回の引下げの対象外とされ、8%のまま据え置かれることです。つまり令和9年4月1日以後は、1%・8%・10%の3つの税率が同時に存在する状態になります。

対象になる飲食料品の範囲は現行のままです

税率1%の対象とされる飲食料品の範囲は、令和9年3月31日以前において税率8%の対象である飲食料品の範囲と同様とされています。飲食料品とは食品表示法に規定する食品(酒類を除く)をいい、一定の要件を満たす一体資産を含みます。これまで軽減税率の判定で使ってきた区分をそのまま流用できます。

国税庁の資料では、出前・宅配やテイクアウトは単なる飲食料品の販売として1%の対象、外食とケータリング等は10%の対象と整理されています。ただしケータリング等のうち、有料老人ホーム等で行う飲食料品の提供や学校給食など一定のものは1%の対象です。一体資産については、税抜価額が1万円以下であって食品の価額の占める割合が2/3以上の場合に、全体が1%の対象になります。

適用税率の判定時点
適用税率の判定は、事業者(売手)が飲食料品を提供する時点で行います。店内飲食か持ち帰りかは、提供する時点で顧客に意思確認を行うなどの方法で判定します。国税庁は、口頭での確認のほか、掲示による方法も営業の実態に応じた方法として差し支えないとしています。

税率変更に伴う経過的な取扱い

令和9年4月1日以後に行う飲食料品の販売であっても、次の2つに該当するものは、これまでどおり税率8%が適用されます。いずれも、税率1%を前提として契約等をしていることが確認できる場合や、契約等が変更された場合は除かれます。

  • ☑ 令和9年1月1日前に締結した定期供給契約に基づき、同年4月1日前に対価の領収をしている同日以後の販売(対価を領収している部分に限る)。代金を先払いしておくと季節の食材が毎月届く定期便などが該当します。
  • ☑ 通信販売の方法により令和9年1月1日前にその販売条件の提示が行われ、同年4月1日前に申込みを受けた同日以後の販売。中元・歳暮といったカタログ販売などが該当します。
本記事の内容は改正案の段階です
国税庁は特設サイトで「なお、内容については、今後、法案が国会に提出され、審議を経た上で可決・成立した場合のものです。」と明記しています。本記事も、令和8年9月15日閣議決定の大綱で示された改正案の内容を前提に解説しています。確定した制度として取引条件を決める前に、必ず最新の公表資料をご確認ください。

中小企業への実務影響と6つの特例

飲食料品を販売する中小企業への実務影響を表す小規模店舗のイラスト

今回の引下げでは、税率そのものの変更に加えて、届出・申告・表示に関する特例がまとめて設けられます。中小企業が受ける影響の順に整理します。

影響の本体は「売上だけ下がる」ことです

食品スーパー、精肉店、鮮魚店、パン屋、菓子製造業、食品卸といった飲食料品を販売する事業者は、売上に係る税率が8%から1%へ下がる一方、包装資材、水道光熱費、家賃、運送費などの経費は10%のままです。結果として、売上げに係る税額より仕入れに係る税額が大きくなり、一般課税(本則課税)で申告すれば消費税の還付を受けられる可能性が出てきます。逆に、外食を中心とする飲食店は売上が10%のまま食材の仕入が1%に下がるため、納付税額が増える方向に働きます。

事業の型売上の主な税率仕入の主な税率納付税額への向き
食品小売・食品製造・食品卸1%1%と10%が混在減少(還付の可能性)
店内飲食中心の飲食店10%1%(食材)が中心増加
持ち帰り・宅配中心の飲食業1%1%(食材)が中心やや減少
飲食料品を扱わない事業10%10%影響は限定的

特例1・2 免税事業者と簡易課税事業者の届出期限がゆるみます

還付を受けるには課税事業者であり、かつ一般課税で申告する必要があります。原則では、免税事業者が課税事業者を選ぶには課税期間の初日の前日までに「消費税課税事業者選択届出書」を出さなければならず、簡易課税をやめる場合も同様に事前の提出が必要です。

今回の改正案では、飲食料品の譲渡を行う免税事業者が、令和9年4月1日の属する課税期間中に「消費税課税事業者選択届出書」を提出すれば、その課税期間から課税事業者となれる特例が設けられます。簡易課税事業者についても、同じ課税期間中に「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出すれば、その課税期間から一般課税で申告できる特例が設けられます。いずれも届出書の「参考事項」欄に「飲食料品特例」と記載して提出します。さらに、飲食料品の譲渡を行う簡易課税事業者の令和9年4月1日の属する課税期間については、簡易課税の2年間の継続適用要件が適用されません。

特例3 簡易課税の計算方法が飲食料品だけ別扱いになります

簡易課税制度を適用して申告する場合、業種区分にかかわらず、飲食料品の譲渡(1%対象)に係る売上税額と同額の仕入税額を計上することとされます。その他の売上税額にみなし仕入率を乗じた額との合計額を仕入税額控除する形で、2割特例・3割特例を適用する場合も同様です。また、みなし仕入率に関する75%ルールの判定と計算は、飲食料品の譲渡(1%対象)に係る取引を除いて行うこととされます。複数事業を営む事業者は、この除外を忘れると計算を誤ります。

特例4 中間申告は仮決算で取り戻せます

中間申告は前課税期間の年税額から算出した金額を納める仕組みです。そのままでは、税率が下がった後も引下げ前の税額に基づいて中間納付することになり、資金繰りを圧迫します。改正案では、令和9年4月1日以後に開始する中間申告対象期間について、直前課税期間の飲食料品に係る売上げ・仕入れに税率1%が適用されたものとしたときの消費税額に基づく中間申告税額を記載した、仮決算による中間申告書を提出できることとされます。

特例5 総額表示は4か月だけ猶予されます

税率引下げに対応した総額表示に直ちに対応することが困難な事情がある場合、令和9年2月1日から5月31日までの間は、飲食料品について、実際の支払額と誤認させない掲示等をしていることを条件に、税率8%又は1%での総額表示をしておくことが認められます。新旧税率の混在による表示も認められます。

税抜価格だけの表示は引き続き認められません
この特例はあくまで「どちらの税率で計算した税込価格を出してよいか」の猶予です。税抜価格(本体価格)のみを表示する方法は、猶予期間中も認められません。

特例6 インボイスの記載事項は増えません

飲食料品の販売を行った場合、インボイスには適用税率1%とその消費税額等を記載します。それ以外のインボイスや帳簿の記載事項に変更はありません。国税庁は、「軽減税率の対象品目である旨」に代えて「税率1%の対象品目である旨」を新たに記載する必要はない、と明記しています。請求書の様式を作り替える必要はなく、税率欄に1%の行が増えるだけだと理解してください。

ポイント
月中締めの請求書では、令和9年4月分(毎月15日締めであれば3/16~4/15)の1枚に税率8%と1%の対象商品が混在します。税率ごとに区分した対価の額・適用税率・消費税額等を8%と1%の両方について記載できるよう、請求システムの改修を早めに手配してください。

当事務所の見解・実務上の注意点

消費税率引下げの実務上の注意点を確認する虫眼鏡のイラスト

「減税だから何もしなくてよい」が一番危ない

報道では消費税の引下げという面ばかりが強調されますが、事業者から見た本質は「売上と仕入で税率がねじれる」ことです。ねじれが起きると、これまで納付だったものが還付になったり、簡易課税が有利だった事業者の判定が逆転したりします。判定の前提が変わるのですから、課税方式を放置したまま迎えるのは、有利不利の検討を放棄することと同じです。

とくに影響が大きいのは、飲食料品を販売していて簡易課税を選んでいる事業者です。簡易課税をやめる届出の期限に特例が設けられ、さらに2年縛りも外れるということは、裏を返せば「判断する機会が用意されているのに使わなければそれまで」ということです。

免税事業者は「いつから課税事業者になるか」で結果が変わります

免税事業者が還付を狙う場合、入口が2つあります。1つは「消費税課税事業者選択届出書」の特例を使う方法で、個人事業者や12月決算法人であれば令和9年1月1日から課税事業者となります。この場合、1月1日から3月31日までの飲食料品の譲渡には税率8%を適用して申告することになり、その3か月分は納付が生じる可能性があります。

もう1つは、インボイス発行事業者の登録に係る経過措置を使う方法です。令和9年3月17日までに「適格請求書発行事業者の登録申請書」に登録希望日を令和9年4月1日と記載して提出すれば、同日から課税事業者となり、1月から3月までの取引は申告の対象外になります。ただし登録を受けるとインボイスの交付義務等が課され、登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までは課税事業者を続ける必要があります。

還付を早く受けたい場合の選択肢
課税期間を3か月ごと又は1か月ごとに短縮する「課税期間の特例」を使えば、確定申告の回数が増えるぶん還付を早期に受けられます。この制度自体に変更はありません。ただし課税期間の特例を受けた場合、事業を廃止した場合を除き2年間はやめられない点に注意してください。

見落としやすい3つの論点

第一に、返品と貸倒れです。税率8%で販売した飲食料品について、令和9年4月1日以後に返品や貸倒れがあった場合には、税率8%により調整計算を行います。返品処理を新税率で流してしまうと差額が残ります。

第二に、日をまたぐ売上の計上です。国税庁は、継続適用している売上計上基準に従って令和9年4月1日午前0時から1時までの販売を同年3月31日分の売上げとして計上する場合、その時間帯の飲食料品の譲渡に係る適用税率はすべて8%を適用して差し支えないとしています。

第三に、売手と買手で計上基準が異なる場合です。出荷基準と検収基準が混在すると、同じ取引について売手が8%で請求し、買手の帳簿では4月の仕入になるという事態が起こります。取引先ごとに計上基準を確認し、3月から4月にかけての取引は証憑の日付で突き合わせる運用をおすすめします。日々の記帳から見直したい場合は記帳・経理代行のサービスもご用意しています。

今すぐやるべきこと

消費税率引下げに備えて今すぐやるべき手順を表す階段のイラスト

令和9年4月1日まで半年余りです。改正案の段階であっても、次の順番で準備を進めておけば、法案が成立してから慌てずに済みます。

  1. ステップ1:売上と仕入を1%・8%・10%に仕分けする
    直近1年分の売上台帳と仕入台帳を、飲食料品(1%)、新聞の定期購読(8%)、その他(10%)に分けて集計します。対象品目の判定は現行の軽減税率の区分がそのまま使えるため、既存の商品マスタの税区分を土台にできます。店内飲食と持ち帰りが混在する事業者は、その比率も併せて出しておきます。
  2. ステップ2:課税方式ごとの有利判定を試算する
    ステップ1の数字を使い、一般課税、簡易課税、2割特例または3割特例のそれぞれで納付税額を試算します。飲食料品の1%売上に対応する仕入税額は売上税額と同額を計上する特例があるため、簡易課税でも1%部分の納税は生じません。どの方式が有利かは、飲食料品以外の売上の構成比で変わります。
  3. ステップ3:提出すべき届出書と期限を一覧にする
    課税事業者選択届出書、簡易課税制度選択不適用届出書、課税期間特例選択届出書、適格請求書発行事業者の登録申請書のうち、どれを、いつまでに出すのかを決めます。特例の適用を受ける届出書は「参考事項」欄に「飲食料品特例」と記載します。登録申請書で令和9年4月1日を登録希望日とする場合は同年3月17日が期限です。
  4. ステップ4:レジ・受発注・会計システムの改修可否をベンダーに確認する
    1%という税率を設定できるか、8%と1%と10%の3税率を同時に扱えるか、インボイスの税率別集計欄が3行に増えても出力できるかを、書面で確認してください。改修に要する期間と費用の見積りも早めに取っておきます。
  5. ステップ5:値札・メニュー・カタログの切替計画を作る
    総額表示の特例が使えるのは令和9年2月1日から5月31日までの4か月間です。誤認防止措置の掲示文面と掲示場所、貼り替えの担当と順番を、この期間内に収まるよう逆算して決めます。カタログや商品パッケージに価格を印字している場合は、印刷の発注時期そのものを見直す必要があります。
判断に迷ったら早めにご相談ください
課税方式の選択は、一度届出を出すと原則2年間は戻せません。当事務所では決算期と業種構成をふまえた試算を行っています。堺市の税務顧問サービスでは、月次の数字をもとにした有利判定までお手伝いしています。

よくある質問

飲食料品の消費税率引下げについて、事業者の方から寄せられることの多い質問をまとめました。

Q. 飲食料品の消費税率1%はいつから適用されますか?
A. 令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間です。国税庁は、この期間に行われる飲食料品の譲渡および飲食料品の保税地域からの引取りについて税率1%が適用されるとしています。なお、この内容は令和8年9月15日閣議決定の大綱で示された改正案であり、今後法案が国会に提出され可決・成立した場合のものです。
Q. 外食やテイクアウトの税率はどうなりますか?
A. 店内飲食などの外食とケータリング等は対象外で、税率10%が適用されます。一方、テイクアウトや出前・宅配は単なる飲食料品の販売として税率1%の対象です。ケータリング等のうち、有料老人ホーム等で行う飲食料品の提供や学校給食など一定のものは1%の対象とされています。判定は提供する時点で行い、顧客への意思確認や掲示によって確認します。
Q. 深夜営業で日をまたぐ売上の税率はどうなりますか?
A. 国税庁は、事業者が継続適用している売上計上基準に従って令和9年4月1日の午前0時から1時までの商品販売を同年3月31日分の売上げとして計上する場合、その時間帯の飲食料品の譲渡に係る適用税率はすべて3月31日時点の税率である8%を適用することとして差し支えないとしています。営業時間が翌日に及ぶ小売店は、締め処理の時刻をあらかじめ決めておいてください。
Q. 簡易課税をやめて還付を受けることはできますか?
A. 飲食料品の譲渡を行い簡易課税制度の適用を受けている事業者は、令和9年4月1日の属する課税期間中に「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出すれば、その課税期間から一般課税で申告できる特例が設けられます。さらに、その課税期間については簡易課税の2年間の継続適用要件が適用されません。届出書の「参考事項」欄に「飲食料品特例」と記載して提出します。なお、簡易課税のままでは一般課税で計算すれば仕入が売上を上回る場合でも還付は受けられませんので、試算のうえで判断してください。
Q. 総額表示は令和9年4月1日までに必ず貼り替える必要がありますか?
A. 税率引下げに対応した総額表示に直ちに対応することが困難な事情がある場合は、令和9年2月1日から5月31日までの間、実際の支払額と誤認させない掲示等をしていることを条件に、税率8%又は1%での総額表示をしておくことが認められます。新旧税率の混在による表示も可能です。困難な事情の例としては、夜間の値札の貼り替え作業に対応できない場合や、カタログ・商品パッケージ自体に価格が印字されている場合が挙げられています。ただし税抜価格のみを表示する方法は、この期間中も認められません。
Q. 中間申告の納税額が過大になるのを防ぐ方法はありますか?
A. 令和9年4月1日以後に開始する中間申告対象期間については、直前課税期間の飲食料品に係る売上げ・仕入れに税率1%が適用されたものとしたときの消費税額に基づく中間申告税額を記載した、仮決算による中間申告書を提出できる特例が設けられます。税額がなければゼロで構いません。引下げが終了する令和11年4月1日以後についても、税率8%が適用されたものとして計算する同様の特例が用意されています。

参考資料・出典

本記事は道濟会計事務所が監修しました。




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