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減価償却の償却方法2026|定額法と定率法の選定と届出書の期限

減価償却の償却方法として定額法と定率法を選定する仕組みを表した画像
SUMMARYこの記事の要点3点
  • 1ポイント1:償却方法の届出書を出していない場合、法人には法定償却方法が適用されます。国税庁は「機械及び装置の法定償却方法は定率法です」と示しており、定額法にしたい場合は届出が必要です。
  • 2ポイント2:法人の届出期限は設立第1期の確定申告書の提出期限までです。既に選定した資産以外の減価償却資産を取得したときも、取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに届け出ます。
  • 3ポイント3:いったん選定した方法の変更には承認が必要で、法人は新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに申請します。決算直前には間に合いません。

設備や車両を購入したとき、その取得価額は使用可能期間にわたって分割して費用にしていきます。この配分の仕方が償却方法であり、代表的なものが定額法と定率法です。同じ資産でも、どちらを選ぶかで各年度に落ちる金額の並び方が変わります。

見落とされがちなのは、この選択が「届出」によって決まるという点です。国税庁は、届出書を提出していない場合には法定償却方法が適用されると明示しています。つまり何もしなければ、自社の意思とは関係なく償却方法が決まります。本記事では、国税庁の資料にそって定額法と定率法の違いを整理したうえで、届出書と変更承認申請書の提出期限、そして中小企業が実際につまずきやすい点を解説します。

定額法と定率法の違いと法定償却方法

定額法と定率法で償却費の配分が異なることを表したイラスト

平成19年度税制改正により、平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産については、償却可能限度額および残存価額が廃止され、残存簿価1円まで償却できるようになりました。現在使われている定額法と定率法は、この改正後の方法です。

2つの方法の特徴

国税庁のタックスアンサーNo.2106は、両者の特徴を次のように整理しています。定額法は「償却費の額が原則として毎年同額となる」方法、定率法は「償却費の額は初めの年ほど多く、年とともに減少する」方法です。

項目定額法定率法
計算方法取得価額×定額法の償却率未償却残高×定率法の償却率(調整前償却額)
償却費の並び原則として毎年同額初めの年ほど多く、年とともに減少
後半の取扱い特段の切替えなし調整前償却額が償却保証額に満たない年分以後は、改定取得価額×改定償却率で毎年同額

定率法の「償却保証額」とは、国税庁の説明によれば「資産の取得価額にその資産の耐用年数に応じた保証率を乗じて計算した金額」です。また「改定取得価額」は「調整前償却額が初めて償却保証額に満たないこととなる年の期首未償却残高」を指します。償却率・改定償却率・保証率は、耐用年数省令別表第八から別表第十に定められています。

国税庁が示す具体例では、取得価額100万円・耐用年数10年の資産について、定額法の1年目の償却費は10万円(1,000,000×0.100)、定率法の1年目は20万円(1,000,000×0.200)とされています。定率法は前半に費用が寄る一方、耐用年数全体で費用になる総額は変わりません。

届出をしなければ法定償却方法になる

国税庁の「法人の減価償却制度の改正に関するQ&A」は、この点を明確に述べています。「『減価償却資産の償却方法の届出書』の提出をしていない場合で、上記(2)に該当しないときには、平成19年4月1日以後に取得をされた減価償却資産の償却方法は、法定償却方法を適用することとなります(令53)。したがって、例えば、機械及び装置の法定償却方法は定率法ですので、定率法以外に選定可能な償却方法として定額法の選定を希望される場合は、上記(1)の届出書を提出する必要があります。」

個人事業主の場合は逆向きです。国税庁のタックスアンサーNo.2100は「法定の償却方法は一般的には旧定額法または定額法です」としています。法人と個人で初期設定が異なる点は、法人成りの前後で特に意識しておく必要があります。

そもそも選べない資産がある

すべての資産で定額法と定率法を選べるわけではありません。国税庁は、平成10年4月1日以後に取得した建物の償却方法は旧定額法または定額法のみとなり、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備および構築物の償却方法は定額法となるとしています。

届出書の記載要領も同じ趣旨で、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物、並びに平成19年4月1日以後に取得した建物などの償却方法は、鉱業用減価償却資産等に該当するものを除き定額法によることとされているため「この届出書の提出を要しません」としています。

届出・変更承認申請の期限と中小企業への実務影響

償却方法の届出書と変更承認申請の期限を表したイラスト

償却方法は資産の区分ごとに選定します。国税庁のタックスアンサーNo.2100は「上記の償却方法は、減価償却資産の財務省令の別表に定められている種類ごとに選定します。この場合、償却方法の選定の届出が必要です」としています。届出書の記載要領も、選定は一般減価償却資産・鉱業用減価償却資産・鉱業権等の別に、かつ耐用年数省令に定める区分ごとに行うとしています。

法人の届出期限

国税庁の手続案内「C1-33 減価償却資産の償却方法の届出」は、提出時期を区分ごとに定めています。中小企業に関係が深いのは次の2つです。

  • ☑ 普通法人及び協同組合等を設立した場合は、設立第1期の確定申告書の提出期限まで
  • ☑ 設立後、既に償却方法を選定している減価償却資産以外の減価償却資産を取得した場合は、その減価償却資産を取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限まで

このほか、新たに事業所を設けた法人がその事業所について異なる償却方法を選定しようとする場合は、新たに事業所を設けた日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までとされています。手続根拠は法人税法施行令第51条第2項および第184条第5項です。

注意したいのは2つ目です。設立時に届出をしていても、それは届け出た区分についてだけの選定です。その後に別の区分の資産を初めて取得したときは、あらためて届出が必要になります。

個人事業主の届出期限

国税庁の手続案内「A1-18 所得税の減価償却資産の償却方法の届出手続」は、対象者を「新たに業務を開始した方、既に取得している減価償却資産と異なる種類の減価償却資産を取得した方又は従来の償却方法と異なる償却方法を選定する事業所を新たに設けた方」とし、提出時期を「上記[手続対象者]となった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください」としています。手続根拠は所得税法施行令第123条です。

タックスアンサーNo.2100は、この期限をより具体的に「例えば、新たに業務を始めた場合には、減価償却の方法を選定してその翌年の3月15日までに所轄の税務署長に届け出なければなりません」と説明しています。

変更には承認が必要で、期限は事業年度が始まる前

いったん選定した償却方法を変えるには、届出ではなく承認申請が必要です。ここが実務上いちばん間違いが起きる箇所です。

区分法人(C1-38)個人(A1-22)
提出期限新たに償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日まで変更しようとする年の3月15日まで
対象者現によっている償却方法を採用してから相当期間経過した法人償却方法を変更しようとする方
手続根拠法人税法施行令第52条第2項、法人税法施行規則第15条所得税法施行令第124条

法人の申請には、みなし承認の定めがあります。国税庁は「この申請書を提出した場合において、新たな償却方法を採用しようとする事業年度終了の日(その事業年度について中間申告書を提出すべき法人については、その事業年度開始の日以後6月を経過した日の前日)までに承認又は却下の処分がなかったときは、その日においてその承認があったものとみなされます」としています。

個人についても同様に、国税庁は「償却方法を変更しようとする年の12月31日(その申請書を提出した者がその年の中途で死亡し又は出国をしたときは、その死亡又は出国の時)までに処分の通知がなかったときは、承認されたものとみなされます」としています。

また個人の変更承認申請には審査基準が示されています。国税庁は「申請書が現在の償却方法を採用してから(原則として)3年を経過して提出されているか、変更しようとする償却方法によっても適正な所得の金額の計算が行われるか等を審査します」としています。短期間での往復は想定されていません。

法人の変更承認申請は「事業年度開始の日の前日まで」です。3月決算法人が当期から定額法に変えたいと気づいたのが5月であれば、その事業年度には間に合わず、適用は翌事業年度からになります。

当事務所の見解・実務上の注意点

専門家が固定資産台帳の区分を確認する様子を表したイラスト

償却方法の選定は、設立時に一度考えたきり見直されないことが多い論点です。実務で気づく問題は、だいたい次の3つに集約されます。

「届出をしていない」ことに気づいていない

設立時の届出書一式は、青色申告の承認申請書や給与支払事務所等の開設届出書とあわせて提出します。このとき償却方法の届出書を出したかどうかは、控えを確認しないと分かりません。出していなければ、機械及び装置は法定償却方法である定率法で計算することになります。

定率法は初年度の償却費が大きいため、黒字が見込める会社にとっては有利に働きます。一方、創業期で当面赤字が続く見込みの会社や、毎期の利益を平準化して金融機関に説明したい会社では、定額法のほうが実態に合うことがあります。届出をしていない状態は「定率法を選んだ」のではなく「選ばなかった結果そうなっている」状態ですので、意図した選択かどうかを一度確認する価値があります。

資産を新しく取得したときの届出漏れ

前述のとおり、既に償却方法を選定している資産以外の減価償却資産を取得した場合には、その取得日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに届出が必要です。設立時に器具及び備品について届け出ていた会社が、数年後に初めて機械及び装置を取得したとします。この機械について定額法を選びたいのであれば、その事業年度の確定申告期限までに届出書を出さなければなりません。

届出書の記載要領は、選定が耐用年数省令に定める区分ごとに行われることを示しており、資産、設備の種類欄には建物附属設備・構築物・船舶・航空機・車両及び運搬具・工具・器具及び備品といった区分ごとに記載するとしています。取得した資産がどの区分に入るかで、届出の要否が変わります。

変更したくなってからでは遅い

最も多い相談は、決算の着地が見えてきた段階で「償却方法を変えたい」というものです。法人の場合、変更承認申請の期限は新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までですので、期中に気づいた時点で当期の変更はできません。

そのうえ、法人の手続対象者は「現によっている償却方法を採用してから相当期間経過し」た法人とされ、個人の審査基準では原則として3年の経過が挙げられています。利益の見込みに応じて毎期切り替える、という使い方は想定されていないと理解しておくのが安全です。

償却方法の見直しは、設備投資の計画を立てる段階、つまり事業年度が始まる前に検討するのが本筋です。設備投資は特別償却や税額控除といった他の制度とも絡みますので、購入の意思決定と同じタイミングで税務上の取扱いを確認しておくと手戻りがありません。当事務所では堺市の税務顧問として、設備投資の相談を受けた段階で償却方法の選定状況をあわせて確認しています。日々の記帳・経理代行のなかで固定資産台帳の区分を整えておくと、届出の要否をその都度判断できます。

今すぐやるべきこと

固定資産台帳を区分ごとに点検する手順を表したイラスト

償却方法は、届出書の控えを見れば現状が分かります。次の順番で確認してください。

  1. ステップ1:設立時の提出書類の控えを確認する
    「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出しているかどうかを確認します。控えが見当たらない場合は、所轄税務署に提出の有無を照会できます。届出をしていなければ、法人は法定償却方法によることになります。
  2. ステップ2:固定資産台帳を耐用年数省令の区分ごとに並べ替える
    建物、建物附属設備、構築物、機械及び装置、車両及び運搬具、工具、器具及び備品といった区分ごとに、現在どの償却方法で計算しているかを一覧にします。区分ごとに選定する制度ですので、資産単位ではなく区分単位で見るのが要点です。
  3. ステップ3:そもそも選択の余地がない資産を切り分ける
    平成19年4月1日以後に取得した建物、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物は定額法によることとされており、これらについて届出書の提出は要しません。検討対象から外します。
  4. ステップ4:今期に新しい区分の資産を取得していないか確認する
    既に選定している区分以外の資産を取得していた場合、その事業年度の確定申告書の提出期限までが届出の期限です。決算作業の中で取得資産の区分を確認し、必要なら届出書を作成します。
  5. ステップ5:変更したい場合は翌事業年度を前提に準備する
    法人は新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日まで、個人は変更しようとする年の3月15日までに承認申請書を提出します。期限を過ぎると当期からの変更はできません。
  6. ステップ6:設備投資計画とあわせて毎期確認する習慣にする
    次期に大きな設備投資を予定している場合は、事業年度が始まる前に償却方法を確認します。特別償却や税額控除の適用可否とあわせて検討すると、投資判断の精度が上がります。届出書と承認申請書は、いずれもe-Taxソフトで作成して提出できます。

よくある質問

Q. 償却方法の届出書を出していない場合はどうなりますか?
A. 国税庁は、届出書の提出をしていない場合、平成19年4月1日以後に取得された減価償却資産の償却方法は法定償却方法を適用することとなるとしています(令53)。そのうえで「例えば、機械及び装置の法定償却方法は定率法です」と示し、定額法を選定したい場合は届出書の提出が必要としています。個人については、タックスアンサーNo.2100が法定の償却方法は一般的には旧定額法または定額法であるとしています。
Q. 定額法と定率法はどちらが有利ですか?
A. 耐用年数の全期間で費用になる総額は変わらず、各年度への配分の仕方が違うだけです。定率法は初めの年ほど償却費が多く、定額法は原則として毎年同額になります。早期に利益が出る見込みであれば定率法が資金繰りに効き、当面赤字が続く見込みや利益を平準化したい場合は定額法が実態に合うことがあります。自社の利益計画をもとに判断してください。なお定率法でも、調整前償却額が償却保証額に満たなくなった年分以後は毎年同額になります。
Q. 建物や建物附属設備も定率法を選べますか?
A. 選べません。国税庁は、平成10年4月1日以後に取得した建物の償却方法は旧定額法または定額法のみとなり、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備および構築物の償却方法は定額法となるとしています。届出書の記載要領も、これらの資産については届出書の提出を要しないとしています。
Q. 設立のときに届出をしていれば、その後に取得した資産も同じ方法になりますか?
A. 届け出た区分についてはそのとおりですが、別の区分の資産には及びません。国税庁の手続案内は、既に償却方法を選定している減価償却資産以外の減価償却資産を取得した場合、その減価償却資産を取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに届け出るとしています。新しい種類の資産を初めて取得したときは、あらためて届出が必要かを確認してください。
Q. 期の途中で償却方法を変更できますか?
A. 法人は、新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに変更承認申請書を提出することとされていますので、期中に申請して当期から変更することはできません。個人は変更しようとする年の3月15日までです。なお個人の審査基準では、現在の償却方法を採用してから原則として3年を経過して提出されているかが審査項目に挙げられています。
Q. 変更承認申請を出した後、承認の通知が来ないときはどうなりますか?
A. みなし承認の定めがあります。法人については、新たな償却方法を採用しようとする事業年度終了の日(中間申告書を提出すべき法人は事業年度開始の日以後6月を経過した日の前日)までに承認または却下の処分がなかったときは、その日において承認があったものとみなされます。個人については、変更しようとする年の12月31日までに処分の通知がなかったときは承認されたものとみなされます。

参考資料・出典

本記事は道濟会計事務所が監修しました。




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