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出張旅費と日当の節税2026|非課税とインボイス特例を税理士が解説

2026.07.06
出張旅費と日当の節税・インボイス出張旅費等特例と旅費規程
この記事の要点3点

  • ポイント1:出張の交通費・宿泊費・日当のうち「通常必要と認められるもの」は、受け取る役員・従業員に所得税がかからず、会社は旅費交通費として損金にできます。
  • ポイント2:適正な出張旅費規程にもとづく日当は、法人税・所得税・社会保険料・消費税の4つで負担を抑えられる、中小企業の王道の節税策です。
  • ポイント3:まず出張旅費規程を整え、金額を社会通念上相当な水準にし、帳簿の摘要に「出張旅費等特例」と記載すればインボイスなしで消費税の仕入税額控除ができます。

「出張手当(日当)を出すと節税になる」と聞いたことがある経営者は多いはずです。実際、出張旅費や日当は、受け取る側の税負担を増やさずに会社の経費にできる、中小企業にとって数少ない有効な手立てのひとつです。しかも、令和5年に始まったインボイス制度のもとでも、出張旅費については「出張旅費等特例」により領収書(インボイス)の保存なしで消費税の仕入税額控除が認められます。本記事では、堺市の道濟会計事務所が、出張旅費・日当が非課税になる仕組みと、規程整備から消費税の実務まで、国税庁などの一次情報にもとづいて具体的に解説します。出張の多い中小企業や、これから法人成りを考えている個人事業主の方にこそ知っておいてほしい内容です。仕組みを正しく理解し、規程と記録を整えれば、税務調査を恐れることなく堂々と活用できる制度です。

出張旅費・日当が非課税になる仕組み

所得税法では、給与所得者が受け取る手当は原則として給与所得に含まれ課税されますが、例外があります。そのひとつが「転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの」です。これは所得税が非課税とされ、受け取った役員・従業員に所得税も住民税もかかりません。一方、支給した会社側は旅費交通費として損金に算入できます。つまり、給与のように課税されることなく、会社から個人へ資金を移せるのが最大の特徴です。

日当とは何か

出張に伴う費用は、大きく「実費」と「日当」に分けられます。交通費や宿泊費は実際にかかった金額(実費)を精算するのが一般的です。これに対して日当は、出張中の食事代や諸雑費、心身の負担などをまかなうために、実費とは別に定額で支給する手当です。領収書の有無にかかわらず定額で支給できるため、精算事務の簡素化にもつながります。

この日当も、出張旅費規程などにもとづき「通常必要と認められる範囲」で支給されるものであれば、旅費として非課税・損金の扱いになります。逆に、規程がなく場当たり的に高額を支給していると、実質的な給与とみなされて課税されるおそれがあります。

具体例で考えてみましょう。営業担当者が日帰りで遠方に出張し、電車代が往復8,000円、昼食や飲み物などの雑費が2,000円かかったとします。交通費8,000円は実費精算で会社が負担し、これに加えて規程で定めた日当(例えば日帰り2,000円)を支給する、という運用が一般的です。この日当2,000円は、通常必要と認められる範囲であれば非課税となり、担当者の手取りをそのまま増やしつつ、会社の経費にもなります。実費とは別枠で支給できる点が、日当ならではのメリットです。

キーワードは「通常必要と認められる範囲」
非課税になるかどうかは、金額が社会通念上相当な水準かどうかで判断されます。役職や出張先(国内・海外)に応じた合理的な金額設定と、その根拠となる規程の整備が、非課税を維持するための前提になります。

誰に支給できるか

日当を非課税で支給できるのは、法人の役員・従業員です。ここが個人事業主との大きな違いです。個人事業主の場合、出張の交通費・宿泊費の実費は必要経費になりますが、事業主本人に対する日当は必要経費として認められません。自分自身に手当を支払うという関係が成り立たないためです。従業員に対する日当であれば、個人事業でも経費にできます。

この違いは、個人事業主が法人成りを検討する際の判断材料にもなります。法人化して役員となれば、自分自身にも規程にもとづく日当を非課税で支給できるようになるため、節税の選択肢が広がります。

そもそも「出張」とは何か

日当を支給する前提として、その移動が「出張」に当たるかどうかを整理しておく必要があります。一般に出張とは、通常の勤務地を離れて業務を行うために移動することを指し、多くの会社では「勤務地からおおむね一定距離以上」「宿泊を伴う」といった基準を規程で定めています。日常的な近距離の外出や、通常の通勤圏内での移動は出張に当たらず、これらに日当を支給しても旅費として認められません。

出張の範囲を規程で明確にしておくことは、支給の可否をめぐる社内の混乱を防ぐと同時に、税務上「これは出張である」と説明する根拠にもなります。国内出張と海外出張、日帰りと宿泊出張で日当額を分けて定めるのが一般的で、こうした区分は消費税の処理にもそのまま活かせます。

中小企業への実務影響と4つの節税効果

適正な出張旅費規程にもとづく日当は、次の4つの税・保険料の負担を同時に軽くする効果があります。これが「日当は節税の王道」と言われる理由です。

対象効果
法人税支給した日当・旅費は旅費交通費として損金に算入
所得税・住民税受け取る役員・従業員は非課税(通常必要と認められる範囲)
社会保険料実費弁償的な旅費は標準報酬月額の対象外
消費税出張旅費等特例により帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能

社会保険料の対象にならない理由

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の保険料は、標準報酬月額をもとに計算されます。この報酬には「労働の対償として受けるすべてのもの」が含まれますが、実費弁償的な性格をもつ出張旅費は、労働の対償とは認められないため報酬等に該当しません。日本年金機構が公表する事務取扱いの事例集でも、事業主が負担すべきものを被保険者が立て替え、その実費弁償を受ける例として「出張旅費」が明示されています。給与を日当に付け替えたとみなされない、実態のある運用であることが前提です。

この点は見落とされがちですが、影響は小さくありません。社会保険料は会社と従業員が折半で負担しており、給与を増やせば双方の保険料負担も増えます。同じ手取りを実現するなら、課税対象の給与ではなく、規程にもとづく非課税の日当として支給するほうが、会社・従業員の双方にとって負担が軽くなります。もちろん、あくまで実際の出張に対する相当な日当であることが前提で、出張の実態がないのに日当名目で支給すれば否認の対象になります。

インボイス制度でも領収書不要「出張旅費等特例」

インボイス制度では、原則として適格請求書(インボイス)の保存がなければ仕入税額控除ができません。しかし、従業員等に支給する出張旅費・宿泊費・日当等のうち、その出張に通常必要と認められる部分については、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。これを「出張旅費等特例」といいます。

この特例は、出張旅費等に関する社内規程や基準の有無にかかわらず、また概算払いによるものか実費精算によるものかにもかかわらず適用されます。「通常必要と認められる部分」は、所得税が非課税となる旅費の範囲の例により判定します。帳簿には、課税仕入れの相手方の氏名または名称、取引年月日、取引の内容、支払対価の額に加え、特例の対象である旨(摘要欄に「出張旅費等特例」など)を記載しておくとよいでしょう。この記載があることで、後日の確認や税務調査の際に、なぜインボイスがないのかを一目で説明できます。

なお、日当のうち国内出張に係る部分は消費税の課税仕入れとなりますが、海外出張に係る部分は国外での役務などにあたり、消費税の課税仕入れの対象外となります。国内と海外の出張が混在する場合は、区分して処理する必要があります。

給与で渡す場合と日当で渡す場合の違い

同じ「従業員に月1万円分の資金を渡す」場合でも、給与として渡すか、出張日当として渡すかで、税・保険料の扱いは大きく変わります。イメージをつかむために、両者を並べて比較します。

項目給与を1万円増やす出張日当を1万円支給
会社の損金損金になる損金になる
受け取る人の所得税・住民税課税される非課税(通常必要な範囲)
社会保険料労使双方の負担が増える原則対象外
消費税仕入税額控除の対象外出張旅費等特例で控除可(国内分)

このように、日当は「受け取る人の手取りを減らさず、会社の負担も抑える」形で資金を渡せる点で、給与とは性格が異なります。ただし、これはあくまで実際の出張があってこそ成り立つ話です。出張の実態を伴わない支給は認められないため、あくまで正当な出張に対する対価として運用することが大前提です。

当事務所の見解・実務上の注意点

日当は効果が大きいぶん、運用を誤ると税務調査で否認されやすい論点でもあります。道濟会計事務所が実務で重視している3点をお伝えします。

規程は「全社員一律」で整備する

出張旅費規程は、役員だけ、あるいは社長やその親族だけを対象にすると、実質的な役員給与や利益調整とみなされ、経費として認められないおそれがあります。役職に応じた金額差を設けること自体は問題ありませんが、従業員も含めて一律に適用される規程にしておくことが大切です。規程には、対象者、出張の定義(勤務地からの距離や宿泊の有無)、役職別・国内外別の日当額、精算方法などを明記します。

金額は社会通念上相当な水準に

日当の金額に法律上の上限額はありませんが、「通常必要と認められる範囲」を大きく超える高額な日当は、超えた部分が給与として課税されるリスクがあります。同業他社や公務員の旅費基準なども参考に、常識的な水準に設定してください。一泊数万円の日当といった過大な設定は、否認の典型例です。

重要:規程を作っただけでは不十分です。実際に出張が行われた事実を示す出張報告書や、日付・行き先・目的・宿泊の有無を記録した書類を残しておくことが、非課税・損金・仕入税額控除のいずれにおいても調査対応の要になります。「規程・支給記録・出張実態」の3点セットで初めて安全に運用できます。

個人事業主は法人成りも視野に

前述のとおり、個人事業主本人には日当を経費にできません。出張が多く、日当による節税メリットが大きいと見込まれる事業者は、法人成りによってこの制度を使えるようになるかどうかを、他の要素とあわせて検討する価値があります。当事務所では、法人化の損益分岐点を含めて総合的にアドバイスしています。

よくある否認のパターン

税務調査で日当が問題視される典型的なケースをいくつか挙げます。第一に、規程が存在しない、または社長個人のためだけに作られているケースです。第二に、出張の実態を示す記録がなく、毎月定額で「日当」が支給されているケース。これは実質的に給与や役員報酬の水増しと判断されます。第三に、近距離の移動や通常の通勤圏内の外出にまで日当を支給しているケースで、そもそも「出張」に当たらないと指摘されます。

これらはいずれも、規程の整備と出張実態の記録という基本を押さえていれば防げるものです。制度自体は正当な節税策ですが、形式と実態の両方を伴わせることが、安心して使い続けるための条件になります。日当の水準や規程の内容に不安がある場合は、導入前に専門家のチェックを受けておくと安心です。特に、既に何年も同じ日当額で運用している場合は、物価や自社の実態、近年の出張の頻度に合っているかを定期的に見直すことを強くおすすめします。

今すぐやるべきこと(チェックリスト)

出張旅費・日当を安全に節税へつなげるための手順を、順を追って整理します。

  1. ステップ1:出張旅費規程を作成・見直しする
    対象者(役員・従業員を一律)、出張の定義、役職別・国内外別の日当額、精算方法を明記した規程を整備します。既にある場合は金額と対象範囲を点検します。
  2. ステップ2:日当額を相当な水準に設定する
    同規模他社や公的な旅費基準を参考に、社会通念上妥当な金額に設定します。過大な金額は給与課税のリスクがあるため避けます。
  3. ステップ3:出張報告書の様式を用意する
    日付・行き先・目的・宿泊の有無・面談相手などを記録できる様式を整え、出張のたびに提出・保管するルールにします。
  4. ステップ4:帳簿の記載ルールを決める
    出張旅費等特例を使う取引について、帳簿の摘要欄に「出張旅費等特例」と記載する運用を経理で統一します。
  5. ステップ5:国内・海外の消費税区分を確認する
    海外出張に係る部分は消費税の課税仕入れの対象外となるため、国内出張分と区分して処理する体制を整えます。

よくある質問(FAQ)

Q. 出張日当はいくらまでなら非課税になりますか?
A. 法律で一律の上限額は定められていません。非課税となるのは「通常必要と認められる範囲」の金額で、社会通念上相当な水準かどうかで判断されます。役職や出張先に応じた合理的な金額を規程で定め、その範囲内で支給することが条件です。過大な日当は超過部分が給与課税されるおそれがあります。
Q. 一人社長の会社でも日当を支給できますか?
A. はい。法人であれば、社長も役員として出張旅費規程にもとづく日当を非課税で受け取れます。ただし、規程の整備と、実際に出張があった事実を示す記録が前提です。役員のみを対象とする規程は否認されやすいため、従業員がいる場合は一律に適用される内容にしておきましょう。
Q. 個人事業主は自分に日当を出して経費にできますか?
A. いいえ。個人事業主本人に対する日当は必要経費として認められません。ただし、交通費や宿泊費といった実費は必要経費になります。また、従業員に対して規程にもとづき支給する日当は、個人事業でも経費にできます。本人分の日当を経費化したい場合は法人成りが選択肢になります。
Q. 出張の交通費や宿泊費はインボイスの保存が必要ですか?
A. 従業員等に支給する出張旅費・宿泊費・日当のうち、通常必要と認められる部分は「出張旅費等特例」により、インボイスの保存がなくても一定事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除が認められます。帳簿の摘要欄に「出張旅費等特例」と記載しておくと管理しやすくなります。
Q. 日当は社会保険料の計算対象になりますか?
A. 実費弁償的な性格をもつ出張旅費は、社会保険の標準報酬月額の対象となる「報酬」には原則含まれません。日本年金機構の事務取扱いでも出張旅費は報酬等に該当しない例として挙げられています。ただし、給与を日当に付け替えたとみなされる運用は対象になり得るため、実態のある支給であることが重要です。
Q. 出張旅費規程がないと日当は経費にできませんか?
A. 消費税の出張旅費等特例は社内規程の有無を問わず適用されますが、日当を非課税・損金で支給し、金額の妥当性を説明するには規程の整備が実務上ほぼ必須です。規程がないと支給額の根拠を示せず、給与と区別できないため、税務調査で否認されるリスクが高まります。規程の作成をおすすめします。

参考資料・出典

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本記事は税理士 道濟寛樹(税理士登録番号152615・近畿税理士会所属)が監修しました。




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