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所得税の予定納税2026年分|第1期7月の納付と減額申請の実務

所得税の予定納税2026年分の第1期納付と減額申請を解説するアイキャッチ画像
この記事の要点3点

  • 2026年(令和8年)分の所得税の予定納税は、前年分の予定納税基準額が15万円以上の人が対象で、第1期分の納期は2026年7月1日から7月31日までです。
  • 影響を受けるのは、フリーランス・個人事業主や不動産オーナーなど、前年に一定以上の所得税を納めた個人です。会社員でも副業所得が大きい場合は対象になります。
  • 業績が前年より落ちる見込みなら、2026年7月15日までに「予定納税額の減額申請書」を提出することで納税額を圧縮できます。まず税務署からの通知書を確認しましょう。

毎年6月中旬になると、税務署から「予定納税額の通知書」が届く個人事業主や不動産オーナーは少なくありません。前年に一定以上の所得税を納めた人は、確定申告とは別に、その年の所得税の一部を前払いする「予定納税」が必要になります。2026年(令和8年)分の予定納税も、第1期分の納期が7月に到来します。本記事では、対象者の判定方法から納期、そして資金繰りを左右する「減額申請」の実務まで、国税庁の公表内容にもとづいて税理士が解説します。通知書を放置して延滞税を招かないために、まずは制度の全体像を押さえておきましょう。

予定納税制度の概要(2026年分の基準と納期)

予定納税とは、その年の所得税及び復興特別所得税の一部を、確定申告の前にあらかじめ納付する制度です。国によるいわば「分割前払い」の仕組みで、納税者の一度の負担を平準化するとともに、国の歳入を安定させる目的があります。対象になるかどうかは、本人の意思とは関係なく、前年の納税実績によって自動的に決まります。

予定納税が必要になる人(予定納税基準額15万円以上)

国税庁によると、「予定納税基準額」が15万円以上になる人は予定納税が必要になります。予定納税基準額は、原則として、その年の5月15日現在で確定している前年分の申告納税額がそのまま基準額となります。つまり、2026年分の予定納税であれば、2025年(令和7年)分の確定申告で算出された所得税額がベースになります。

ただし、前年分の所得金額のうち、山林所得・退職所得などの分離課税の所得や、譲渡所得・一時所得・雑所得、平均課税を受けた臨時所得の金額は除外して計算します。また、外国税額控除や災害減免法の適用を受けている場合も、その影響を除いた金額で基準額を算定します。これは、臨時的・一時的な所得を翌年の前払い額に反映させないための調整です。たとえば前年に土地を売却して多額の譲渡所得が出ていても、その所得は予定納税基準額の計算からは外れるため、翌年に過大な前払いを求められることはありません。

「所得税及び復興特別所得税」をまとめて前払いする

予定納税の正式名称は「所得税及び復興特別所得税の予定納税」です。復興特別所得税は、東日本大震災からの復興財源を確保するために設けられた付加税で、基準所得税額に2.1%を上乗せして課されます。2037年(令和19年)分まで続くため、予定納税の通知額にもこの復興特別所得税が含まれています。「所得税だけのはずなのに金額が少し多い」と感じるのは、この上乗せ分があるためです。通知書の金額は、所得税と復興特別所得税を合算した金額になっていると理解しておきましょう。

ポイント:対象になる人には、税務署から6月15日までに「予定納税額の通知書」が送付されます。通知書が届いた時点で予定納税の義務があると考え、金額と納期限を必ず確認してください。通知が届かない人は、原則として2026年分の予定納税は不要です。

第1期分・第2期分の納付額と納期

予定納税では、予定納税基準額の3分の1に相当する金額を、第1期分・第2期分として年2回に分けて納付します。それぞれの納期は次のとおりです。

区分納付額2026年分の納期減額申請の期限
第1期分予定納税基準額の3分の12026年7月1日〜7月31日2026年7月15日まで
第2期分予定納税基準額の3分の12026年11月1日〜11月30日2026年11月15日まで

残りの3分の1は、翌年(2027年)の確定申告で精算します。確定申告書で計算した1年分の税額から、すでに納めた第1期分・第2期分の予定納税額を差し引き、その過不足を清算する仕組みです。予定納税額のほうが多ければ還付され、少なければ差額を納付します。

なお、特別農業所得者(その年の農業所得の金額が総所得金額の70%を超え、かつ農業所得の大部分を9月以降に得る人で、一定の届出をした人)については例外があり、予定納税基準額の2分の1の金額を、第2期分として1回のみ納付します。第1期分の納付はありません。

中小企業・個人事業主への実務影響

予定納税は「前年の実績にもとづく前払い」であるため、事業環境が前年と大きく変わった年には、実態とかけ離れた金額を一時的に納めることになりかねません。ここに、予定納税の最大の実務リスクがあります。

資金繰りへのインパクト

たとえば2025年が好調で多額の所得税を納めた個人事業主は、2026年7月と11月に、その3分の1ずつの前払いを求められます。仮に2025年分の申告納税額が90万円だった場合、第1期・第2期でそれぞれ30万円、合計60万円を確定申告の前に納めることになります。夏と秋の資金繰りに与える影響は小さくありません。

とりわけ、開業から数年で売上が伸びた事業者や、前年にスポット的な大型案件があった事業者は、「前年は利益が出たが今年は通常水準に戻る」というケースが多く、予定納税が重く感じられます。賞与の支給時期や仕入れの集中時期と納期が重なると、資金ショートの引き金にもなり得ます。

逆に、前年が初年度で所得が少なかった事業者が2年目に大きく伸びた場合は、前年実績にもとづく予定納税が小さいため、翌年の確定申告で多額の納付が一度に発生することになります。この場合は予定納税の負担は軽い一方、確定申告期の資金需要が大きくなるため、別途の納税資金準備が欠かせません。いずれにせよ、予定納税の有無と金額を起点に、年間の納税スケジュールを早めに描いておくことが、資金繰りを安定させるコツです。

重要:予定納税は納期限を1日でも過ぎると延滞税の対象になります。延滞税は納期限の翌日から自動的に発生し、率も決して低くありません。「確定申告で精算されるから」と軽視せず、納期限の管理を徹底してください。

会社員・副業をしている人も対象になり得る

予定納税は個人事業主だけの話ではありません。給与所得者であっても、不動産の貸付による所得、原稿料や講演料などの副業所得、株式以外の譲渡による所得などで前年に大きな納税額が生じ、予定納税基準額が15万円以上になれば対象になります。会社の年末調整で所得税が完結していると思い込んでいると、6月に届く通知書に驚くことになります。

また、法人の役員であっても、個人として不動産賃貸業を営んでいるようなケースでは、個人の所得税について予定納税が発生します。法人と個人の納税を別々に管理する必要がある点に注意が必要です。

予定納税額を抑える減額申請の使い方

予定納税の金額に納得がいかない、今年は明らかに前年より所得が減る——そうした場合に活用できるのが「予定納税額の減額申請」です。前払いの金額そのものを引き下げられるため、資金繰り対策として極めて有効です。

減額申請ができるケース

国税庁の案内によると、廃業・休業・業況不振などの理由により、その年の申告納税見積額が、税務署から通知された予定納税基準額よりも少なくなると見込まれる場合に、減額申請をすることができます。具体的には次のような事情が該当します。

  • ☑ 廃業・休業・業況不振により今年の所得が前年を大きく下回る見込みである
  • ☑ 災害・盗難・横領により事業用資産や住宅に損害を受けた
  • ☑ 多額の医療費の支出により医療費控除が増える見込みである
  • ☑ 配偶者控除・扶養控除・各種所得控除の追加が見込まれる
  • ☑ 生命保険料控除・地震保険料控除など、前年になかった控除が生じる

提出期限と手続き

減額申請には期限があります。第1期分の減額を求める場合は、その年の7月15日までに「予定納税額の減額申請書」を提出します。2026年分であれば2026年7月15日が期限です。第2期分のみの減額(または第1期に申請しなかった分も含めて第2期に申請する場合)は、その年の11月15日までが期限となります。

申請書には、その年の所得や控除の見積額を記載し、見積りの根拠となる資料を添えて、納税地を所轄する税務署に書面またはe-Tax(国税電子申告・納税システム)で提出します。提出を受けた税務署は、その申請について「承認」「一部承認」「却下」のいずれかを決定し、結果を書面またはe-Taxで通知します。承認されれば、その年の予定納税額が減額されます。

見積りの根拠資料としては、申請時点までの試算表や月次の損益推移、受注が減少したことを示す資料、災害による損害状況がわかる資料、医療費の領収書などが考えられます。税務署は「申告納税見積額が予定納税基準額を下回る」と判断できる客観的な裏付けを求めるため、口頭の説明だけでなく、数字で示せる資料を整えておくことが承認の近道です。なお、申請が却下された場合や一部承認にとどまった場合でも、当初の予定納税額(または一部承認後の金額)を納期限までに納める必要があります。申請したからといって納付を待ってよいわけではない点に注意してください。

ポイント:減額申請は「見込み」での申請です。期中の数字だけで判断すると、年末に予想以上の所得が出て、確定申告で追加納付が発生することもあります。減額幅は、根拠資料で説明できる範囲にとどめるのが安全です。

当事務所の見解・実務上の注意点

予定納税は、制度そのものは単純ですが、「前払い」であるがゆえに資金計画と密接に絡みます。当事務所が顧問先と接するなかで、特に重要だと考える3つの視点を共有します。

1. 通知書は「納税のリマインダー」として活用する

予定納税額の通知書は、6月の時点で「今年も一定の所得税が見込まれる」という税務署からのシグナルでもあります。これを単なる支払い通知として処理するのではなく、年間の納税資金を逆算する起点として使うことをおすすめします。第1期・第2期で基準額の3分の2を前払いするということは、残り3分の1の確定申告納付も視野に入れて資金を確保しておく必要があるということです。

2. 減額申請は「攻め」ではなく「実態反映」の手段

減額申請は節税策ではなく、あくまで本来の納税額に近づけるための調整手段です。過度に低く見積もって申請すると、確定申告時の追加納付額が膨らみ、結果として資金繰りが悪化することもあります。逆に、明らかに業況が悪化しているのに申請をためらうと、不要な資金を半年以上国に預けることになります。中立的に「今年の着地見込み」を立て、その実態を反映させるのが正しい使い方です。

3. 納付方法を見直して手間とリスクを減らす

納付書を持って金融機関に出向く方法のほか、ダイレクト納付(e-Taxを利用した口座振替)、インターネットバンキングによる電子納付、クレジットカード納付、スマートフォンアプリ納付(一定額までの納付に限る)など、キャッシュレスの納付手段が整備されています。特にダイレクト納付は、あらかじめ口座を登録しておけば期日に自動で引き落とせるため、納付忘れによる延滞税リスクを大きく減らせます。納期が事業の繁忙期と重なりやすい予定納税こそ、自動化のメリットが大きい税目です。

今すぐやるべきこと(チェックリスト)

  1. ステップ1:予定納税額の通知書を確認する
    6月中旬に届く「予定納税額の通知書」で、対象かどうか、第1期分・第2期分の金額、納期限を確認します。届いていない場合は、原則として2026年分の予定納税は不要です。
  2. ステップ2:今年の所得着地を見積もる
    直近の試算表や売上推移をもとに、2026年分の所得と税額の着地見込みを立てます。前年より大きく下がりそうなら、減額申請の検討に進みます。
  3. ステップ3:減額の必要があれば7月15日までに申請する
    第1期分の減額は2026年7月15日が期限です。見積りの根拠資料を整え、「予定納税額の減額申請書」を書面またはe-Taxで税務署に提出します。
  4. ステップ4:納付方法を決め、資金を確保する
    ダイレクト納付などのキャッシュレス納付を設定し、第1期分(7月31日まで)の納税資金を準備します。確定申告での精算分も見据えて年間の資金計画を立てます。
  5. ステップ5:第2期分・確定申告に向けて記録を残す
    納付した予定納税額は、翌年の確定申告で控除します。納付の記録(領収書・納付完了通知)を保管し、申告書への記載漏れを防ぎます。

よくある質問

Q. 予定納税の通知書が届きませんでした。納める必要はないのでしょうか?
A. 予定納税は、予定納税基準額が15万円以上の人が対象で、対象者には税務署から6月15日までに通知書が送付されます。通知書が届いていなければ、原則としてその年の予定納税は不要と考えて差し支えありません。ただし、引っ越し後に住所変更の届出をしていない場合などは通知が手元に届かないこともあります。前年に一定以上の所得税を納めた心当たりがある場合は、念のため所轄の税務署に問い合わせて、自分が対象かどうかを確認しておくと安心です。
Q. 予定納税を納め忘れるとどうなりますか?
A. 納期限の翌日から延滞税が発生します。延滞税は納付が遅れた日数に応じて日割りで自動的に加算されるため、納め忘れに気づいたら、できるだけ早く納付することが負担を抑えるポイントです。「最終的には確定申告で精算されるのだから後でよい」と考えるのは禁物で、確定申告で精算されるのはあくまで本税部分です。納期限を過ぎたことに対する延滞税は別途課されるため、ダイレクト納付などで期日に自動引き落としされる仕組みを整えておくことをおすすめします。
Q. 今年は明らかに所得が減りそうです。予定納税を減らせますか?
A. はい。廃業・休業・業況不振などにより、今年の申告納税見積額が予定納税基準額を下回る見込みであれば、減額申請ができます。第1期分の減額は7月15日、第2期分は11月15日が申請期限です。試算表や月次損益など見積りの根拠となる資料を添えて、「予定納税額の減額申請書」を書面またはe-Taxで所轄税務署に提出します。承認されれば前払い額を圧縮できますが、却下や一部承認の場合は当初額(または承認後の額)を納期限までに納める必要があるため、申請結果が出るまで納付を止めておくことはできない点に注意してください。
Q. 予定納税で前払いした分は、どうやって取り戻すのですか?
A. 翌年の確定申告で精算します。確定申告書で計算した1年分の所得税額から、すでに納付済みの第1期分・第2期分の予定納税額を差し引きます。予定納税額のほうが多ければ差額が還付され、少なければ不足分を納付します。注意したいのは、確定申告書に予定納税額を記載し忘れると、前払いした分が反映されず二重に納付してしまうおそれがあることです。税務署から届く通知書や納付の記録を保管し、申告書の所定欄に正しく転記するようにしてください。
Q. 会社員ですが予定納税の通知が来ました。なぜでしょうか?
A. 給与所得者であっても、不動産の貸付による所得や、原稿料・講演料などの副業所得が大きく、前年の申告納税額が一定以上になると予定納税の対象になります。年末調整はあくまで給与にかかる所得税を精算する手続きで、給与以外の所得はその対象外です。給与以外の所得について確定申告で納税した結果、予定納税基準額が15万円以上になれば、翌年は予定納税の通知が届きます。会社員だから関係ないと思い込まず、副業や不動産所得がある方は通知書の有無を確認しておきましょう。

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参考資料・出典

本記事は道濟会計事務所が監修しました。





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