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税務調査の事前通知2026|FAQ改訂と電子データ提出の実務対応

税務調査の事前通知と令和8年7月のFAQ改訂を解説する記事のタイトル画像
SUMMARYこの記事の要点3点
  • 1ポイント1:国税庁は令和8年7月、「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」のうち問3・問5・問14を一部改訂しました。改訂の柱は、帳簿書類等の提示・提出を拒んだ場合の罰則の表記、電磁的記録(データ)の提示・提出方法、そして税務代理人への事前通知の3点です。
  • 2ポイント2:影響を受けるのは、クラウド会計や電子帳簿保存法への対応でデータ保存に切り替えた中小企業です。帳簿をディスプレイで見せるのか、プリントアウトやe-Taxで渡すのかによって、調査当日の段取りと社内の準備が変わります。
  • 3ポイント3:まず確認すべきは、顧問税理士が提出している税務代理権限証書に「事前通知に関する同意」の記載があるかどうかです。記載があれば事前通知は税理士だけに行われ、突然の連絡に慌てずに済みます。

税務調査は、ある日突然やってくるものではありません。実地の調査を行う場合、税務署は原則として事前に電話で連絡を入れ、調査の日時や対象となる税目・課税期間を通知します。この事前通知の内容や、調査の場で何をどこまで見せる必要があるのかは、国税通則法に定められた手続です。

その運用を納税者向けにかみ砕いた資料が、国税庁の「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」です。同FAQは令和8年7月に一部が改訂され、帳簿書類等の提示・提出、電磁的記録の取扱い、税務代理人への事前通知に関する記述が更新されました。本記事では、改訂内容を確認したうえで、中小企業が調査前に準備しておくべきことを実務目線で整理します。

税務調査の事前通知と令和8年7月のFAQ改訂

税務調査の手続を定める国税通則法と国税庁のFAQを表す官公庁の建物と書類のイラスト

税務調査の手続は国税通則法で明確化されている

税務調査の手続は、平成23年12月の税制改正(国税通則法の改正)によって法令上明確化されました。国税庁のFAQ問1は、この改正について「税務調査手続の透明性及び納税者の予見可能性を高め、調査に当たって納税者の方の協力を促すことで、より円滑かつ効果的な調査の実施と、申告納税制度の一層の充実・発展を図る等の観点から、調査手続に関する従来の運用上の取扱いを法令上明確化したもの」と説明しています。

このとき法令上明確化された内容は、大きく分けて次のとおりです。第一に、税務調査に先立って、原則として調査対象を事前通知することとされました。ただし、課税の公平確保の観点から、一定の場合には事前通知を行わないこととされています。第二に、調査終了の際の手続が整備されました。第三に、納税者から提出された物件の留置き(預かり)の手続のほか、調査担当者が帳簿書類その他の物件の「提示」「提出」を求めることができることが法令上明確化されました。あわせて、納税者が申告税額の減額を求めることができる「更正の請求」の期間が原則1年から5年に延長され、税務当局による増額更正の期間も原則3年から5年に延長されています。

令和8年7月に改訂された3つの問

国税庁のFAQ(一般納税者向け)には、各問に改訂時期を示す表示が付されています。令和8年7月時点で「令和8年7月一部改訂」と表示されているのは、問3・問5・問14の3つです。それぞれの要点は次のとおりです。

改訂された問テーマ押さえるべき内容
問3提示・提出を拒んだ場合の罰則正当な理由がないのに提示・提出を拒んだり、虚偽の記載をした帳簿書類等を提示・提出した場合には「1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」が科されることがある
問5電磁的記録の提示・提出方法提示はディスプレイの画面上で確認し得る状態にする。提出はプリントアウト、調査担当者が持参した記録媒体へのコピー、e-Tax・オンラインストレージサービス・メールのいずれか
問14税務代理人への事前通知納税者の事前の同意がある場合、事前通知は税務代理権限証書を提出している税理士等に行えば足りる。同意の記載がなければ納税者と税務代理人の双方に通知される

いずれも新しい制度が創設されたわけではなく、既存の手続について記述が更新されたものです。とはいえ、問5の電磁的記録に関する記述は、電子帳簿保存法への対応が中小企業にも広がった現在の実情を反映しており、実務への影響は小さくありません。

ポイント:罰則は「強権的に使うもの」とはされていない
FAQ問3は罰則の内容を示しつつ、税務当局として「罰則があることをもって強権的に権限を行使することは考えておらず、帳簿書類等の提示・提出をお願いする際には、提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、納税者の方の理解と協力の下、その承諾を得て行うこととしています」としています。正当な理由があるかどうかは個々の事案ごとに判断され、最終的には裁判所が判断することになります。FAQ問6は、正当な理由の例として「災害等により滅失・毀損するなどして、直ちに提示・提出することが物理的に困難であるような場合」を挙げています。

中小企業への実務影響とデータ提出の段取り

税務調査で電磁的記録の帳簿をディスプレイに表示して提示する実務を表すイラスト

事前通知では何が伝えられるのか

FAQ問20によれば、実地の調査を行う場合には、原則として調査の対象となる納税者に対し、調査開始前に相当の時間的余裕を置いて、電話等により、実地の調査を行う旨、調査を開始する日時・場所、調査の対象となる税目・課税期間、調査の目的などが通知されます。

押さえておきたいのは通知の方法と時期です。事前通知の方法は法令上規定されておらず、原則として電話により口頭で行われます。しかもFAQ問12は、納税者からの要望に応じて事前通知内容を記載した書面を交付することはない、と明記しています。通知の何日前かについても法令に特段の規定はなく、FAQ問13は「調査開始日までに納税者の方が調査を受ける準備等をできるよう、調査までに相当の時間的余裕を置いて行う」としています。

一方で、調査の日時は調整の余地があります。FAQ問16によれば、事前通知に際してはあらかじめ納税者や税務代理人の都合が尋ねられ、申告業務・決算業務等の繁閑にも配慮して調査開始日時が調整されます。事前通知の後であっても、一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情が生じた場合等には、申し出れば変更が協議されます。例示以外でも理由が合理的と考えられれば協議されるため、繁忙期と重なった場合は遠慮なく相談すべきです。

なお、実地の調査であっても、事前通知をすると調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると判断された場合には、事前通知が行われないこともあります。この場合でも、運用上、調査の対象となる税目・課税期間や調査の目的などは臨場後速やかに説明されます。ただし、事前通知をしないこと自体は不服申立てのできる処分に当たらないため、この点について不服を申し立てることはできません(FAQ問21)。

データで保存している帳簿はどう見せるのか

改訂された問5は、帳簿書類等が電磁的記録である場合の取扱いを整理しています。「提示」については、その内容をディスプレイの画面上で調査担当者が確認し得る状態にして示すことになります。「提出」については、次の3つの方法が示されています。

  • ☑ 電磁的記録を調査担当者が確認し得る状態でプリントアウトしたものを渡す
  • ☑ 調査担当者が持参した電磁的記録媒体への記録の保存(コピー)に応じる
  • ☑ e-Tax、オンラインストレージサービスやメールを利用して提出する

FAQは、電磁的記録の提出を求める際には税務当局における電磁的記録の取扱いを説明することとし、提出された電磁的記録については国税庁で定めた規則等に基づき厳重に管理を行い、保存期間満了後に確実に廃棄(消去)する旨を注記しています。

クラウド会計を使っている場合、画面を見せる「提示」と、データそのものを渡す「提出」では意味がまったく違います。どの範囲のデータをどの形式で渡すのかは、事前に顧問税理士と確認しておきたいところです。日頃から記帳・経理代行のサポートを受けて帳簿を整えている事業者ほど、必要なデータをすぐに切り出せます。

「調査」と「行政指導」は別物

税務署から電話で申告内容の確認を求められたとき、それが調査なのか行政指導なのかで後の取扱いが変わります。FAQ問2によれば、税務署の担当者は調査または行政指導を行う際、具体的な手続に入る前にいずれに当たるのかを明示することとされています。

区分内容自主的に修正申告書を提出した場合
調査課税標準等または税額等を認定する目的で質問検査等を行い、申告内容を確認するもの調査通知以後、更正を予知する前の修正申告等には過少申告加算税等が課される場合がある
行政指導計算誤り、転記誤り、記載漏れ、法令の適用誤り等があると思われる場合に、自発的な見直しを要請するもの延滞税は納付する場合があるが、過少申告加算税は賦課されない(当初申告が期限後申告の場合は無申告加算税が原則5%賦課)

電話を受けた時点で「これは調査ですか、行政指導ですか」と確認することには、実務上の意味があります。

帳簿を預けるとき(留置き)の扱い

調査の過程では、帳簿書類等の留置き(預かり)を求められることがあります。FAQ問10は、事務所等に十分なスペースがない場合や、検査の必要がある帳簿書類等が多量なため検査に時間を要する場合などに預かりを依頼することがあるとしたうえで、「留め置く必要性を説明した上、留め置く必要性がなくなるまでの間、帳簿書類等を預かることについて納税者の方の理解と協力の下、その承諾を得て行うものですから、承諾なく強制的に留め置くことはありません」と明記しています。

返還についてはFAQ問11が、留め置く必要がなくなったときは遅滞なく返還すべきこととされていると説明しています。業務で使用する必要がある等の理由で返還を求めた場合には、特段の支障がない限り速やかに返還されます。それに納得できないときは、留置きを行っている職員が税務署に所属する職員であれば、税務署長に再調査の請求または国税不服審判所長に審査請求をすることができます。

当事務所の見解・実務上の注意点

税務調査の事前通知の電話と税務署をかたる不審な連絡の見分け方を表すイラスト

電磁的記録は「渡す範囲」を先に決める

今回の改訂で最も実務に効くのは問5だと考えています。紙の帳簿であれば、必要な期間のファイルだけを出せば足りました。しかしクラウド会計のデータは、通常、事業全体・全期間が1つのデータベースにまとまっています。「データをください」と言われて何も考えずに丸ごと書き出すと、事前通知された課税期間を超える情報まで渡してしまうことになりかねません。

もっとも、これは「渡してはいけない」という話ではありません。FAQ問9は、X年度の調査の過程でX年度以外の帳簿書類等の提示を求めることがあり、それは減価償却費の計算根拠を確認するなど、X年度の申告内容を確認するために必要と判断されるときであって、X年度以外の調査を行っているわけではないと説明しています。重要なのは、何のために必要なデータなのかを確認したうえで、範囲と形式を決めることです。実務では、会計ソフトから期間を指定して出力する、あるいは特定の帳票だけをPDFにするといった形で対応することが多くあります。

税務代理権限証書の「同意」は先に確認する

FAQ問14は、平成26年7月1日以後に行う事前通知については、納税者の事前の同意がある場合には、税務代理権限証書を提出している税理士等(税務代理人)に行えば足りることとされたと説明しています。この同意は、税務代理人が税務署に提出する税務代理権限証書に記載しておく必要があり、記載がない場合には納税者と税務代理人の双方に事前通知が行われます。

この同意には、もう1つ見落とされがちな効果があります。FAQ問14の注書きによれば、平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税については、国税通則法第65条第6項に規定する「調査通知」以後、かつ更正・決定を予知する前にされた修正申告または期限後申告に対して過少申告加算税等が課されることとされており、この調査通知には「事前通知に関する同意」のある税務代理人に対してする通知が含まれます。つまり、税理士に調査通知が届いた時点で、加算税の取扱いに関する時計は動き始めます。誰にいつ連絡が入るのかを把握しておくことは、単なる連絡経路の問題ではありません。なお、税務代理人が数人いる場合は、代表する税務代理人を定めておけば、事前通知はその代表者に対してすれば足ります(FAQ問15)。

「税務署をかたる不審な連絡」との見分け方

令和8年8月には、国税職員による納税者情報の漏えい事案が報じられ、情報を漏えいされた納税者に詐欺とみられる電話がかかってきたことが伝えられています(時事通信、2026年8月7日配信)。国税庁も、公式サイトの「お知らせ」に「不審な電話や振り込め詐欺にご注意を」という項目を常設しています。

本物の税務調査の事前通知には、いくつかの特徴があります。事前通知は電話による口頭が原則であり、納税者の要望に応じて通知内容を記載した書面が交付されることはありません(FAQ問12)。また、事前通知で伝えられるのは調査の日時・場所・対象税目・課税期間・目的などであって、その場で金銭の支払いを求められることはありません。心当たりのない連絡を受けたときは、その場で個人情報を答えず、いったん電話を切って顧問税理士に相談するか、所轄の税務署に自分からかけ直して確認するのが確実です。堺市の税務顧問としてご契約いただいている場合、事前通知に関する同意があれば連絡はまず当事務所に入りますので、この見分けはさらに容易になります。

今すぐやるべきこと

税務調査に備えて事前通知の前に確認しておくチェックリストを表すイラスト

調査の連絡が来てから慌てないために、平時のうちに次の手順で準備を進めてください。所要時間はいずれも短く、多くは顧問税理士との1回の打ち合わせで片付きます。

  1. ステップ1:税務代理権限証書の「事前通知に関する同意」の有無を確認する
    顧問税理士に、直近で提出した税務代理権限証書に同意の記載があるかを尋ねてください。記載がなければ、事前通知は会社と税理士の双方に届きます。どちらの運用にするかを決め、必要であれば次回提出分から記載してもらいます。税理士が複数いる場合は、代表する税務代理人を定めるかどうかもあわせて決めておきます。
  2. ステップ2:帳簿・書類の保存場所とデータの出し方を棚卸しする
    総勘定元帳、仕訳帳、請求書・領収書、契約書がそれぞれどこにあるか、紙とデータのどちらで保存しているかを一覧にします。会計ソフトから期間を指定して出力する手順、電子取引データを検索して取り出す手順を実際に一度試しておくと、当日の負担が大きく変わります。
  3. ステップ3:データ提出の社内ルールを決めておく
    誰がデータを出力するのか、出力したデータは誰が内容を確認してから渡すのか、渡した記録をどう残すのかを決めます。プリントアウト、記録媒体へのコピー、e-Tax等による送信のどれで対応するかは調査の場で相談することになりますが、社内の役割分担は先に決められます。
  4. ステップ4:連絡を受けたときの初動を統一する
    税務署から電話があった場合、担当者の氏名・所属官署を控え、「調査か行政指導か」を確認し、その場で日程を確定せずいったん顧問税理士に連絡する、という流れを社内で共有します。代表者不在時に電話を受ける人にも伝えておくことが重要です。
  5. ステップ5:日程調整の希望を整理しておく
    決算期、繁忙期、棚卸の時期など、調査を受けにくい時期をあらかじめ整理しておきます。事前通知の際に都合を尋ねられるため、その場で答えられるようにしておくと、無理な日程を受けてしまう事態を避けられます。

よくある質問

Q. 税務調査の事前通知は必ず行われるのですか?
A. 実地の調査を行う場合は原則として事前通知が行われます。ただし国税庁のFAQ問20によれば、申告内容、過去の調査結果、事業内容などから、事前通知をすると違法・不当な行為を容易にし正確な課税標準等または税額等の把握を困難にするおそれ、またはその他調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると判断された場合には、事前通知が行われないこともあります。その場合でも、運用上、調査の対象となる税目・課税期間や調査の目的などは臨場後速やかに説明されます。
Q. 事前通知は調査の何日前に来ますか?
A. 何日前という法令上の定めはありません。国税庁のFAQ問13は、事前通知の時期について法令に特段の規定はなく、個々のケースによって事情も異なるため何日程度前に通知するかを一律に示すことは困難としつつ、調査開始日までに納税者が調査を受ける準備等をできるよう、調査までに相当の時間的余裕を置いて行うこととしていると説明しています。日程が繁忙期と重なる場合は、申し出れば変更が協議されます。
Q. 会計データをそのまま渡さなければいけませんか?
A. 電磁的記録の提出方法として、国税庁のFAQ問5はプリントアウトしたものを渡す方法、調査担当者が持参した電磁的記録媒体へのコピー、e-Tax・オンラインストレージサービス・メールによる提出の3つを挙げています。形式は一つに限定されていません。どの範囲のデータをどの形式で渡すかは、必要とされる趣旨の説明を受けたうえで相談することになります。顧問税理士に同席してもらい、範囲を確認しながら対応するのが安全です。
Q. 修正申告を勧められたら、応じなければいけませんか?
A. 国税庁のFAQ問25によれば、修正申告の勧奨に応じるかどうかは、あくまでも納税者の任意の判断です。応じない場合は調査結果に基づき更正等の処分が行われますが、勧奨に応じなかったからといって、応じた場合と比較して不利な取扱いを受けることは基本的にありません。ただし修正申告を行った場合、更正の請求をすることはできますが、不服申立てをすることはできません。この違いを理解したうえで判断してください。
Q. 「更正決定等をすべきと認められない」旨の通知を受けたら、もう調査はありませんか?
A. 国税庁のFAQ問28によれば、ある税目・課税期間について実地の調査を行った場合は、結果にかかわらず原則としてその税目・課税期間について再調査は実施されません。ただし、調査終了後に行われた取引先の税務調査で当初把握されていなかった非違が明らかになった場合のように、法令上の「新たに得られた情報に照らして非違があると認めるとき」に該当する場合は、再調査が行われることがあります。
Q. 経理を手伝ってもらっている人に調査へ立ち会ってもらえますか?
A. 国税庁のFAQ問33によれば、調査に立ち会って納税者の代わりに主張・陳述を行うことは税務代理行為に当たるため、原則として税務代理人しか行えません。また、第三者が同席することで調査担当者の守秘義務に抵触する可能性がある場合には、税務代理人以外の第三者の立会いは断られます。ただし、日頃から記帳事務等を担当している方については、調査を円滑に進めるために調査担当者が必要と認めた範囲で同席する場合があります。

参考資料・出典

本記事は2026年8月10日時点で公表されている国税庁の資料に基づいて作成しています。税務調査の手続は個々の事情によって取扱いが異なる場合があります。実際の対応にあたっては、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。
本記事は道濟会計事務所が監修しました。




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