堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
電子帳簿保存法2026|電子取引の3ルールと重加算税10%加重の除外
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:電子メールやクラウドで請求書・領収書のデータを受け取ったら、所得税と法人税の保存義務者はその電子取引データを保存しなければなりません。原則のルールは改ざん防止・画面と書面への出力・3項目での検索の3つです。
- 2ポイント2:基準期間の売上高が5,000万円以下なら、ダウンロードの求めに応じられることを条件に検索要件を満たす必要がありません。改ざん防止も事務処理規程の策定・運用・備付けで足ります。
- 3ポイント3:令和7年度税制改正で、請求書等を帳簿に自動連携する仕組みに対応した制度が新設されました。要件を満たすと重加算税の10%加重の対象から外れます(令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から)。
CONTENTS目次
電子帳簿保存法という名前を聞くと、多くの経営者が「うちは対応済み」か「うちには関係ない」のどちらかを答えられます。ところが実際に確認してみると、請求書をメールで受け取っている時点で対象になっているのに、そのデータを印刷して原本を消してしまっている会社が少なくありません。国税庁は令和8年6月、リーフレット「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?」を公開しました。義務としての対応から一歩進み、制度を使って加算税の軽減まで取りにいく段階に来ています。本記事では、何を保存しなければならないのか、負担を軽くする選択肢は何か、そして令和7年度税制改正で新設された制度は何かを、国税庁の資料に沿って整理します。
電子帳簿保存法の4つの制度と電子取引の保存ルール
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任意の3制度と、義務の1制度
国税庁「電子帳簿保存法の概要」は、この法律の制度を4つに整理しています。混乱のもとは、このうち3つが任意で、1つだけが義務だという点です。
| 制度 | 内容 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 電磁的記録による保存等 | 自己が最初の記録段階から一貫してコンピュータを使用して作成する国税関係帳簿・書類について、一定の要件の下でその電磁的記録の備付けおよび保存をもって帳簿・書類の備付けおよび保存に代えられる(法第4条) | 任意 |
| 電子計算機出力マイクロフィルムによる保存等 | 電磁的記録を出力して作成するマイクロフィルムの保存をもって代えられる(法第5条) | 任意 |
| スキャナ保存 | 国税関係書類の記載事項をスキャナにより電磁的記録に記録する場合、一定の要件の下でその電磁的記録の保存をもって書類の保存に代えられる(法第4条) | 任意 |
| 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存 | 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く)および法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合、一定の要件の下でその取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない(法第7条) | 義務 |
「電子取引」の範囲は広いことに注意してください。電子帳簿保存法第2条第5号にいう電子取引とは、取引情報(取引に関して受領し、または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項)の授受を電磁的方式により行う取引をいい、いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます)、インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じて取引情報を授受する取引等が含まれます。
本記事は読みやすさのため条項を正式な条名に展開しています。国税庁の資料はこれらを略記で示しており、「電子帳簿保存法の概要」は各制度の根拠を「電子帳簿保存法4」「電子帳簿保存法5」「電子帳簿保存法7」、用語の定義を「電子帳簿保存法2三」「電子帳簿保存法2四」「電子帳簿保存法2五」と表記しています。電子取引データ保存要件チェックシートは電子取引の定義を「法2五」と表記し、保存要件の根拠を「規」で始まる略記で示しています。出典に当たる際はこの表記でお探しください。
原則的な保存ルールは3つ
国税庁の電子取引データ保存要件チェックシート(令和6年11月)は、原則的な保存要件を次の3つに整理しています。
- 改ざん防止の措置を行っている(規則第4条第1項第1号から第4号)
次のいずれかの措置が必要です。タイムスタンプが付与されたデータを授受する、受領したデータにタイムスタンプを付与する、訂正・削除の履歴が残るシステム等でデータを授受・保存する、改ざん防止のための事務処理規程を策定・運用・備付けする。 - ディスプレイ・プリンタを備え付けている(規則第2条第2項第2号)
性能や設置台数等は要件とされていませんが、税務調査等において電子取引データを確認できるようにする必要があります。 - 3つの記録項目で検索できる(規則第2条第6項第5号イ)
「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3つの記録項目で検索できる必要があります。
3つ目については、さらに範囲指定検索と組合せ検索が求められます。すなわち「取引年月日」または「取引金額」の項目について範囲指定をして検索できること、および2以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できることです。ただしこの追加分は、後述する条件を満たせば不要になります。
中小企業への実務影響と負担を軽くする選択肢
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売上高5,000万円以下なら検索要件そのものが不要になる
中小企業にとって最も効くのが、検索要件の免除です。チェックシートによれば、次のいずれかに該当する場合は、税務調査等の際にダウンロードの求めに応じることができるようにしておくことで、検索要件を満たしているものとして扱われます。
- ☑ 基準期間(2年(期)前)の売上高が5,000万円以下
- ☑ 電子取引データを出力した書面を、取引年月日および取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている
つまり多くの小規模事業者は、検索用のシステムを導入しなくても要件を満たせます。基準期間は2年前または2期前ですから、令和8年に開業したばかりの事業者のように基準期間の売上高がない場合の取扱いを含め、自社がどちらに当たるかは事前に確認しておいてください。
検索が必要な場合も、専用システムは必須ではない
検索要件を満たす必要がある場合でも、国税庁は簡易な方法を認めています。ひとつは表計算ソフト等で索引簿を作成し、索引簿を使用して電子取引データの検索を可能とする方法です。国税庁の資料には、連番・日付・金額・取引先・備考を列に持つ索引簿の例が示されています。もうひとつは、規則性をもったファイル名(日付・金額・取引先の順番で表記)のデータを特定のフォルダに集約することにより検索を可能とする方法です。
改ざん防止についても同様です。専用のシステムを導入しない方法として、改ざん防止のための事務処理規程を策定・運用・備付けするという選択肢があり、国税庁ホームページには事務処理規程のサンプルが掲載されています。「システムを入れなければ違法になる」という理解は正確ではありません。もっとも、事務処理規程は策定して終わりではなく、規程どおりに運用し、備え付けておくことまでが要件です。作っただけで棚に眠っている状態では、措置を講じたことになりません。
猶予措置は用意されているが、無条件ではない
原則的なルールに対応できない場合の猶予措置も設けられています。規則第4条第3項により、次の2つを共に満たす場合には、電子取引データを保存しておくだけで足ります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 相当の理由があること | 所轄税務署長が相当の理由があると認める場合。国税庁は例として「システム等の整備が間に合わない」「人手不足」「システム整備の資金不足」など、原則的なルールに従って保存を行うための環境が整っていない事情がある場合を挙げています。事前届出は不要です。 |
| 税務調査等の際に対応できること | 税務職員からの、電子取引データのダウンロードの求めと、電子取引データを出力した書面の提示・提出の求めに、それぞれ応じることができるようにしておく必要があります。 |
印刷して原本を消す運用は、猶予措置でも救われません。猶予措置の2つ目の要件は、書面の提示だけでなくデータのダウンロードの求めにも応じられることを求めています。データを削除してしまえば、この要件を満たせません。まずは電子取引データを消さずに保存することが出発点になります。
なお国税庁は、電子取引データは紙の書類等を保存する場合に比べ、複製・改ざん行為が容易で、その痕跡が残りにくいという特性があることから、電子取引データに関連する隠蔽・仮装行為については重加算税を10%加重することとしていると説明しています。データの取扱いは、紙よりも厳しく見られていると理解しておくべきです。日々の証憑の受け渡しから会計処理までを一続きに設計するクラウド会計・DX支援では、この保存要件を業務フローに落とし込むところから伴走しています。
当事務所の見解・実務上の注意点
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優良な電子帳簿の届出が46,000件にとどまる意味
一定の国税関係帳簿について、訂正・削除の履歴が残る等の「優良な電子帳簿」の要件を満たして備付けおよび保存を行っている場合には、あらかじめ届出書を提出することによって過少申告加算税が5%軽減される制度があります。国税庁が公表している届出書の提出件数は、令和4年1月1日の施行日以降の累計で、令和7年6月末時点で個人35,247件、法人10,753件、合計46,000件です。令和6年6月末時点は合計38,479件、令和5年6月末時点は合計29,513件でしたから、増えてはいるものの、法人の届出は1万件台にとどまっています。
会計ソフトを使っていれば要件の多くは自然に満たされることが多く、届出書を出していないだけで軽減を受けられていない会社が相当数あると考えられます。届出は事前提出が条件ですから、必要になってからでは間に合いません。
令和7年度改正の新制度は「システム選び」が要件そのもの
令和7年度税制改正では、請求書等のデジタルデータを自動で保存し、帳簿に自動連携する仕組みに対応した制度が電子帳簿保存法に新設されました。国税庁の資料によれば、一定の要件を満たして送受信・保存を行う場合、その電子取引データに関連する隠蔽・仮装行為については重加算税の10%加重の適用対象から除外されるとともに、青色申告特別控除65万円を適用することができるとされています。重加算税の10%加重の適用除外は令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について、青色申告特別控除は令和9年分以後の所得税について適用されます。
新設された要件は、改ざん防止の確保、記帳の適正性確保、電子帳簿との相互関連性確保の3点です。加えて国税庁長官が定める基準に適合するシステムの使用と、あらかじめの届出書の提出が必要とされています。基準に適合するシステムとは、デジタル庁が管理する仕様に従って送受信されたデジタルインボイス(「Invoice JP PINT」または「JP Self-Billing」)、または預貯金口座における決済データのいずれかの電子取引データについて、新設された要件に従って保存できる機能を有するシステムをいいます。
ここが従来の制度と決定的に違う点です。自社の運用を工夫すれば満たせる話ではなく、使うソフトが基準に適合しているかどうかが要件に組み込まれています。会計ソフトの入替えを検討している会社は、この観点を選定条件に加えるべきです。当事務所ではクラウド会計に対応した税理士サポートとして、ソフトの選定段階からご相談をお受けしています。
今すぐやるべきこと
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まずは自社が今どの段階にいるかを確かめるところから始めてください。対応の重さは会社の規模と証憑の受け取り方で大きく変わるため、いきなりソフトを選ぶのではなく、洗い出しと判定を先に済ませる順番が効率的です。
- ステップ1:電子で受け取っている証憑を洗い出す
メールの添付ファイル、取引先の専用サイトからのダウンロード、インターネットバンキングの明細、クレジットカードの利用明細、通信費や水道光熱費の明細を一覧にします。1件でもあれば電子取引に該当します。 - ステップ2:基準期間の売上高を確認する
2年前または2期前の売上高が5,000万円以下であれば、ダウンロードの求めに応じられることを条件に検索要件を満たす必要がありません。該当するかどうかで、以降の対応の重さが変わります。 - ステップ3:改ざん防止の措置を1つ選ぶ
タイムスタンプ、訂正削除の履歴が残るシステム、事務処理規程のいずれかです。費用をかけない場合は、国税庁ホームページのサンプルをもとに事務処理規程を策定し、運用と備付けまで行ってください。 - ステップ4:保存場所とファイル名の規則を決める
検索要件が必要な場合は、索引簿を作るか、日付・金額・取引先の順のファイル名で特定フォルダに集約する方法を選びます。担当者が変わっても続く形にしておくことが大切です。 - ステップ5:優良な電子帳簿の届出を検討する
会計ソフトで帳簿を作成している場合は、訂正削除履歴の保存等、帳簿間の相互関連性、検索機能の確保という3要件を満たせるかをベンダーに確認し、満たせるなら届出書を事前に提出します。対象となる特例国税関係帳簿には、仕訳帳と総勘定元帳のほか、売上帳、仕入帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳などが含まれます。 - ステップ6:令和9年に向けた新制度の対応可否をベンダーに確認する
令和7年度税制改正で新設された制度は、国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使うことが要件です。重加算税の10%加重の適用除外は令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用されますので、決算期によっては今期中の判断が必要になります。
よくある質問
- Q. 紙で受け取った請求書をスキャンして捨ててもよいですか?
- A. それはスキャナ保存という別の制度で、電子取引データの保存とは要件が異なります。国税関係書類について、その記載事項をスキャナにより電磁的記録に記録する場合には、一定の要件の下でその電磁的記録の保存をもって書類の保存に代えることができるとされています。ただし棚卸表、貸借対照表および損益計算書ならびに計算、整理または決算に関して作成されたその他の書類は対象から除かれています。紙で受け取ったものは、要件を満たさない限り紙のまま保存してください。
- Q. インターネットバンキングの明細や、サイトでしか見られないクレジットカードの明細も対象ですか?
- A. 対象になります。国税庁の電子取引データ保存要件チェックシートは、インターネットのみで確認できるクレジットカード、ネットバンキング、水道光熱費などの明細書等があれば電子取引に該当するとしています。サイト上で閲覧できるだけの状態は保存ではありませんので、ダウンロードして自社で保存する運用が必要です。取引先からのメール、EDI、クラウド等で受領した見積書・納品書・請求書も同様です。
- Q. 猶予措置を使えば、いつまでも今のままで問題ありませんか?
- A. 猶予措置は原則的な保存要件に対応するまでの措置であり、電子取引データを保存しなくてよいという意味ではありません。適用を受けるには、原則的なルールに従って保存できなかったことについて所轄税務署長が相当の理由があると認めることに加え、税務調査の際にデータのダウンロードの求めと出力書面の提示・提出の求めの両方に応じられることが必要です。データを削除してしまえば、この2つ目の条件を満たせません。
- Q. 優良な電子帳簿の届出をすると、必ず加算税が軽くなるのですか?
- A. 軽減されるのは過少申告加算税だけで、5%の軽減です。あらかじめ「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書」を提出しておくことが前提で、後からその電子帳簿に関連する過少申告が判明した場合に適用されます。隠蔽または仮装があった場合に課される重加算税は対象外です。届出は事前に出しておかなければ意味がない点にご注意ください。なお軽減の対象となる帳簿は、規則第5条第1項に規定する特例国税関係帳簿のうち、軽減を受けようとする税目に係るものに限られます。
- Q. 令和7年度税制改正で新設された制度は、どの会社でも使えますか?
- A. 国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使用したうえで、新設された要件を満たして電子取引データの送受信・保存を行い、あらかじめ届出書を提出する必要があります。基準に適合するシステムとは、デジタル庁が管理する仕様に従って送受信されたデジタルインボイス、または預貯金口座における決済データのいずれかの電子取引データについて、新設された要件に従って保存できる機能を有するシステムです。まずは利用中のソフトが対応予定かをベンダーに確認してください。
参考資料・出典
- 国税庁「電子帳簿保存法の概要」
- 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」
- 国税庁リーフレット「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?」(令和8年6月)
- 国税庁「電子取引データ保存要件チェックシート」(令和6年11月)
- 国税庁「電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について」(令和6年11月)
- 国税庁「請求書等を帳簿に自動連携する仕組みに対応した制度が新設されました~令和7年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要~」(令和7年4月)
- 国税庁「優良な電子帳簿の要件」
- 国税庁「『国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書』の提出件数(令和7年6月末時点)」
- 国税庁「同(令和6年6月末時点)」
- 国税庁「同(令和5年6月末時点)」
- 国税庁「パンフレット(過去の主な改正を含む)」
- 国税庁 タックスアンサーNo.5930「帳簿書類等の保存期間」
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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